営業保証金と弁済業務保証金とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説
更新日:2019年5月16日
営業保証金と弁済業務保証金とは
業者と消費者との間でトラブルがあった場合、業者は消費者に損害を賠償することになります。しかし、この場合、業者に資力がないと、消費者は実際その損害を埋め合わせすることができません。そこで、消費者の損害を確実に埋め合わせるために、業者が開業する前に、一定のお金をプールしておくことが望ましくなります。
そこで設けられたのが営業保証金制度です。
しかし、宅建業における損害金は往々にして多額なため、営業保証金として業者が提出を求められる金額は多額です(現行法上最低1,000万円)。これでは、一般の人にはとても宅建業を開業することはできません。
そこで、業者が集まって、みんなで少しづつお金を出し合って、多額のお金をプールするという制度が設けられました。この業者の集まりが宅地建物取引業保証協会であり、損害を弁済する制度を弁済業務保証金制度といいます。
弁済業務保証金制度は、上記のように、営業保証金制度に比べ、少額の資金で開業できるというメリットがあります。
営業保証金 弁済業務保証金 いくら?
供託額(いくら) | |
---|---|
営業保証金 | 弁済業務保証金 |
1.主たる事務所…1,000万円 2.その他の事務所…500万円 (一か所) ▽ 合計額 |
1.主たる事務所…60万円 2.その他の事務所…30万円 (一か所) ▽ 合計額 |
営業保証金の保管替え
意義
主たる事務所の移転による供託所の変更
方法
- 1.金銭のみで供託している場合
現に供託している供託所に対し、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への保管替えを請求しなければなりません。
- 2.有価証券と金銭、または有価証券のみで供託している場合、遅滞なく営業保証金を移転後の主たる事務所の最寄りの供託所へ供託し、その後、従前の供託所に供託してある営業保証金を取り戻します。
この取戻しは公告なく直ちにできます。つまり、保管替えは請求できません。
また、弁済業務保証金については保証協会へお金を預けていることは不変なので、保管替えという概念はありません。
弁済業務保証金の還付~地位を失う場合~
意義
業者と取引した者が、その取引により受けた損害を営業保証金の中から弁済してもらうこと
対象
取引によって生じた債権に限ります。
なお、業者が協会の社員となる前にした取引に関する債権も含みます。
限度
営業保証金に相当する額
手続き
協会が還付前に債権額をチェックするため供託所から還付を受ける前に保証協会の認証が必要です。
不足分
- 還付により還付額相当の還付充当金が発生
- 大臣は保証協会に還付があった旨を通知
- 保証協会は通知を受けた日から2週間以内に還付相当額を供託
- 保証協会は社員に不足を通知
- 社員は通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を保証協会に納付しなければなりません。
- この期間内に充当金を納付できなかった社員は社員の地位を失います。
- 社員の地位を失った業者は1週間以内に営業保証金を供託し、その旨の届出を免許権者にしなければ事業を継続することができません。
弁済業務保証金の取戻し~分担金の返還~
意義
弁済業務保証金が不要になった場合、保証協会が供託所から弁済業務保証金を取り戻し、その金額に相当する分担金を業者に返還すること
取り戻し事由
- 社員である業者が社員でなくなった場合
- 一部事務所の廃止により弁済業務保証金分担金が超過した場合
取り戻し方法
取り戻し事由1の場合- 取り戻し事由が生じても、還付請求権者がいる可能性があります。
- 保証協会は6カ月以上の期間を定めて、還付請求権者に保証協会の認証を受けるための申し出をすべき旨を公告します。
- この期間内に申し出が無ければ保証協会は供託金を取り戻してよいこととなります。
直ちに取り戻し可能です。
営業保証金と弁済業務保証金の比較
営業保証金 | 弁済業務保証金 | |
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どこに | 主たる事務所の最寄りの供託所 | 法務大臣および国土交通大臣の定める供託所(東京法務局) |
いくら |
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どのように |
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事務所の新設 | 事前に供託して、その後、営業開始 | 事務所新設の日から2週間以内に分担金を納付(事後的) |
還付の手続き | 直接供託所に行う | 保証協会による認証が必要 |
還付による不足分 | 通知を受けた日から2週間以内に納付 | |
取り戻し |
一部事務所の廃止により供託額が超過した場合 →6カ月以内の期間を定めて公告し、申し出がなければ取り戻し可能 |
一部事務所の廃止により供託額が超過した場合 →直ちに取り戻し可能 |
宅地建物取引業保証協会 まとめ
意義
宅建業者のみを社員とする一般社団法人で、国土交通大臣が指定したもの
趣旨
集団保証による消費者保護と宅建業者の負担の軽減
社員
- 宅建業者のみを社員とします。
- 新たに社員が加入したときや社員がその地位を失ったときは、直ちにその社員の免許権者に報告します。
必須業務 | ||
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1.苦情の解決 | 社員たる業者の取り扱った取引について | |
2.研修の実施 | 1.宅建取引士 および 2.その他の者への研修 | |
3.弁済業務 | 社員が行った取引で生じた相手方への債務の弁済。この場合、業者が社員となる前に生じた債務も対象となります。 | |
任意業務 | ||
1.一般保証業務 | 社員である業者が顧客から受領した支払金や預り金に対して、連帯保証をする業務などのこと | 国土交通大臣の承認を得ることも必要 |
2.手付金等保管事業 | 業者の手付金などの保全事業に対する指定保管期間としての業務 | |
3.費用の助成 | 全国の宅建業者を直接または間接の社員とする一般社団法人による宅建取引士に対する研修の実施に要する費用の助成 | |
4.宅建業の健全な発達を図るため必要な業務 | - |
営業保証金と弁済業務保証金についてのよくある質問
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弁済業務保証金は供託額が、低額なのに還付限度額が同じなら、弁済業務保証金の方がお得な気がしますが、営業保証金を選ぶ理由は何かあるのでしょうか?
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初めから多額の資金が必要だと一般の人にはとても開業できないため保証協会が作られました。弁済業務保証金は消費者、宅建業者双方のためにある制度といえると思います。
営業保証金でも弁済業務保証金でも還付された金額が充当に必要な金額となります。2,000万円還付されたら、充当金も2,000万円必要です。
保証協会の社員の地位を失った宅地建物取引業者が、引き続き宅地建物取引業を営む場合はもう保証協会に入ることができないので営業保証金を供託するしかありません。保証協会のほうが圧倒的に多いとは思いますが、やむをえない場合等は営業保証金しかできないのでそのような場合に選ぶのではないかと思われます。
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営業保証金を供託している宅建業者が、弁済業務保証金制度にも加入(営業保証金と併用)することは可能なのでしょうか?
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営業保証金の供託と弁済業務保証金の納付の両方を行うことは可能です。しかし、弁済業務保証金を納付すれば、高額な営業保証金の供託を免れることができるわけですから、実際に両方を行っている宅建業者は皆無と思われます。
なお、宅建業者は複数の保証協会には加入できません。(弁済業務保証金を複数の保証協会に納付することはできない)この点については、本試験にて時々、問われますのでおさえておきましょう。
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弁済業務保証金で還付により不足が発生したとき、保証協会から通知を受けた社員は2週間以内に還付充当金を納付しなければならないとありますが、例えば損害額が営業保証金に相当する1000万だった場合、1000万を納付するのですか?
それとも60万でいいのですか?
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ご質問の事例の場合、還付相当額、つまり1,000万円を保証協会に納付することが必要になります。
窪田義幸(くぼた よしゆき)
″栄光を掴む″ための講義、″強い意欲″を持ち続けるための講義をめざします
【出身】愛知県
【経歴】立命館大学文学部卒。宅建・マンション管理士・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士。
【趣味】神社仏閣巡り
【受験歴】1999年宅建試験受験、合格
【講師歴】2001年よりフォーサイト宅建講座講師スタート
【刊行書籍】3ヵ月で宅建 本当は教えたくない究極の宅建合格メソッド (最短合格シリーズ)
【座右の銘】雨垂れ石を穿つ
●フォーサイト公式Youtubeチャンネル「くぼたっけん」
●フォーサイト講師ブログ