勘定連絡図をわかりやすく解説!簿記2級(工業簿記)

日商簿記2級を学習している方の多くは、「工業簿記が苦手……」と感じています。実際、工業簿記は、「全体像をしっかりと理解」しておかないと分かりづらい科目です。

まずは、「製造業が用いる簿記」を知るために、キーポイントとなる「勘定連絡図」を学んでいきましょう。この図をきちんと理解し、頭に入れておくことで、工業簿記(第4問、第5問)がスムーズに解けるようになります。

目次

簿記2級(工業簿記)、勘定連絡図って何?

勘定連絡図とは?

勘定連絡図とは、材料を購入→製造→製品になるまでの「勘定の流れをまとめた図」のことをいいます。日商簿記2級の工業簿記では、この「勘定連絡図」が重要になります。

勘定連絡の流れは、簡単にまとめると「材料費・労務費・経費」→「仕掛品・製造間接費」→「製品」のようになります。

これを図で表したものが、以下の「勘定連絡図」です。

勘定連絡図

「勘定連絡図」の流れと覚え方を教えて
【その1】「工業簿記の基礎を知ろう」

まず、工業簿記では何を学ぶのか?

工業簿記では、材料費や人件費などの費用を把握して、「製品を作るのに、いくらかかったか?」を計算する方法を学びます。製品の製造にかかった金額のことを「製造原価(製品原価)」といいます。

それでは、分かりやすいように「木製テーブル」を例に考えていきましょう。

木製のテーブルの写真

製造原価

●製造原価1
製造原価は、何を使って製品を作ったかという点から、「材料費(木材、釘、接着剤)」、「労務費(人件費)」、「経費(材料費、労務費以外のもの)」の三つに分けられます。

●製造原価2
また、製造原価は、製品を作るのにいくらかかったかという点から、「製造直接費」と「製造間接費」に分けられます。「製造直接費」は、ある製品を作るのにいくらかかったかを示すものです。つまり、木製テーブルの場合は「木材」の費用を指します。

一方の「製造間接費」は、各製品に共通して消費されているものを表し、今回は「釘・接着剤・工具・電気料・ガス料金・水道料金」といった、一つの製品にいくらかかったかが分からない費用のことをいいます。

製造直接費 製造間接費
材料費 直接材料費 間接材料費
労務費 直接労務費 間接労務費
経費 直接経費 間接経費

「勘定連絡図」の流れと覚え方を教えて
【その2】「原価計算の流れを理解しよう!」

材料を購入したときは?

材料を購入したときは、借方に記入します。

借方 貸方
材料 300 買掛金 300

材料を使ったときは?

●直接材料費(木材)
→「材料勘定」から「仕掛品勘定」に振り替えます。

●間接材料費(釘・接着剤・工具など)
→「材料勘定」から「製造間接費勘定」に振り替えます。

材料・仕掛品・製造間接費の関係を示した図

ところで、仕掛品って何?

仕掛品とは、製造途中のもののことです。つまり、木製テーブルでは、木材を切ったり、組み立てたり、ニスを塗ったりしている段階のものを「仕掛品(しかかりひん)」と呼びます。

「勘定連絡図」の流れと覚え方を教えて
【その3】「労務費を支払ったときは?」

労務費を支払ったときは、勘定の借方に記入します。

借方 貸方
賃金 300 現金 300

労務費を使ったときは?

そして、労務費もまた、製品に対してどのように使われたかで分類されます。

●直接労務費(木製テーブルの組立や加工など、製造に直接関わった人の労務費)
→「労務費勘定」から「仕掛品勘定」に振り替えます。

●間接労務費(品質管理・生産管理など製造に直接関わっていない人の労務費)
→「労務費勘定」から「製造間接費勘定」に振り替えます。

賃金・仕掛品・製造間接費の関係を示した図

「勘定連絡図」の流れと覚え方を教えて
【その4】「経費を支払ったときは?」

経費を支払ったときは、勘定の借方に記入します。

借方 貸方
経費 300 買掛金 300

経費を使ったときは?

そして、経費を使ったときは、

●直接経費(木製テーブルの外注加工費のように、製品に直接かかわる経費)
→「経費勘定」から「仕掛品勘定」に振り替えます。

●間接経費(工場の設備・ガス料金・電気料金・水道料金など)
→「経費勘定」から「製造間接費勘定」に振り替えます。

経費・仕掛品・製造間接費の関係を示した図

「勘定連絡図」の流れと覚え方を教えて
【その5】「製造間接費の配賦(はいふ)とは?」

製造間接費の配賦とは、「製造間接費」を作業時間などの一定の基準によって、「仕掛品勘定」に振り分けることをいいます。

製造間接費と仕掛品の関係を示した図

以上の勘定の流れをまとめた図が、最初に紹介した「勘定連絡図」です。

勘定連絡図

簿記2級合格には、「勘定連絡図」の暗記が必要ですか?

勘定連絡図は勘定の流れを見るときにとても便利です。工業簿記を学習するときには、今、自分が「勘定連絡図」のどの部分を学習しているかを、意識しながら進めていくことがとても重要です。

丸暗記はしなくても、きちんと流れを理解しておくことで、日商簿記2級試験の工業簿記(第4問、第5問)がスムーズに解けるようになります。工業簿記の苦手意識もなくなり、満点を目指すことも可能でしょう。

まとめ

今回は、工業簿記のキーポイントとなる「勘定連絡図」に注目し、「勘定連絡図とは?」「勘定連絡図の流れ・覚え方」などを紹介しました。

「勘定連絡図」で記帳の流れを理解することで、工業簿記の全体図がわかるようになり、これまで工業簿記に抱いていた苦手意識が解消されます。「それぞれの費用がどのように処理されていくのか?」、「どこからどこへいくのか?」を理解できるようになれば、きっとあなたも工業簿記が面白くなるはずです。ぜひ、部屋やトイレの壁に貼って頭に入れておきましょう。

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