通関士講座の講師ブログ

米国の貿易戦略

みなさん、こんにちは。
講師の神田です。

米通商代表部(USTR)による報告書は、世界貿易機関(WTO)が海外の不公正な貿易措置に甘く、
米国が不利益をこうむってきたと指摘。不公正な措置には米国の国内法に基づく対抗措置を取るとし、
米国の利益を損なうようなWTOの決定には従わない姿勢を明らかにしました。

1995年に発足したWTOの紛争解決の仕組みは、拡大する世界の貿易取引を円滑に進める安定剤として機能してきました。
特にWTOの手続きを経ない一方的な制裁措置の発動を禁じたことで、制裁合戦を防いできた経緯があります。

最大の経済国である米国がこの手続きを無視して、高関税などの対抗措置を取るようになれば、
世界の貿易秩序は乱れ、報復措置が相次ぐ貿易戦争につながりかねない…と危惧する声もあります。

また、新政権が中国に対し、「為替操作」を理由に報復措置を取る可能性が取り沙汰されていますが、
実施されればWTO協定違反となる可能性が高いです。

もちろん、WTOが不公正な貿易措置の是正に十分貢献していないとの米国の主張には一理あります。
中国などによる知的財産権の侵害や、様々な形を取った輸出補助が放置されている面は否めないためです。

経済の歪は、国家間のトラブルの火種となることは、歴史を紐解くと明らかです。
今後の動向が気がかりとなりますね。