日商簿記2級の「本支店会計」の仕訳と処理をわかりやすく解説!

更新日:2019年3月11日

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「本支店会計」は、試験では第1・3問で出題される論点ですが、処理がややこしいため、受験生の多くが苦手とする論点でもあります。

そこで今回は、本支店会計の「仕訳のコツ」や「支店間の取引の処理」、「本店集中計算会計制度」「当期純利益の振替え」、「自己宛為替手形」などに注目し、受験生の苦手とするポイントを解説していきます。

ぜひ、日商簿記2級の試験勉強にお役立てください。

目次

日商簿記2級の重要論点、「本支店会計」とは?

会社が大きくなると、全国に支店をつくり、事業を展開していくようになります。このように、会社に本店と支店がある場合の会計制度のことを「本支店会計」といいます。

本支店会計の「支店独立会計制度」「本店集中会計制度」とは?

「支店独立会計制度」とは、支店は支店で独自の帳簿に記入すること。一方の「本店集中会計制度」は、帳簿を本店だけにおき、支店が行った取引も本店が一括して処理する方法指します。なお、日商簿記2級では「支店独立会計制度」を学習していきます。

本支店勘定の表示区分

日商簿記2級は3級と比べて、「損益計算書」と「貸借対照表」の表示区分が細かくなります。最初は、なかなか覚えられず戸惑うこともあるかと思いますが、学習を通して新たな勘定科目を覚えていきましょう。

本支店会計、支店間の取引の処理を教えて!?

それでは早速、本店と支店間で取引があったときの処理を、例題を解きながら確認していきましょう。

本支店の仕訳、貸方・借方を基本から理解しよう

例1 「本店は、支店に現金300円、商品400円を送付した。支店はこれを受け取った」。このときの仕訳は、以下のようになります。

本店の仕訳

借方 貸方
支店 700 現金 300 仕入 400
 

支店の仕訳

借方 貸方
現金 300 仕入 400 本店 700

例2 「支店は、本店の買掛金1,000円を現金で支払った」。このときの仕訳は、以下のようになります。

本店の仕訳

借方 貸方
買掛金 1,000 支店 1,000
 

支店の仕訳

借方 貸方
本店 1,000 現金 1,000

例3 「本店は、商品500円を支店に送付し、支店はこれを受け取った」。このときの仕訳は、以下のようになります。

本店の仕訳

借方 貸方
支店 500 仕入 500
 

支店の仕訳

借方 貸方
仕入 500 本店 500

本支店会計、支店が複数あるときの「支店間の取引」の仕方は?

支店が2社以上ある場合、取引の処理には「本店集中計算制度」「支店分散計算制度」の2種類があります。

「本店集中計算制度」とは?

支店間の取引が本店を経由して行われた、と考えて処理する方法です。

例  本店は、千葉支店が埼玉支店に現金200円を送金した旨の連絡を受けた。

借方 貸方
千葉支店 本店 200 現金 200
本店 現金 200 千葉支店 200
埼玉支店 200 現金 200
埼玉支店 現金 200 本店 200
(フォーサイト『簿記2級 商業テキスト』より)

「支店独立計算制度」とは?

支店間の取引が支店どうしで行われた、と考えて処理する方法です。

例  本店は、千葉支店が埼玉支店に現金200円を送金した旨の連絡を受けた。

借方 貸方
千葉支店 埼玉支店 200 現金 200
本店 仕訳なし
埼玉支店 現金 200 千葉支店 200
(フォーサイト『簿記2級 商業テキスト』より)

本支店会計と連結会計の違いを教えて!?

「本支店会計」と「連結会計」は、似ているようですが大きな違いがあります。まず、「本支店会計」は、本店や支店がそれぞれに作った財務諸表を、一つにまとめることをいいます。 一方の「連結会計」は、複数の会社(親会社と子会社・関連会社)を一つの会社とし、各社の財務諸表を一つにまとめることをいいます。

どちらも複数の財務諸表を一つの財務諸表にまとめるわけですから、似ているように思えます。しかし、連結会計では子会社も法律上は独立した会社であるため、本支店会計とは「子会社にも資本金がある」という点で違いがあります。

本店と支店に損益勘定があるとき、どうやって当期純利益を振替えればいい?

本支店会計の決算は、以下のような流れで行われます。

1. 支店の損益計算

2. 支店の利益を本店に振替(本店は支店の利益を受入)

3. 本店の損益計算

4. 合併財務諸表の作成

この流れに沿って見ていくと

決算整理前残高試算表
借方 本店 支店 貸方 本店 支店
現金預金 300,000 200,000 資本金 300,000
支店 280,000 本店 280,000
繰越商品 123,000 96,000 繰越利益剰余金 200,000
仕入 783,000 420,000 売上 1,236,000 636,000
給料 250,000  200,000
1,736,000 916,000 1,736,000 916,000

■決算整理事項

 期末商品棚卸高
 本店  ¥98,000   支店  ¥132,000
 なお、支店は商品をすべて本店から仕入れている。

1. 「支店の損益計算」は以下のようになります。

(a)決算整理
  (借)仕入    96,000  (貸)繰越商品  96,000
  (借)繰越商品  132,000  (貸)仕入    132,000

(b) 損益振替
  (借)損益   384,000  (貸)仕入   384,000
  (借)損益   200,000  (貸)給料   200,000
  (借)売上   636,000  (貸)損益   636,000

損益
本店より仕入 384,000
給料 200,000
売上 636,000

2. 「支店の利益を本店に振替」

  (借)損益   52,000  (貸)仕入   52,000
損益
本店より仕入 384,000
給料 200,000
本店 52,000
   636,000
売上 636,000
   636,000

3. 「本店の損益計算」は以下のようになります。

(a)決算整理
  (借)仕入    123,000  (貸)繰越商品  123,000
  (借)繰越商品  98,000  (貸)繰越商品   98,000

(b) 損益振替
 (借)損益   808,000  (貸)仕入   808,000
 (借)損益   250,000  (貸)給料   250,000
 (借)売上  1,236,000  (貸)損益  1,236,000

(c)支店の利益を受入
  (借)支店    52,000   (貸)損益   52,000

損益
仕入 808,000
給料 250,000
売上 1,236,000
支店 52,000

4. 「資本振替手続」は以下のように行います。

  (借)損益   230,000  (貸)繰越利益剰余金   230,000
損益
仕入 808,000
給料 250,000
繰越利益剰余金 230,000
        1,288,000
売上 1,236,000
支店 52,000
   1,288,000

上記の処理の結果、以下のような本支店合併の財務諸表が作成されます。

(フォーサイト『簿記2級 商業テキスト』より)

本支店会計の過去問に出てくる「自己宛為替手形」とは?

「自己当為替手形」とは、自己を名宛人とする為替手形のこと。これまでも本支店会計の問題として出題されることがありました。

しかし、2016年6月から行われた試験範囲の改定により、為替手形は日商簿記2級、3級の試験範囲から除外されたため、今後は学習する必要はありません。

日商簿記2級、本支店会計の出題頻度は?

日商簿記2級検定では、第1問で本支店会計の問題が、137・140・142・145回とコンスタントに出題されています。また、第3問で出題されることもありますが、130回、133回、136回、149回と、近年はあまり出題されていません。

日商簿記2級、本支店会計の仕訳問題を過去問でチェック!

本試験では、本支店会計の問題がどのように出題されるのか確認しましょう。

次の仕訳を行いなさい。

1. かねて本店が日本橋商会から掛けで仕入れた商品の代金¥700,000について、本日、東京支店に日本橋商会の店長が集金に来たので、東京支店は本店に代わってこれを全額小切手を振り出して支払った。なお、当社は本店の他に複数の支店を全国に展開しており支店独立会計制度を導入しているが、本店側の仕訳は答えなくてよい。

2. 関西物産株式会社の神戸支店は、神戸支店負担の広告宣伝費¥48,000を京都支店が立替払いした旨の連絡を本店から受けた。なお、同社は本店集中計算制度を採用している。

3. 丸の内商事株式会社の本店は、埼玉支店が宇横浜支店の広告宣伝費¥86,000を立替払いしたとの報告を受け、この報告にもとづき処理を行った。なお、同社は本店集中計算制度を採用している。

解答1.

借方科目 金額 貸方科目 金額
本店 700,000 当座預金 700,000

本支店間取引の処理では、先に何がどうなったのか(本問の場合は、当座預金の増減)を記載して、空いている方に取引相手を記入します。 東京支店の仕訳 (借)本店  700,000   (貸)当座預金 700,000 本店の仕訳   (借)買掛金 700,000   (貸)東京支店 700,000

2.
借方科目 金額 貸方科目 金額
広告宣伝費 48,000 本店 48,000

本支店間取引の処理では、先に何がどうなったのか(本問の場合は、広告宣伝費の発生・振替)を記載して、空いている方に取引相手を記入します。そして、本店集中計算制度では、すべての取引が本店経由で行われると考えて処理します。

つまり、京都支店が神戸支店負担の広告宣伝費¥48,000を支払い、それを本店に振替え、本店が神戸支店に振替えたと考えて処理します。

京都 (借)広告宣伝費  48,000   (貸)現金など   48,000    (借)本店     48,000   (貸)広告宣伝費  48,000 本店 (借)広告宣伝費  48,000   (貸)京都支店   48,000    (借)神戸支店   48,000   (貸)広告宣伝費  48,000 神戸 (借)広告宣伝費  48,000   (貸)本店     48,000

3.
借方科目 金額 貸方科目 金額
横浜支店 86,000 埼玉支店 86,000

本支店間取引の処理では、先に何がどうなったのか(本問の場合は、広告宣伝費の発生・振替)を記載して、空いている方に取引相手を記入します。そして、本店集中計算制度では、すべての取引が本店経由で行われると考えて処理します。 つまり、埼玉支店が横浜支店負担の広告宣伝費¥86,000を支払い、それを本店に振替え、本店が横浜支店に振替えたと考えて処理します。

埼玉支店の仕訳 (借)広告宣伝費  86,000   (貸)現金     86,000 

        (借)本店     86,000   (貸)広告宣伝費  86,000 

本店の仕訳   (借)広告宣伝費  86,000   (貸)埼玉支店   86,000 

        (借)横浜支店   86,000   (貸)広告宣伝費  86,000 

横浜支店の仕訳 (借)広告宣伝費  86,000   (貸)本店     86,000

(フォーサイト『簿記2級 問題集』『解答・解説集』より)

まとめ

今回は、本支店会計について細かく注目し、ポイントを押さえて解説をしました。 本支店会計は、回答までのプロセスの多さや、処理のややこしさから、多くの受験生が苦手意識を抱いていますが、一定のパターンがあるため、慣れてしまえばそれほど難しい論点ではありません。

はじめのうちは意味が分からない部分も多いかと思いますが、何回も問題を解いていくうちに、スムーズに解けるようになります。ぜひ、過去問演習を繰り返し、苦手意識を克服していきましょう。

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