履行遅滞とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

履行遅滞とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

履行遅滞とは
目次

履行遅滞とは

履行遅滞とは文字通り、履行が遅れるといった意味です。履行遅滞の場合、いつから遅れたと判断するのかが重要です。

  1. 確定期限債務の場合
    例)8月11日に借金を返す取り決めをしていた
    →期限到来時=8/12から履行遅滞となります。
  2. 不確定期限債務
    例)父が死亡したときに土地建物を渡す約束
    →期限到来を知ったとき=父の死亡を知ったときから履行遅滞となります。
  3. 期限の定めのない債務
    例)お金の返済は、貸した側がお金に困った時でいいという約束で借金をした場合
    →請求されたとき=貸した側が「返して」と言ってきたときから履行遅滞となります。
履行遅滞とは

履行遅滞が原因で解除する場合~損害賠償等に至るまで~

まず解除とは、相手方が約束した責任を果たしてくれない時に、もう見切りをつけて契約を無かったことにすることを言います。

履行遅滞の場合と履行不能の場合で要件が違ったり、手続きが違ったりしますので、詳しくは「解除条件」でご確認ください。

この解除を、履行遅滞が原因でする場合、どのような流れになるのかをみていきましょう。

履行遅滞の場合の解除条件

どのような場合解除権が発生するか?

債務の履行が遅れている場合に解除権が発生します。

その場合の手続きについて

履行遅滞の場合は原則として、相当期間を定めて催告をします。

それでも履行がないがない場合は解除が可能となります。

例外的に、履行不能の場合は催告することなく即解除が可能です。

誰が誰に対して言うのか?

解除権を持つ全員が、契約の相手方全員に言うことができます。

どのようにして言うのか?

一方的意思表示によっていうことができます。

すなわち、相手方の承諾は不要です。

一度行ったら撤回できるか?

重要なことですので、一度言ったことは撤回することができません。

解除権の消滅

  1. 解除権を有する者が数人いる場合、1人の解除権が消滅すると他の者の解除権も消滅します。
  2. 解除権を有する場合、相手方の催告に答えないと解除権は消滅します。

効果はいつ生じるのか?

始めからなかったことになります。

どんな効果が生じるのか?

  1. 原状回復義務が発生します。
  2. 手付金・代金などの金銭は受領の時から利息を付けて返す必要があります。
  3. 損害賠償義務が発生します。

履行遅滞と不法行為 ~時期の定めの違い~

債務不履行と不法行為の場合で、いつからが遅滞となるのかを比較していきます。

まず、債務不履行の場合は「期限の定めのなき債務として履行の請求を受けた時」と民法第412条第3項に定められています。一方、不法行為の場合は、不法行為のときから遅滞となることが判例によって示されています。

これを事例で説明していきます。

例)若林さんは、相澤さんに家を売りましたが、若林さんは家をなかなか渡してくれません。
いつ引渡しをするかは定めていませんでした。この場合、相澤さんが家を引き渡すよう請求した時から「遅滞」となります。

例)若林さんは車を運転していて、誤って相澤さんにぶつかってしまいました。不法行為においては、ぶつかった時から「遅滞」となります。
履行遅滞と不法行為

履行遅滞と不完全履行の違い

履行遅滞とは、説明してきた通り、履行が遅れることです。

では、不完全履行とはどのような状態を言うのでしょうか。不完全履行とは、一応履行はされたものの、不完全な状態である場合を言います。

例)若林さんはやっと相澤さんに家を引き渡しました。
しかし、床の一部が陥没している状態でした。この場合、一応引渡しはしているので、履行遅滞の状態は脱しているのですが、家が完全ではないため、不完全履行となります。

履行不能と不可抗力

履行遅滞・不完全履行とセットで覚えたい単語として、履行不能があります。

これは、完全に履行ができなくなることを言います。

例)若林さんのタバコの火の不始末により、相澤さんに引き渡ししなければならない家が燃えてしまいました。この場合、元通りの家を引き渡すことができないので、履行不能となります。

ただし、履行不能が認められるのは、金銭債務以外の債務となります。

金銭債務の特則として、履行不能は認められません。なぜなら、お金は特定の「この紙幣/この硬貨」でなければならないわけでなく、どの紙幣または硬貨でも構わないわけです。

ですから、「借金を返すために用意していた紙幣を無くしてしまったので、弁済できません」という

言い訳は通じないということです。

履行不能と不可抗力

履行遅滞と同時履行の抗弁権の関係

履行遅滞と同時履行の抗弁権が同時に起こる場合があります。

そのような場合は、履行遅滞が認められるのか・同時履行の抗弁権が認められるのか、具体例を通してみていきましょう。

例)井上さんと上田さんは車の売買契約を結びました。納車の日、車を届けに来るはずの井上さんがいつになっても現れません。上田さんからの振込がないため、井上さんは納車に向かっていなかったのです。
この場合、上田さんは、井上さんの履行遅滞を主張することができるのでしょうか。

上記ケースの場合、上田さんが待ちぼうけを食ったようにも見えますが、上田さんは自分の責任(=振込)を果たしていません。 したがって、この場合は履行遅滞ではなく、同時履行の抗弁権が採用されます。
つまり、納車と支払いは同時に行い、相手が義務を果たさなければ、自分も債務を果たさなくて良いというものです。

同時履行の抗弁権とは

履行遅滞と同時履行の抗弁権の関係

履行遅滞に関するよくある質問

相手の履行遅滞が原因での解除の時でも、Aさんは受領した代金の一部を返還する時に利息もつけなきゃいけないのでしょうか。

Aさんの負担が大きいように思えるのですが…。

解除の場合、金銭の返還の場合、利息をつけて返すことになります。

もし、金銭を支払っていなかった場合、その金銭は通常、銀行に預金することになるので利息がつくのが普通だからです。

問:Aは,自己の所有する宅地をBに代金2,000万円で売り渡す契約を締結し、BはAに手付として200万円を支払った。Aが契約を履行しない場合、Bは,相当の期間を定めて履行を催告しその期間内にAが履行しない場合には、Bは、手付を放棄して契約を解除することができる。

質問:売主Aが履行に着手するまでは、買主は手付けを放棄して契約の解除ができるのではないでしょうか?

この問題ですが、手付解除ではなく、債務不履行を出題の論点としています。理由として、「相当の期間を定めて履行を催告」しているからです。

手付が交付されていて債務不履行で契約が解除された場合、当事者には、原状回復義務があり、Aは、受け取った手付金は不当利得として返還する義務があります。

そして、Aの債務不履行によって解除権を行使したBは、手付の額とは別に債務不履行による損害賠償を請求できることになります。

解除権を有する場合、相手方の催告に答えないと解除権は消滅する。

とは、履行遅滞状態で解除権者が相手方に催告し、相手方から返答の催告があって、そのことに答えないと解除権は消滅するということなのでしょうか?

(履行遅滞による解除と解除権の消滅)

相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅します。