簿記とは?仕訳って何?検定の種類や難易度なども徹底解説!

更新日:2024年2月5日

簿記とは?仕訳って何?検定の種類や難易度なども徹底解説!
目次

簿記とは

簿記というと、「企業が自分の利益を計算するために行うこと」というイメージがあるかもしれません。しかし、それはほんの一側面に過ぎません。簿記の最も重要な役割は、「私たち一人一人の生活を守るために、経済環境を整備・維持すること」です。

私たちが生活するためには様々なモノ・サービスが必要です。そして、そのモノ・サービスを提供しているのは、ほとんどが株式会社です。では、株式会社ってどうやって設立されているのでしょう?会社の設立趣旨に共感する不特定多数の投資家からの出資によって成り立っています。そこで必要になるのが会社の活動状況に関する情報(利益・財産)の提供であり、その情報を生み出す技術が簿記・会計です。

簿記の目的・役割は?役立つ場面はいつ?

簿記・会計がなかったら、投資家は会社の状況を知ることができませんので、会社に出資しなくなるでしょう。そうすれば会社が設立されなくなります。会社が設立されなくなると、新しいモノ・サービスが生まれないばかりか、すでに存在する企業ですら、活動を継続することが難しくなるかもしれません。会社が世の中から消えるとどうなりますか?私たちは今日食べるご飯にすら困ることになってしまいます。

このように、簿記・会計は、投資家が会社の状況を理解するの助け、投資家から会社へ出資される状態を維持し、最終的には私たちの生活を成立させる役割を担っています。裁判があったり(弁護士)、手術があったり(医師)と、派手な側面をもつ他の資格に比べるととても地味なのですが、簿記の技術を持つことで、私たちの毎日の生活を支えるというとても重要な役割を担うことができるのです。

簿記の資格取得に向いている人とは?

どんな資格取得にも共通して言えることですが、合格を目指すべき「目的」が明確になっている方は合格に近づきやすいです。簿記の資格取得について言えば、第一に「仕事で使える知識の習得」が挙げられるでしょう。

簿記3級の対策を通して経理や会計、財務の基礎固めができますし、2級までレベルアップできればより一層専門的な知識が身につきます。会社員として経理の実務に従事したい方はもちろん、管理職を目指す方、会社経営に関心のある方等にも幅広く有益な知識となります。

一方で、「簿記の知識を家計に役立てたい」という目的を掲げる受験生も少なくありません。生活におけるお金の流れはもちろん、資産運用や節税対策等に、簿記の知識が役に立つでしょう。

簿記の基本”仕訳”について

「仕訳」とは、事業で発生した取引を、一定のルールに則って帳簿に記載する作業のことです。具体的には、売上や仕入れ、支払い等の経済的な変化の発生する取引に伴う、金銭的な価値の動きを借方と貸方に分類し、取引内容に合った勘定科目に振り分ける作業を指します。一見すると難しく感じられる仕訳ですが、基本的なルールは、簿記3級レベルで習得可能です。

貸借対照表とは?

貸借対照表

「貸借対照表」とは、一定時点での資産・負債・純資産の状態を表す資料です。表の左側に「資産」、右側に「負債+純資産」が記載され、左右の数値が常に同額で均衡を保つことから、「バランスシート(B/S)」とも呼ばれます。

貸借対照表を分析することで、会社がどのように資金を調達し、調達した資金をどのような資産として運用したかを読み解くことができます。

貸借対照表は、一会計期間における経営成績を表す「損益計算書」、営業活動・投資活動・財務活動のお金の流れをまとめた「キャッシュフロー計算書」と共に、企業の決算書の中核を成します。

損益計算書とは?

損益計算書

「損益計算書」とは、一会計期間における会社の収益と経費をまとめた収支報告書です。「Profit and Loss Statement」の略称として、一般的には「P/L」とも呼ばれます。

損益計算書から読み取れることは、収益から諸経費を差し引いた「利益」に関わる情報です。ひと口に「利益」と言っても売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益の5種類がありますが、損益計算書を活用することで、利益がどのような理由で発生したかや生じた利益がどの程度のものなのかが客観的に示され、経営状況の分析が可能となります。

簿記検定の種類について

ひと口に「簿記検定」といっても、実施団体別に異なる試験が行われています。それぞれの簿記試験について、解説しましょう。

損益計算書

1:日商簿記

数ある簿記検定試験の中でも、最も規模が大きく、知名度の高い試験といえば、日商簿記です。日商簿記は日本商工会議所が主催する検定で、学歴・年齢・性別・国籍を問わず誰でも受験できます。

日商簿記は、多くの企業において取得が奨励されている他、大学・短大の推薦入試や単位認定の基準に採用される等、社会的に幅広く評価されています。また、1級合格で税理士試験の受験資格が得られる等、会計・税務関連の国家資格の登竜門に位置づけられる試験としても有名です。

2:全経簿記

全経簿記とは、公益社団法人全国経理教育協会が主催する「簿記能力検定試験」の略称です。協会が指定する経理・会計の専門学校に通う学生のみが受験できます。

上級、1級、2級、3級、基礎の5つの試験に分かれており、上級に合格すると日商簿記1級同様、税理士試験の受験資格を得ることができます。

全経簿記上級の合格率が15%程であるのに対し、日商簿記1級の合格率がおよそ10%であることから、税理士の受験資格を得る目的での受験が多いようです。

3:全商簿記

全商簿記は、全国商業高等学校協会が主催する検定で、商業高校に通う高校生が受験します。ビジネスで求められる簿記の知識やスキルの証明になることはもちろんですが、出題の中心が「高校で使用する教科書」に基づく内容であり、基礎・基本を重視した試験である点に特徴があります。

全商簿記には、会計、原価計算、2級、3級の4つの試験があります。会計と原価計算の両方に合格することで1級取得として認められ、その難易度は日商簿記2級と同等とされています。

簿記検定の難易度・レベル

簿記試験の受験を決意したら、何級に挑戦するかを検討します。ここでは日商簿記の各級について、難易度を確認しましょう。

簿記3級の難易度・レベル

簿記3級では、経理関連書類の読み取りや適切な処理といった簿記の基本知識の習得が目指されます。

試験科目に工業簿記を含めず、商業簿記に限定されることから、簿記初学者でも無理なく合格を狙えるレベルと考えて良いでしょう。とはいえ、簿記特有の用語理解や仕訳等のルールについて正しく理解する必要がありますから、油断は禁物です。

合格率は各回40~50%と高い数字で推移していますが、受験生の半数は不合格になっていることを踏まえれば、計画的な学習がカギとなります。

関連記事:簿記3級の難易度の詳細はこちら

簿記2級の難易度・レベル

簿記2級は、高度な商業簿記および原価計算を含む工業簿記の修得、財務諸表の読み取りと経営状況の把握ができるレベルです。簿記の知識を仕事で活かしたい、大学の推薦入学を有利にしたい等の場合には、2級の取得が目指されます。

合格率はおおむね15~30%前後となり、3級と比較するとぐんと難易度が高くなることが伺えます。加えて、合格率の振れ幅の大きさも特徴であり、実施回によっては10%を切る場合もあることから、腰を据えた試験対策が求められます。

関連記事:簿記2級の難易度の詳細はこちら

簿記1級の難易度・レベル

簿記1級は、公認会計士や税理士等の上位資格へとつながるハイレベルな試験です。商業簿記と工業簿記に関わる高度な知識に加え、原価計算や会計学の習得が必要となることから、合格率は10%前後の狭き門とされています。

簿記1級の難しさは、出題範囲の広さや専門性の高さもさることながら、限られた試験時間の中で早く正確に解かなければならない点にあると言っても過言ではありません。また、試験科目ごとに合格基準点の設定があるため、苦手科目がある場合には苦戦を強いられることになります。

簿記の資格を取得することのメリット

簿記資格を取得することで、以下のような様々なメリットが考えられます。

経済社会を守るインフラに

簿記の技術があれば、経済社会を守るインフラになることができます。現在あるモノ・サービスを継続的に社会に提供することに貢献できるだけでなく、新しいモノ・サービスの提供にも間接的に貢献できます!

多くの場で必要とされる

簿記は経済社会を整備・維持する役割を担っているが故に、必ずどの会社でも実践されています。したがって、簿記・会計の知識があると、就職などで有利になる可能性が高いです。また、近年は簿記検定・税理士・会計士の受験者が減っています。しかし、簿記・会計の知識・技術を必要とする会社は減っていません。ということは?そうです。今、会計資格を取得すると、活躍の場はかなり広い状況です!

収入を高める可能性大!

近年の研究にて、簿記・会計の知識が報酬と正の比例関係にあることが明らかになってきました。まだ、正の比例関係に至るメカニズムまではハッキリ分かりませんが、簿記・会計の知識が報酬によい影響を与えていることは確かです。 社会インフラとしての役割を担うことができるだけでなく、多くの場で必要とされ、かつ、報酬も高くなる可能性が高い簿記・会計の資格。取得しない手はありませんよね!

簿記検定の試験日試験日はいつ?申し込み~合格までのスケジュール

日商簿記1級、2級、3級それぞれの試験申し込みから合格発表までのスケジュールを確認しましょう。

1:申込方法・申込期間

日商簿記検定試験は、原則として一年度あたり3回、6月、11月、2月に実施されます。ただし、1級の試験日は6月と11月のみの2回となっています。

申込方法には郵送、電話、インターネット、商工会議所の窓口等があり、各商工会議所によって異なります。また、申込期間の設定も受験地によって異なります。試験日のおよそ2ヶ月前を目安に申込に関わる詳細が公表されるので、受験希望地の商工会議所に問い合わせましょう。

なお、2級と3級では2020年12月よりCBT方式によるネット試験が導入され、試験施行機関で指定日を除き、ほぼ毎日受験できるようになりました。ネット試験と言っても自宅受験が可能となるわけではなく、あくまで指定会場での受験となりますが、受験生の予定に合わせて挑戦できます。

ネット試験の申込の流れは受験会場によって異なり、申込方法には申込専用ページからインターネット申込、窓口や電話からの申込があります。申込期間も実施日に応じて設定されています。詳細は、公式サイトでご確認ください。

試験日当日

試験会場の場所や集合時間、会場に持参するもの等の詳細は、受験申込完了後に送付される受験票に記載されています。受験票到着後に確認し、試験当日に慌てないように準備しておきましょう。

当日の持ち物には、「氏名、生年月日、顔写真のいずれも証明できる身分証明書」「電卓」「筆記用具」があります。

電卓は「計算機能(四則演算)のみのもの」、筆記用具は「HBまたはBの黒鉛筆、シャープペン、消しゴムに限定される」等の指定がありますので注意が必要です。顔写真付きの身分証明書を持っていない場合は、あらかじめ受験地の商工会議所に確認しておく必要があります。

当日の試験時間は1級で180分(90分×2)、2級で90分、3級で60分です。問題用紙・答案用紙・計算用紙は、試験終了後にすべて回収されます。

合格発表

合格発表は、従来型の筆記試験の場合、試験日から1~2ヶ月後を目安に商工会議所ごとに行われます。詳細は、申込時に確認しましょう。

一方、ネット試験の場合は試験終了後、自動採点されて画面上で合否が発表されます。併せて、合否結果を記載したスコアレポートが紙で配布され、合格者のみ、配布されたスコアレポート内のQRコードからデジタル合格証が取得できるようになっています。

簿記検定に関する問い合せ先はどこ?

日商簿記検定試験は、全国の商工会議所ごとに実施されています。

申込方法や申込期間、試験会場、集合時間、持ち物、合格発表日や発表方法等は受験地によって異なりますので、試験会場を管轄する商工会議所への問い合わせが必須となります。

なお、試験申込期間を設定していても、各級の定員に達した時点で受付を終了するケースもあるようです。申込期間の確認と申込は、なるべく早めに行う事をお勧めします。

簿記検定におすすめな勉強方法

日商簿記検定試験合格に向けた勉強方法は、受験する級によって若干の違いはあるものの、ポイントとしては「内容理解」「問題演習」への丁寧な取り組みが挙げられます。

内容理解で意識したいのが、暗記に頼るのではなく「なぜそうなるのか」を正しく説明できるようにすることです。十分な基礎固めが、次なるステップである問題演習や、今後の上位資格への挑戦へとつながります。

また、問題演習では、間違えた問題を復習し、同じミスを繰り返さないことを目標にします。

簿記検定合格のために必要な学習時間は?

合格までに必要な勉強時間は、実務経験や学習経験の有無や程度、学習方法等によって個人差があります。

日商簿記検定試験2級の場合、一般的には150~350時間程度と言われており、ある程度まとまった学習時間の確保が必要となります。

学習時間を短縮し、効率良く取り組みたい方であれば、独学よりも対策講座の活用がお勧めです。

簿記検定の勉強をする際の注意点

日商簿記検定試験の対策では、「基礎固め」が何よりも重要です。

そのため、内容理解をおろそかにして「暗記に頼る」「やみくもに問題をこなす」といった学習では、十分に勉強したつもりになっていても、いざ試験当日に基礎力の面で足元をすくわれることになりかねないため注意が必要です。

また、学習の土台となる基礎を固めるためには、「ひとつの教材を徹底的に理解する」ことが効果的です。

受験に対する不安から、テキストや問題集をやみくもに買い集めてしまう受験生は少なくありませんが、それぞれの内容を頭に入れることができなければ意味がありません。ご自身で「コレ」と決めた教材に、腰を据えて取り組む姿勢が肝心です。

まとめ

ここでは、簿記検定の概要について解説しました。ひと口に「簿記検定」といってもいくつか種類がありますが、幅広い受験生を対象とする日商簿記検定試験について理解を深めることができたでしょうか?

受験を決意したら、簿記検定に挑戦すべき「目的」を正しく見据え、合格に向けた効果的な学習方法を検討しましょう。

そしてもちろん、受験形式や日程、その他申込に関わる詳細の確認も、あらかじめ受験地となる商工会議所宛に行い、万全な体制で受験準備を進めましょう。

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