日商簿記・全商簿記・全経簿記の違いを教えて!就職にはどの試験が役立つ?
更新日:2019年3月26日
簿記には、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」という3種類の試験があるため、簿記の受験を考えている方の中には、「どの試験を受ければいいのかわからない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、この3つの試験の違いと特徴について、分かりやすく解説、各試験の「難易度」や「受験者層」「合格率」「試験情報」のほか、「就職・転職に有利な試験」についても触れていきます。
「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の違いとは?
1.「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」は、試験の主催者が違います
まず、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」は主催団体が異なります。
それぞれ、
- 日商簿記(正式名:日商簿記検定試験)……日本商工会議所
- 全商簿記(簿記実務検定試験)……全国商業高等学校協会
- 全経簿記(簿記能力検定)……全国経理教育協会
が主催しています。このため、試験内容や受験料にもそれぞれ違いが見られます。
2.「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」は、合格率が違います
例えば簿記2級で見た場合、「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」では合格率が大きく異なります。そのため、就職・転職活動における企業の評価も変わってきます。
日商簿記2級 | 全経簿記2級 | 全商簿記2級 | |
---|---|---|---|
合格率 | 10-30% | 商業簿記:35-60% 工業簿記:80-90% |
約60% |
3.「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」は、受験者層が違います
「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」は、受験する人が異なります。
具体的には、日商簿記は「社会人」、全商簿記は「商業高校の生徒」、全経簿記は「経理専門学校の生徒」が受ける傾向にあります。
また、日商簿記では「1級」、全経簿記では「上級」に合格すると、税理士試験の受験資格が与えられるため、日商簿記1級よりも難易度が低い「全経簿記上級」を受験する税理士志望者も多いようです。
「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の難易度の違いを教えて!?
「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」には、難易度と試験範囲にも大きな違いがあります。実際に下の表で確認してみましょう。
日商簿記 | 全経簿記 | 全商簿記 | |
---|---|---|---|
難易度 と 試験範囲 | 1級 | 上級 | - |
2級 | 1級 | 1級 | |
3級 | 2級 | 2級 | |
簿記初級 | 3級 | 3級 | |
- | 基礎簿記会計 | - |
例えば、「日商簿記2級」は「全商簿記1級」「全経簿記1級」と難易度・試験範囲がほぼ一致しています。ただ近年、日商簿記が試験範囲の改定を行い、より「実務を意識した試験」に生まれ変わりました。その結果、日商簿記の難易度がより高まった状況となっています。
このように、同じ簿記2級でも主催団体によって難易度・試験範囲が異なります。もし、あなたが学生時代に簿記資格を取得していたのであれば、どこが主催する試験だったかを確認しておきましょう。
➡日商簿記の級の違いについてはこちら日商?全商?全経? 就職・転職に有利な試験は?
「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」のうち、就職・転職に有利な試験は「日商簿記」です。年間50万人以上が受験する日商簿記は、社会的認知度が高く、この資格を採用の判断材料としている企業も少なくありません。
特に近年、日商簿記は試験範囲の改定によってより実務的な内容となり、その重要性が再認識されています。就職や転職、結婚・出産後の再就職に役立てたいのであれば、「日商簿記」を受験するとよいでしょう。
➡簿記2級が有名だけど本当かどうか?「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」は履歴書に書ける?
簿記資格は履歴書に書くことができます。ただ就職・転職の際、企業にアピールできるのは、日商簿記なら「2級」以上、全商簿記と全経簿記は「1級」以上です。これより下の級は、評価の対象とならない可能性が高いので、履歴書にはあまり書かない方がいいかもしれません。
「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」の試験情報を教えて!?
それでは、各試験の試験情報を確認しておきましょう。それぞれ、試験日程や試験範囲、受験料、申し込み方法が異なるので、申し込む際は注意が必要です。
日商簿記の試験情報(試験日程・試験範囲・合格率・試験会場・申し込み方法)
試験日程
【1級】年2回(6月第2日曜日・11月第3日曜日)
【2,3級】年3回(2月第4日曜日・6月第2日曜日・11月第3日曜日)
【初級】ネット受験(試験施行機関が日時を決定)
試験範囲
【1級】商業簿記・会計学(90分)、工業簿記・原価計算(90分)途中休憩あり
【2級】商業簿記・工業簿記(120分)
【3級】商業簿記(120分)
【初級】簿記の基本用語や複式簿記の仕組み(40分)
出題形式
すべて記述式
受験料
【1級】7,710円
【2級】4,630円
【3級】2,800円
【初級】2,160円
合格ライン
【1級】70%以上、ただし1科目ごとの得点は40%以上
【2,3級,初級】70%以上
合格率
【1級】8~10%
【2級】10~30%
【3級】40~50%
【初級】50~60%
試験会場
【1~3級】全国各地の商工会議所が指定する会場
【初級】インターネット受験(全国のネット試験会場)
合格発表
試験後約1カ月後(各商工会議所によって発表時期が異なります)
受験資格
年齢・性別・学歴・国籍に関係なく、誰でも受験可能
※何級からでも受験可
※各級の同日受験も可
申込方法
申込受付日程、申込方法(窓口・インターネット・郵送)などは商工会議所によって異なる。
試験日の約2カ月前に、受験希望地の商工会議所に確認のこと。
主催団体公式サイト
全商簿記の試験情報(試験日程・試験範囲・合格率・試験会場・申し込み方法)
試験日程
年2回(1・6月の日曜日)
試験範囲
【1級】会計(1時間30分)、原価計算(1時間30分)
【2,3級】商業簿記(1時間30分)
出題形式
筆記試験
受験料
【1級】 会計:1,300円、原価計算:1,300円
【2,3級】各1,300円
合格ライン
100点満点とし70点以上で合格
合格率
【1級】35~45%
【2級】60~70%
【3級】60%
試験会場
同協会が指定した全国各地の試験場校
合格発表
試験当日試験場校において日時・場所を発表
受験資格
・年齢・性別・学歴・国籍などに関係なく、誰でも受験可能。
・何級からでも受験可能。
申込方法
高校生:在籍校で受験票により申し込み
一般:指定された最寄りの試験校で受験申込書を入手し申し込み
主催団体公式サイト
全経簿記の試験情報(試験日程・試験範囲・合格率・試験会場・申し込み方法)
試験日程
【1~3級・基礎】
年4回(2・5・7・11月の日曜日)
【上級】
年2回(2・7月の日曜日)
試験範囲
【1級】会計(1時間30分)、原価計算(1時間30分)
【2,3級】商業簿記(1時間30分)
出題形式
【上級】
商業簿記/会計学 1時間30分(商業簿記および会計学あわせて)
工業簿記/原価計算 1時間30分(工業簿記および原価計算あわせて)
※「商業簿記/会計学」の科目を受験しなかった場合、「工業簿記/原価計算」の科目を受験できません。
【1級】
商業簿記・会計学 1時間30分
原価計算・工業簿記 1時間30分
【2級】
商業簿記 1時間30分
工業簿記 1時間30分
【3級】
商業簿記 1時間30分
【基礎簿記会計】
1時間30分
受験料
【上級】
7,500円
【1級】
商業簿記・会計学:2,200円
原価計算・工業簿記:2,200円
【2級】
商業簿記:1,700円
工業簿記:1,700円
【3級】
商業簿記:1,400円
【基礎簿記会計】
1,200円
合格ライン
【1~3級・基礎】
1科目100点を満点とし、全科目得点70点以上で合格
【上級】
各科目の得点が40点以上、全4科目の合計得点が280点以上で合格
合格率
【上級】20%前後
【1級】商業簿記・会計学:35~40%、原価計算・工業簿記:50~60%
【2級】商業簿記:40%前後、工業簿記:80%前後
【3級】70%前後
【基礎】70%前後
試験会場
同協会が指定した全国各地の専門学校
合格発表
【1~3級・基礎】
試験日から1週間以内にインターネット上のマイページで閲覧可
【上級】
試験日から2カ月以内にインターネット上のマイページで閲覧可
受験資格
・年齢・性別・学歴・国籍などに関係なく、誰でも受験可能
・何級からでも受験可能。
申込方法
「全国経理教育協会」のHPから申し込み
主催団体公式サイト
まとめ
今回は、3つの簿記試験「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」に注目し、その違いと特徴を「難易度」「受験者層」「合格率」「試験情報」の面から比較しお話しました。
結論として「日商簿記」「全商簿記」「全経簿記」にはそれぞれ特徴があり、受験者層も取得の目的も異なります。就職・転職に生かしたいのであれば社会的評価の高い「日商簿記」、税理士試験の受験資格がほしいのであれば「全経簿記(上級)」というように、目的に応じた試験を選ぶようにしましょう。