AEO制度とは?制度について徹底解説!

更新日:2020年7月14日

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AEO制度とは?

AEO制度とは、条件を満たした業者に対し、税関手続きの緩和や簡素化を提供する制度です。AEO制度のきっかけとなったのは、2001年にアメリカで起こった「同時多発テロ事件」。それを契機に、各国でAEO制度導入がスタートし、日本でも2008年度より導入されています。

AEO制度の概要を分かりやすく解説

AEO制度のAEOとは、Authorized Economic Operatorの頭文字を取ったものです。日本語に訳すと、「認定事業者」となります。

事業者を認定するのは税関であり、以下の2つが認定のポイントとなります。

  • 貨物のセキュリティ管理が整っている
  • コンプライアンス体制が整っている

上記を満たし、認定事業者となった業者には2つのメリットが与えられます。

  • 税関手続きの簡素化
  • 税関手続きの迅速化

つまり、貨物を安全に管理し、法を守った上で事業を行っている業者には、煩雑になりがちな税関手続きを、認定されていない事業者よりも簡単に、かつ早く貨物が引き取れるように取り計らいましょうという制度です。

AEO制度の税関上の目的は?

AEO制度の税関上の目的は以下の3つです。

  • 民間企業と税関の信頼関係の構築
  • 貿易におけるセキュリティの確保
  • 税関手続きの効率化

税関は、麻薬やけん銃、コピー商品やワシントン条約などで輸出入が規制されているものなどに対する水際取締対策を最重要課題としています。また、輸出入を行う業者や貿易に関わる業者が、知らぬ間にテロ組織に手を貸してしまうリスクも防ぐことが大切だと考えています。

そのため、以下のようにリスクが低い業者とリスクが高い業者で、取り締まりにかける労力を分散しようと考えているのです。

リスクが低い
業者
簡素化および迅速化というメリットにより、書類審査や検査の軽減
リスクが高い
業者
従来リスクが低い業者にかけていた時間を使い、書類審査や検査を徹底して行う

AEO制度の6つの制度

AEO制度導入時には、制度の対象となるのは輸出者のみでしたが現在では6つの制度に増えました。まずは一覧表で確認しましょう。

制度 AEO事業者の種類 業者数 緩和措置
特定輸出者制度 AEO輸出者 231
  • 特定輸出申告が可能
  • 審査、検査率の軽減
特例輸入者制度 AEO輸入者 99
  • 特例輸入申告が可能
  • 審査、検査率の軽減
特定保税承認者制度 AEO保税承認者 142
  • 許可手数料の免除
  • 検査率の軽減
認定通関業者制度 AEO通関業者 226
  • 特定委託輸出申告が可能
  • 特定委託輸入申告が可能
  • 非蔵置官署への申告が可能
特定保税運送者制度 AEO保税運送者 9
  • 特定委託輸出申告が可能
認定製造者制度 AEO製造者 -
  • 認定製造者制度利用申告が可能

※2020/6/5現在

以下に、それぞれの事業者の概要とメリットをご紹介します。

特定輸出者制度(AEO輸出者)

特定輸出者制度(AEO輸出者)とは、外国に向けて輸出を行う事業者が対象となります。メリットは大きくわけて5つです。以下をご確認ください。

  1. 特定輸出申告の利用
    輸出貨物を保税地域などに搬入することなく、輸出申告を行い、輸出許可を受けることができます。これを特定輸出申告と呼びます。
    特定輸出申告の利用により、輸出者の倉庫内で輸出許可まで進めるので、以下のリードタイムが短縮できます。
    • 貨物をコンテナなどに詰めこむ時間
    • 貨物を保税地域へ輸送する時間
  2. 申告官署の自由化
    輸出申告を行う税関官署を自由に選択できます。

    はじめての港から船積みする際に、日頃申告している税関菅署に申告することが可能です。日頃申告している税関菅署が頭となってくれるので、税関内の情報共有がスムーズであり、審査の時間ロスが期待できます。
  3. 輸出許可後の訂正に係る申請手続の簡素化
    輸出許可を受けた後、船会社都合などにより「積載船名」が変更された場合、変更手続きが不要です。

    また積載船舶などの出港予定日以降に輸出許可書に記載された内容が変更となった場合、輸出許可を受けた税関官署ごとに行う必要がありません。輸出許可内容変更手続きはAEO認定を受けた税関菅署のAEO担当部門に一本化できます。
  4. 通い容器の免税手続の簡素化
    通い容器(反復して輸送に利用するものとして税関に認められたもの)にかかる免税手続きを簡素化できます。

    たとえば、外国から輸入した通い容器を再輸出する際、下記の手続きが不要となります。
    • 輸入許可書等の提出
    • 再輸出減免税貨物の輸出の届出書の提出
  5. 審査・検査の軽減
    特定輸出申告にかかる税関の書類審査や検査が簡素化するため、輸出許可が早くなります。

    結果、税関検査に要する作業費用の削減や船積みまでのリードタイムが早くなるメリットが生まれます。

特例輸入者制度(AEO輸入者)

特例輸入者制度(AEO輸入者)とは、輸入する事業者が対象となります。メリットは大きくわけて5つあります。特定輸出者制度と重複する部分は、簡単に説明します。

  1. 特例輸入申告制度の利用
    輸入貨物が到着する前に通関手続きが完了する「特例輸入申告」が利用できます。「特例輸入申告」は輸入申告を以下の2つに分けて行うことで、貨物を迅速に引き取れるというメリットがあります。

    • 引取申告
      →輸入する貨物の引取のための申告のみ、納税は不要
    • 特例申告
      →既に引き取った輸入貨物の納税のための申告
    引取申告は、納税に関する入力項目がないため、一般の輸入申告より申告項目が少ないのがメリットです。また特例申告は、一ヶ月分の引取申告を一括して申告できるので手間も少なくて済みます。

  2. 申告官署の自由化
    輸入申告を行う税関官署を自由に選択できます。

    特定輸出申告と同様に、税関同士の情報の共有化により審査の迅速化が図れるメリットがあります。
  3. 加工再輸入減税制度の減税手続の簡素化
    加工再輸入減税制度、通称暫8(関税暫定措置法第8条の略)は、煩雑さを極める税関手続きとして有名です。これらの税関手続きにおいて、下記が不要となります。
    • 附属書(税関様式P第7710号)の作成及び提出
    • 確認申告書(交付用)及び生地見本等の提示
    • 加工仕様書、加工指図書等の加工の詳細を記載した書類などの提出
    よって、加工再輸入減税制度が利用しやすくなるメリットにつながるでしょう。
  4. 通い容器の免税手続の簡素化
    特定輸出申告と同様に、通い容器の免税手続きを簡素化できます。

    再輸入時に必要であった、以下手続きがすべて不要となり、免税制度の利用がしやすくなっています。
    • 帳簿等の関係資料の事前提出
    • 輸出申告書への材質等の記載
    • 輸出許可書等の提示 など
  5. 審査・検査の軽減
    特例輸入申告における引取申告時の書類審査や検査が簡素化され、スムーズな引取が可能となります。

特定保税承認者制度(AEO保税承認者)

特定保税承認者制度(AEO保税承認者)とは、保税蔵置場などの許可を受けている倉庫業者が対象です。メリットは大きくわけて4つあります。

  1. 保税蔵置場などの設置を届出で行える
    通常、保税蔵置場や保税工場を設置するためには税関長の「許可」が必要です。しかしAEO保税承認者になれば税関長への「届出」で対応可能となります。

    また一般の保税蔵置場の許可期間が6年であるのに対し、8年の許可期間が与えられるため、更新頻度が少なくて済みます。
  2. 帳簿の保存期間の短縮
    届出をした保税蔵置場や保税工場に関する帳簿の保管期間が、以下の通り短縮されます。

    従来2年→1年に
  3. 保税業務検査の軽減
    保税蔵置場や保税工場では税関による保税業務検査(監査)が定期的にあるのが一般的です。

    AEO保税承認者が届出する保税蔵置場などにおいては、検査内容や方法、期間などが簡略化されます。
  4. 許可手数料の免除
    AEO保税承認者が届出する保税蔵置場などについては、許可手数料が免除されるメリットがあります。

    一般的には、保税蔵置場の面積などに応じて月額9,500円~88,700円までの許可手数料が必要ですが、支払いは不要となりコスト削減につながります。

認定通関業者制度(AEO通関業者)

認定通関業者制度(AEO通関業者)は通関業者を対象とした制度です。メリットは大きくわけて4つあります。特定輸出者制度、特例輸入者制度と重複する部分は、割愛します。

  1. 特定委託輸出申告の利用
    特定輸出者制度と同様に、保税地域以外の場所にある貨物に対し、輸出申告を行い、許可を受けることができます。これにより、船積みまでのリードタイムの短縮が可能です。

    通関業者は、輸出者から委任を受け、輸出者に代わって税関に輸出申告を行うことを業としているため、輸出者から依頼のあった輸出申告に限ります。
  2. 特例輸入申告制度の利用
    特例輸入者制度と同様に、輸入貨物が日本に到着する前に通関手続きが完了する「特例輸入申告」の利用が可能です。

    輸入貨物を引取るための簡易的な「引取申告」の利用により、貨物が到着してすぐに輸入者に引き渡せるメリットがあります。また希望すれば一ヶ月分の引取申告を一括して納税する「特例申告」が選択できるため、時間的猶予も生まれるでしょう。

    特例輸入申告制度の利用ができるのは、輸入者から依頼を受けた輸入申告に限ります。
  3. 申告官署の自由化
    輸入申告を行う税関官署を自由に選択できることは、通関業者にもメリットをもたらします。

    同じ輸入者が、従来と違う港を利用して輸入する際、日頃利用している税関官署に申告をすることで、対応する通関士が同じとなるので、税関対応がスムーズに進みます。

    以下のように、貨物が別の場所にあったとしても対応する税関官署及び通関士が同じであれば、一から説明をしたり、逆に質問をされたりがありません。

    (従来の例)
    • 輸入港:神戸
    • 申告する税関官署:神戸税関
    • 通関士:神戸支店 A氏
    (従来と違う港を利用し、申告官署の自由化を利用しない例)
    • 輸入港:東京
    • 申告する税関官署:東京税関
    • 通関士:東京支店 B氏
    (従来と違う港を利用し、申告官署の自由化を利用する例)
    • 輸入港:東京
    • 申告する税関官署:神戸税関
    • 通関士:神戸支店 A氏
  4. 加工再輸入減税制度の減税手続の簡素化
    特例輸入者制度と同様に、加工再輸入減税制度に利用に際して、必要とされる以下の書類が不要となります。
    • 附属書(税関様式P第7710号)の作成及び提出
    • 確認申告書(交付用)及び生地見本等の提示
    • 加工仕様書、加工指図書等の加工の詳細を記載した書類などの提出
    多くの場合、上記の書類は輸入者に代わり通関士もしくは通関従事者が作成するため、書類作成に多くの時間を取られずにすみます。

特定保税運送者制度(AEO保税運送者)

特定保税運送者制度(AEO保税運送者)とは、外国貨物を保税運送制度の利用により、運送する業者が対象です。メリットは大きくわけて2つあります。

  1. 保税運送ごとの承認手続が不要
    外国貨物の保税地域間で輸送する際には、税関に対象となる貨物ごとに保税運送の申告を行い、承認を受ける必要があります。

    しかし特定保税運送者制度を利用すれば、個別の保税運送承認が不要となるため、手続きが簡易となり、事務負担の軽減がはかれます。
  2. 特定委託輸出申告にかかる貨物の運送が可能
    特定輸出者制度(AEO輸出者)で利用可能となる特定委託輸出申告利用にかかる外国貨物の保税運送が可能となります。

    貨物の保税運送は、特定輸出者制度(AEO輸出者)からの委託を受けたものに限定される点に注意しましょう。

認定製造者制度(AEO製造者)

認定製造者制度(AEO製造者)とは、輸出する貨物を製造する業者が対象です。メリットは大きくわけて2つあります。

  1. 特定製造貨物輸出申告の利用
    特定製造貨物輸出申告の利用により、貨物を保税地域に搬入する前に、輸出申告を行い、許可を受けることができます。AEO製造者が製造した外国貨物を輸出する際に限定される点に注意が必要です。

    特定製造貨物輸出申告の利用により、特定輸出申告同様に、船積みまでのリードタイムが短縮できます。

  2. 申告官署の自由化
    特定製造貨物輸出者が行う輸出申告もしくは特定製造貨物輸出申告を、貨物の蔵置場所に関係なく、どこの税関官署に申告をしても問題ありません。

    従来と違う港から輸出する際においても、日頃利用している税関官署に申告をすることで、税関対応がスムーズに進むことが期待できます。

AEO制度導入で考えられるデメリット

AEO制度導入においては、基本的に大きなデメリットはありません。法令を遵守し、適正な貨物管理を行ってさえいれば、上記で紹介してきたようにさまざまなメリットが得られます。

強いてあげるとすれば、以下の2点でしょう。

  • 時間と人件費がかかる
    自己管理になっている部分が多いため、貨物管理にともなう書類を漏れなく作成し、保管しておく事務作業に時間や人件費が必要です。
  • 法令を遵守し、適正な貨物管理ができていなかった時の罰則
    一般の輸出入者、通関業者、運送業者、製造業者などと比較して、メリットを与えている分、違反などが露呈した際に罰則を受けることがあります。

AEO事業者の要件とAEO事業者になる方法

では、ここからはAEO事業者になるための要件とAEO事業者になる方法をご紹介します。

AEO事業者の要件とは?

AEO事業者になるための要件は、大きく分けて2つあります。

  1. 3つのセキュリティの確保
    一つ目に「物理的セキュリティ」として、以下の2点の整備が必要です。
    • 動線管理
      →外国貨物を扱う場所であるため、不正侵入者を防ぐため、入退場の動線の確立
    • コンテナ管理
      →改造コンテナを利用させられ、知らず知らずのうちに規制物資の輸出入に手を貸してしまうリスクの排除
    二つ目は「人的セキュリティ」です。
    • 人的管理
      →社内での不正を抑制し、外部からの不正侵入者を見つけやすい環境整備
    • 業務委託先管理
      →業務委託する業者を管理、監督することで、流通上に発生するリスクを低減
    三つ目は「情報セキュリティ」です。
    • コンピューターネットワークへの不正アクセスを防ぎ、顧客情報および出荷情報の不正利用を防止する環境作り
  2. 法令遵守体制の構築
    法令遵守体制の構築を行う前に、以下の5つの法令上の認定要件を満たす必要があります。
    • 一定期間、法令違反履歴がない
    • 暴力団員などと関与がない
    • 業務を適正に遂行する能力を有する
    • 法令遵守規則を社内で規定している
    • NACCSを利用した業務が行える
    具体的には、適正に法令手続きを行うための手順書、貨物管理体制、社内監査体制、教育研修体制の整備や、帳簿書類を適正に作成し保管することなど、取り組むべき事項が細やかに決められています。

AEO事業者になる方法

AEO事業者になるためには、「社内で行うべき準備」と「税関との面談などの調整」の2点が必要です。

以下に、簡単に手順をご紹介します。

  1. 社内検討
  2. 税関との面談
  3. 社内体制の整備
  4. 法令順守規則(CP)、業務手順書の整備
  5. AEO申請
  6. AEO承認もしくは認定

3、4の社内整備の間も随時税関と面談や電話、メールなどで連絡を取り調整を行います。2の税関との最初の面談から、6の承認や認定を受けるまで、おおよそ1~2年を要します。

AEO事業者の申請先と審査期間

AEO事業者になるための申請先は、業務を主に行っている地域を管轄する税関です。多くの場合、本社がある地域を管轄する税関に申請をすることが多いようです。

AEO申請を行ってから、審査に要する期間はおおよそ2ヶ月程度です。前述したように、審査期間よりも税関との面談後、税関によって求められる書類を作成しては修正し、再度提出し確認をしてもらうというプレ審査に多くの時間を要します。

AEO事業者になる2つの付加価値

AEO事業者になることは税関がメリットとして明示している以外にも、2つの付加価値があります。

コンプライアンス遵守のアピール

認定AEO事業者であることが、コンプライアンス遵守のアピールとなり、取引を行う上での安心感につながります。実際に認定AEO事業者の多くが、自社のホームページや看板などの広告類、名刺などに「認定AEO事業者」の文言を入れています。

通関業者であれば、荷物管理もしっかりしておりトラブルがないだろう、法令遵守をしているため、法にも詳しいだろうと、輸出入者に安心感を与えることができます。

相互承認利用による取引のスピード化

AEO制度は日本のみならず、各国で制度化されています。そのため、互いにAEO制度を持っていれば、相互承認をすることで、双方の国での税関手続きを簡素化することができます。

言葉や文化が異なる国との貿易取引においても、AEO事業者であるという安心感の元、セキュリティレベルも保ちつつ、スムーズな物流が実現できるのがメリットでしょう。

またAEO事業者が国際的にも企業のステイタスとして認められ、引き合いが増える可能性も考えられます。

まとめ

AEO制度は輸出入者、保税運送申告者、通関業者、製造者と貿易取引にたずさわる多くの企業にメリットがある制度とされています。税関もセキュリティ精度を高める意味合いもあり、積極的な取得を推奨しており、輸出入者も注目しているのも事実です。

それぞれのAEO事業者のメリットを知り、手順などを知っておくことで、通関士としてのサービスの質の向上も期待できます。

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