通関業者の義務と権利

通関業者の義務・権利

通関業法では、通関業は許可制と規定されています。これは、一般的には規制されている通関業という特殊な業務を、特別に許可されたものだけが実施することが出来るということを指します。

つまり、通関業を生業とするものは、「義務」をしっかり果たさなければならなく、その上で通関業特有の権利を訴えることが出来るのです。

今回は、そんな通関業者の義務と権利を中心に理解を深めていきましょう。

目次

通関業者の義務とは

通関業者の義務に関しては毎年国家試験で出題されています。特に以下の4つに関しては細部まで問われる傾向がありますので、丁寧に学習していきましょう。

①通関士の設置義務

まず一つ目の義務として挙げられるのが、通関士の設置義務です。

通関業者は、通関業を適切に行うため、営業所ごとに「取り扱う貨物の数量や種類、通関書類の数等に応じて」必要な人員の通関士を置かなければならないと規定されています。

ただし、その営業所において取り扱う貨物が「一定の種類の貨物」のみで限られている場合は、通関士の設置を要しません。

必要な人員の通関士の数ってなに?

上記における「営業所ごとにおける必要な通関士の人員」とは何を指すのでしょうか。

抽象的な表現ですが、業務の効率化や最適化、取扱業務の難易度、通関士自体の経験等を総合的に勘案して人員が決定されることとなります。尚、財務大臣は、上記の内容が十分果たされないと認めるときは通関士の増員に関して助言をすることが出来ます(強制力はありません)。

一定の種類の貨物ってなに?

また、上記の「一定の種類の貨物」とは、文字通り取り扱う貨物が幅広くなく、一定の種類に限られていて、簡易で定型化されているものを言います。その上で、これらの貨物を反復継続的に行い、特別に広く豊富な知識がなくても通関業に差し支えないものと捉えることが出来るものです。例えばコンテナーや修理用部品の通関手続のみを行う場合、あるいは船用品の積込みのみ行う場合が該当します。

②通関士の審査について

第二に挙げられる義務としては、通関士の審査業務があります。通関業法第14条では、通関業者は、税関官署に提出する書類のうち、政令で定められたものについては通関士に審査させ、記名押印させなければならないと規定されています。

審査を要する書類ってなに?

特に上記の通関士の審査を要する書類にはどんなものがあるかは国家試験でも出題される可能性が高いため、確実な理解が求められます。具体的には以下の7つが当たります。

①輸出申告書または輸入申告書
②特例輸入者(または特例輸出者)の承認申請書
③船(機)用品積込申告書
④蔵入、移入、総保入承認申請書
⑤不服申し立て書
⑥特例申告書
⑦修正申告書または更正請求書

試験では「通関士に審査をさせるべき書類は、次のうちどれか」という設問が予想されます。この7つに関しては難しく考えず、丸暗記することが肝要です。

記名押印がない場合はどうなるの?

通関士の記名押印は上記書類の必須条件ですが、注意すべきは、この記名押印がなくても各書類の効力に影響を及ぼすことはないという点です。

少しわかりにくい表現かもしれませんが、いわゆる「やむを得ない場合は必要ない」というようなイメージでとらえて差し支えないでしょう。

通関士の記名押印がないだけで通関書類を無効にしてしまうと、その輸出入に直接的にかかわる輸出入者に大きなデメリットが発生する可能性があります。輸出入の遅れなどが発生すると、彼らに致命的なダメージを与えかねません。

ただし、だからと言って何でもかんでも記名押印が必要ないのかと言われれば、答えは否です。この規定はあくまで特別なやむを得ない事情があって記名押印がない(あるいは“できない”)ケースを想定して設けられたものであり、基本は、記名押印は必須条件となります。

正当な理由なくこの義務を果たさない場合は、通関業法違反として監督処分となる可能性もあるというのも豆知識として覚えておきましょう。

③記帳や保存、届出、報告等の義務

通関業法第22条では、通関業者の記帳や保存、届出、報告等に関して明記されています。

記帳義務

通関業者は、その営業所ごとに帳簿を作り、取り扱った通関業務の種類や件数、受け取る料金を記載しなければなりません。

保存義務

通関業者は、帳簿その他指定の書類はそれぞれ、閉鎖の日又は作成の日より3年間は保存しなければなりません。

届出義務

通関業者は、通関業務を担当する役員、営業所の責任者、通関士、通関業務の従業者の氏名及び異動の有無を財務大臣に届出なければなりません。ただし、通関業者に所属していても通関業務に直接的に関与していないもの(例えば電話オペレーターや経理担当など)までは含まれません。

定期報告義務

通関業者は、毎年4月1日から翌年3月31日までの間に行った通関業務の年度ごとに、定期報告書を作成し、翌年6月30日までに財務大臣に提出しなければなりません。

④その他の義務について

通関業者に求められるその他の義務の代表的なものとして、以下の通り表にまとめてみました。関連の条文も記しますので併せて参考にしてみてください。

通関業法
第17条
名義貸しの禁止 通関業者は、名義を他人に対し通関業のために使用させてはならない
通関業法
第18条
料金の掲示 通関業者は、通関業務その他関連業務の料金の額を営業所ごとに、見えやすい位置(営業所に入ってすぐの場所や、応接室の一番目立つ場所など)に掲示しなければならない
通関業法
第19条
秘密を守る義務 通関業者は、通関業務に関して知り得た秘密を他に漏らしたり盗用してはならない。尚、通関業者が通関業者でなくなったのちも同様です
通関業法
第20条
信用失墜行為の禁止 通関業者は、通関業者の信用や品位を害する行為をしてはならない

通関業者の権利とは

一方で、きちんと義務を果たしていれば、通関業者に認められた独自の権利というのも発生します。具体的には、①増額更正に対し意見を言う権利、②検査の立ち合いが出来る権利、の2つです。それぞれ具体的に以下よりご紹介していきましょう。

①増額更正に対し意見を言う権利

増額更正とは、通関業者が行った納税の申告に関して、「税率適用上の所属や課税価格の相違、その他関税に関する法令の適用上の解釈とは相反して納付すべき税額が増額となる」場合を指します。この場合税関長は、当該通関業者に対して意見を述べる権利を与えなければならないと規定されています。

通関業者は日頃からきちんと義務を果たし、責任と品行方正をもって業務を行っています。そんな中で納得のいく理由なく納める税金が増額となると、通関業者にとっては不利益になるというだけでなく、今後の通関業務に支障を及ぼしかねませんよね。

単純な計算や転記上の誤りなど客観的にみて明らかにおかしい場合には、この「意見を言う権利」は認められませんが、税関長にとっては通関業者に意見を言う権利を付与することにより、税関と相違する見解に耳を傾けつつ、処分の適性を図りたいという目的があります。

②検査の立ち合いが出来る権利

もう一つの権利として、税関長は通関業者に対し、営業所その他事業所の立ち入り検査を行う場合は立ち合いが出来る権利を付与しています。立ち合いを求めるための通知は口頭でも大丈夫ですし、あるいは書面のいずれでも差し支えありません。

通関業者への検査とはつまり、日頃の通関業務が不正なく正当に行われているかをチェックするためのものであり、決してマイナス要素ばかりではありません。ただし検査が入ることで間接的にでも通関業者の利益やイメージ自体に影響を及ぼす可能性も捨てきれないのも事実です。

そのため税関長は、通関業者に対して、その検査に自ら立ち合い、必要に応じて必要な主張、陳述を行うことが出来る権利を付与しているのです。

まとめ

通関業者の義務と権利について筆を進めてきましたが、まとめると、以下のような形となります。

通関業者の義務
通関士の設置義務
通関士に通関書類を審査させ、記名押印させる義務
記帳や保管、届出、報告等の義務
名義貸し禁止
料金等の掲示の義務
秘密を守る義務
信用失墜行為の禁止
通関業者の権利
税関長の増額更正に関して意見を述べる権利
税関職員が行う各種検査に立ち会うことができる権利

国家試験ではかなりつっこんだところまで出題される傾向があるため、丁寧にポイントを整理して理解を深めて頂ければ幸いです。

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