「キャッチオール規制」ってなに?簡単にわかりやすく解説!

更新日:2020年10月29日

ミサイル

キャッチオール規制は、安全保障輸出管理に係るキーワードです。キャッチオール規制とは何か?その概要について、簡単にわかりやすくまとめます。

目次

経済産業大臣の輸出許可が必要!「キャッチオール規制」とは?

「キャッチオール規制(英語:Catch-All Control)」は、補完的輸出規制とも呼ばれます。いったい何に対して補完的なのか?というと、軍事転用の可能性が特に高いものとして輸出貿易管理令(輸出令)別表1の1~15項および、外国為替令(外為令)別表の1~15項に指定されている「リスト規制(List control)」ではカバーしきれないところを補っています。

リスト規制品目・技術以外で、どう頑張っても兵器用関連へ転用できないだろう食料や木材、紙製品等を除く全ての貨物・技術がキャッチオール規制の対象です。対象の貨物は輸出令別表1の“16項”中欄(貨物欄)に、技術は外為令別表“16項”に定められているので、キャッチオール規制対象のことを「16項」と表現します。

キャッチオール規制は、「大量破壊兵器キャッチオール」と「通常兵器キャッチオール」の2種類からなります。兵器に転用されうる貨物と技術がテロ組織などに渡らないようにするため、16項該当の貨物や技術が、用途や最終需要者(エンドユーザー)の観点から、大量破壊兵器・通常兵器の開発等に用いられる懸念がある場合に、経済産業大臣の許可が必要になります。

ここで、別表1~15項のリスト規制?16項?となっている方へ全体像を簡単に。

外国為替及び外国貿易法(外為法:がいためほう)によって、安全保障貿易管理上の規制が行われています。

項番号 主なもの 輸出規制
1 武器 リスト規制
2 原子力
3の1 化学兵器 例)弁、ポンプ
3の2 生物兵器
4 ミサイル
5 先端材料
6 材料加工
7 エレクトロニクス
8 コンピュータ
9 通信関連
10 センサー・レーザー
11 航法関係
12 海洋関連
13 推進装置 例)人工衛星、無人航空機
14 その他
例)粉末状の金属燃料、電気制動シャッター
15 機微品目 例)電波の吸収材、水中探知装置
16 リスト規制品目以外で食料や木材等を除く全ての貨物・技術 キャッチオール 規制

法令上16項は、“関税定率法別表の第25類から第40類まで、第54類から第59類まで、第63類、第68類から第93類まで又は第95類に該当する貨物・これらに該当する貨物の設計、製造又は使用に係る技術であって、経済産業省令で定めるもの(1から15までの項の中欄に掲げるものを除く)”となっています。

関税定率法別表は税関ホームページの輸出統計品目表から参照できますので、ご興味のある方は照らし合わせてチェックしてみてください。

簡単にいえば、リスト規制品目(=1から15までの項の中欄に掲げるもの)以外で食料や木材等を除く全ての貨物・それに係る技術がキャッチオール規制の対象ということです。

ちなみに、1~15項のリスト規制に該当し、経済産業大臣の許可が必要かどうかを関係法令と照らし合わせて判断することを「該非判定(がいひはんてい)」といいます。結果を文書化したものを「該非判定書」や「パラメータシート」、「非該当証明書」などと呼びます。

非該当証明の「非該当」というのは、別表1~15項に該当しない=リスト規制品目以外 であることを意味しますので、食料や木材等のような兵器無縁のものでない限り、16項キャッチオール規制の対象であるといえます。

なので、たとえリスト規制の該非判定が非該当であっても、キャッチオール規制に係る経済産業大臣の許可が必要かどうか、さらにチェックする必要があるということです。

このキャッチオール規制による輸出許可の申請が必要かどうかは、

  • 16項該当の規制対象か?
  • 輸出先はどこか? 輸出令別表3のホワイト国or非ホワイト国向け?
  • 用途、最終需要者に兵器開発に関する懸念があるか?

これらの観点に注目し、判断します。

それぞれもっと詳しくみていきます。

ホワイト国向けは規制の対象外?!

かつて「ホワイト国」と呼ばれた輸出管理徹底国向けはキャッチオール規制の対象外となっています。

2020年現在の輸出管理徹底国は以下26か国です。輸出令別表第3に掲げられています。

輸出令別表第3の国と地域:
【南北アメリカ】アルゼンチン、カナダ、アメリカ合衆国
【ヨーロッパ】オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国
【オセアニア】オーストラリア、ニュージーランド

これらの地域に輸出する貨物や技術については、キャッチオール規制の対象から外れていますので、規制対象である16項の貨物や技術であっても経済産業大臣の輸出許可は要りません。

ところで、この「ホワイト国」。聞き覚えのある方も多いと思います。
2019年、韓国のホワイト国除外、輸出管理規制強化のニュースがメディアでも大きく取り上げられました。それまで日本では輸出令別表第3の国を「ホワイト国」として区別していましたが、これを契機に「グループA」と呼称するようになりました。

同年に法改正が行われ大韓民国は輸出令別表第3から除外されたので、ホワイト国のグループAではなく、非ホワイト国上位のグループBに分類されています。グループBは輸出管理レジーム*に参加し一定要件を満たす国・地域を指します。

このグループはAからDまで4つのカテゴリーに分けられ、グループB,C,懸念国であるD向けは、キャッチオール規制の対象となります。

※以下4つの国際輸出管理体制があります。

  • 原子力船用品・技術、関連汎用品・技術を規制対象とする「NSG(Nuclear Suppliers Group:原子力供給国グループ)」
  • 化学兵器、生物兵器を規制対象とする「AG(Australia Group:オーストラリア・グループ)」
  • ミサイル、無人航空機などを規制対象とする「MTCR(Missile Technology Control Regime:ミサイル技術管理レジーム)」
  • 武器や先端材料などの汎用品を規制対象とする「WA(Wassenaar Arrangement:ワッセナー・アレンジメント)」

韓国は、これら4つの輸出管理レジームに参加していますので、非ホワイト国上位のグループBとなっています。

「16 項該当=経済産業大臣の許可が必要」というわけではない!

16項に該当するものであり、かつ、非ホワイト国向けだからといって、必ずしも許可申請が必須になるわけではありません。許可が必要になるふたつの要件があります。

ひとつめは、輸出者の確認による「客観要件(The “know” condition)」です。
どのような用途として使用されるかの「用途確認」と、どのような需要者が使用するかの「需要者確認」を輸出者が行った結果、輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、

  • 大量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵等に用いられるおそれがある
  • 通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがある

場合に、許可申請が必要となります。

もうひとつは、経済産業大臣の通知による「インフォーム要件(The “informed” condition)」です。

経済産業大臣から兵器転用の懸念が示され、許可申請をすべき旨の通知を受けた場合、許可申請が必要になります。このケースでは懸念が払しょくされた時に限って、許可が受けられます。

これらふたつの要件のいずれかに該当する場合、許可申請をして、経済産業大臣の許可を受けなければなりません。細かい規制要件や手続きのフローは経済産業省ホームページにてチェックしましょう。

まとめ

キャッチオール規制とは、リスト規制だけではカバーしきれないところを補完する安全保障上の規制です。用途や需要者によっては経済産業大臣の輸出許可が必要になります。ただし、ホワイト国向けはキャッチオール規制の対象外です。

もし許可が必要な貨物や技術を無許可で輸出・提供すると外為法違反となり、懲役、罰金といった刑事罰や行政制裁を受けることになります。

一見兵器に結び付かないような貨物、何気ない留学生との技術のやり取りも規制対象となりえます。貨物の輸出や技術提供の際には、安全保障貿易管理の観点にも留意しましょう!

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