簿記2・3級の受験者を悩ませる「損益勘定」とは？　

まず「損益勘定」とは、決算の際に純損益を確定するための勘定科目です。例えば、会社では「給料の支払い」「経費の支払い」「備品の購入」など、さまざまな取引が行われています。 これらを「補助簿」、次に「総勘定元帳」に記入し、1年間のお金の動きを集計したものが「貸借対照表」と「損益計算書」です。この「総勘定元帳」を締め切る場合、「備品」や「給料」などは次期に繰り越すことができません。 そのため、収益や費用は「損益勘定」に集め、そこで出た利益を「資本金にプラスする」ことが損益勘定の役目です。

簿記初心者を悩ませる「損益勘定」とは？

1.収益・費用の各勘定残高を「損益勘定」に振り替える

まず、収益、費用は次期に繰り越すことができないので、「損益勘定」に振替えます。 このとき、各勘定の残高がゼロになるように、「収益の勘定残高」を損益勘定の貸方へ、「費用の勘定残高」を損益勘定の借方へ振替えます。<figure class="table"><table><tbody><tr><td>例<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">売上</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>5,000</td></tr><tr><td colspan="2">仕入</td></tr><tr><td>3,000</td><td>&nbsp;</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure>収益の損益勘定への振替えは次のようになります。 一見すると「売上」は収益なので貸方にきてもよさそうですが、この仕訳は「収益の金額を損益勘定の貸方へ振替えた」ことを表しています。<figure class="table"><table><tbody><tr><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>売上 5,000</td><td>損益 5,000</td></tr></tbody></table></figure>費用の損益勘定への振替えは以下のようになります。<figure class="table"><table><tbody><tr><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>損益 3,000</td><td>仕入 3,000</td></tr></tbody></table></figure>これらの結果にもとづき、損益勘定は以下のようになります。<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>3/31（仕入勘定より） 3,000</td><td>3/31（売上勘定より）売上 5,000</td></tr></tbody></table></figure>

2.当期純利益（または当期純損失）を「繰越利益剰余金勘定」に振替える

<figure class="table"><table><tbody><tr><td>例<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>3/31 仕入 3,000</td><td>3/31 売上 5,000</td></tr><tr><td colspan="2">繰越利益剰余金</td></tr><tr><td>利益準備金 100 未払配当金 800</td><td>4/1 前期繰越 1,100</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure>当期純利益（または当期純損失）は、収益と費用の差額から求めることができます。 具体的には、差額が右の方が多い「貸方残高」であれば利益が出たことになり、左の方が多い「借方残高」であれば損失が出たことになります。 今回のケースでは、2,000円の「貸方残」なので、当期純利益2,000円となります。当期純利益は「会社の元手（純資産）の増加」になるので、「繰越利益剰余金勘定」の貸方に振替えます。<figure class="table"><table><tbody><tr><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>損益 2,000</td><td>繰越利益剰余金 2,000</td></tr></tbody></table></figure>勘定記入は……<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>3/31 仕入 3,000 〃 繰越利益剰余金 2,000</td><td>3/31 売上 5,000</td></tr><tr><td colspan="2">繰越利益剰余金</td></tr><tr><td>利益準備金 100 未払配当金 800</td><td>4/1 前期繰越 1,100 3/31 損益 2,000</td></tr></tbody></table></figure>注意：なお、当期純損失の場合は「繰越利益剰余金勘定」の貸方に振替えます。例えば、損益勘定の仕入れが6,000円（当期純損失が1,000円）の場合は……<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>3/31 仕入 6,000</td><td>3/31 売上 5,000 〃 繰越利益剰余金 1,000</td></tr><tr><td colspan="2">繰越利益剰余金</td></tr><tr><td>利益準備金 100 未払配当金 800 損益 1,000</td><td>4/1 前期繰越 1,100</td></tr></tbody></table></figure>となります。

3.各勘定を締め切る

例<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">仕入</td></tr><tr><td>3,000</td><td>3/31 損益 3,000</td></tr><tr><td colspan="2">売上</td></tr><tr><td>3/31 損益 5,000</td><td>5,000</td></tr><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>3/31 仕入 3,000 〃 繰越利益剰余金 2,000</td><td>3/31 売上 5,000</td></tr><tr><td colspan="2">現金</td></tr><tr><td>100</td><td>&nbsp;</td></tr><tr><td colspan="2">買掛金</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>150</td></tr><tr><td colspan="2">繰越利益剰余金</td></tr><tr><td>利益準備金 100</td><td>4/1 前期繰越 1,100</td></tr><tr><td>未払配当金 800</td><td>3/31 損益 2,000</td></tr></tbody></table></figure>

・収益・費用の各勘定科目の締め切り

収益・費用・資産・負債・純資産の各勘定を締め切ります。損益振替後の各勘定の「借方合計」と「貸方合計」が一致していることを確認したうえで、二重線を引いて締め切ります。<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">売上</td></tr><tr><td>3/31 損益 5,000 5,000</td><td>5,000 5,000</td></tr><tr><td colspan="2">仕入</td></tr><tr><td>3,000 3,000</td><td>3/31 損益 3,000 3,000</td></tr><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>3/31 仕入 3,000 〃 繰越利益余剰金 2,000 5,000</td><td>3/31 売上 5,0005,000</td></tr></tbody></table></figure>

・資産・負債・純資産の各勘定科目の締め切り


資産、負債、純資産のなかで、期末時点で残っているものは次期に繰り越します。 借方または貸方に「次期繰越」と記入して締めましょう。 そして締め切ったあと、「次期繰越」と記入した逆側に「前期繰越」と金額を記入します。<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">現金</td></tr><tr><td>100 100 4/1 前期繰越 100</td><td>3/31 次期繰越 100 100</td></tr><tr><td colspan="2">買掛金</td></tr><tr><td>3/31 次期繰越 150 150</td><td>150 150 4/1 前期繰越 150</td></tr><tr><td colspan="2">繰越利益剰余金</td></tr><tr><td>利益準備金 100 未払配当金 800 3/31 次期繰越 2,200 3,100</td><td>4/1 前期繰越 1,100 3/31 損益 2,0003,100 4/1 前期繰越 2,200</td></tr></tbody></table></figure>

4.繰越試算表を作成する。


<figure class="table"><table><tbody><tr><td>例<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">現金</td></tr><tr><td>100 100 4/1 前期繰越 100</td><td>3/31 次期繰越 100 100</td></tr><tr><td colspan="2">買掛金</td></tr><tr><td>3/31 次期繰越 150 150</td><td>150 150 4/1 前期繰越 150</td></tr><tr><td colspan="2">繰越利益剰余金</td></tr><tr><td>利益準備金 100 未払配当金 800 3/31 次期繰越 2,200 3,100</td><td>4/1 前期繰越 1,100 3/31 損益 2,0003,100 4/1 前期繰越 2,200</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure>資産・負債・純資産は、次期に繰り越します。そこで、次期に繰り越した金額が正しいかどうかを「繰越試算表」を作成し確認します。繰越試算表<figure class="table"><table><tbody><tr><td>借方</td><td>勘定科目</td><td>貸方</td></tr><tr><td>100</td><td>現金</td><td>&nbsp;</td></tr><tr><td>・・・・</td><td>売掛金</td><td>&nbsp;</td></tr><tr><td>・・・・</td><td>繰越商品</td><td>&nbsp;</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>買掛金</td><td>150</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>借入金</td><td>・・・・</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>資本金</td><td>・・・・</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>繰越利益剰余金</td><td>2,200</td></tr><tr><td>・・・・</td><td>&nbsp;</td><td>・・・・</td></tr></tbody></table></figure> &nbsp;

決算後、次期のために「総勘定元帳（帳簿）」の各勘定科目を整理することを「帳簿の締め切り」といいます。流れとしては次のようになります。<figure class="table"><table><tbody><tr><td>例<ul><li>1.収益・費用の各勘定残高を「損益勘定」に振り替える ↓</li><li>2.当期純利益（または当期純損失）を「繰越利益剰余金勘定」に振替える ↓</li><li>3.各勘定を締め切る ↓</li><li>4.繰越試算表を作成する。</li></ul></td></tr></tbody></table></figure>

簿記2級、総勘定元帳（帳簿）の締め切り手順をわかりやすく解説

「決算整理仕訳」と「決算振替仕訳」は似ているようで異なります。 「決算整理仕訳」は、決算整理のために行う仕訳のことを指し、当期の「収益」「費用」を確定するとともに、次期へ繰り越す「資産」と「負債」を確定します。一方、「決算振替仕訳」は、確定した費用と収益を損益勘定に振替えるための仕訳です。

決算整理仕訳と決算振替仕訳の違いを教えて！？

日商簿記3級では、損益勘定で計算された「当期純利益（当期純損益）」を資本金勘定に振替える方法を学習します。<figure class="table"><table><tbody><tr><td>例<figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>12/31 費用 600</td><td>12/31 売上 1,000</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure>「損益」の残高を「資本金」に振替えて、「損益」を締め切る手続きです。<ul><li>1. 「損益」の残高を「資本金」に振替えます。このとき、利益が生じている場合は「損益」の借方に記入し一旦取消。そして、「資本金」の貸方に記入し復活させます。</li><li>2.「損益」を締め切ります。複数記入されている場合は、合計額を記入したうえで、二重線を引いて締め切ります。</li></ul><figure class="table"><table><tbody><tr><td colspan="2">損益</td></tr><tr><td>12/31 費用 600 12/31 資本金 400 1,000&nbsp;</td><td>12/31売上　1,0001,000</td></tr><tr><td colspan="2">資本金</td></tr><tr><td>&nbsp;</td><td>1/1 前期繰越 5,000 12/31 損益 400</td></tr><tr><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>損益 400</td><td>資本金 400</td></tr></tbody></table></figure>

簿記3級、損益勘定で計算した当期純利益を、資本金勘定へ振替える（資本振替手続）

今回は、簿記初心者を悩ませる事項について紹介しましたが、損益勘定のポイントは、他の科目と違って「集計して残高をゼロにする」という性質です。最初は、残高・損益のどちらに振り替えるのか判断ができず、戸惑う方も多いですが、これは練習あるのみです。 過去問を1問でも多く解き、パターンを覚えていきましょう。<a target="_blank" rel="noopener noreferrer" href="https://www.foresight.jp/lp/boki/request/">無料体験学習</a>

まとめ

<figure class="image"><img style="aspect-ratio:660/240;" src="https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/profitloss/main-1739111794130-390934773.jpg" alt="main.jpg" srcset="https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/thumbnail_main-1739111794125-707694740.jpg 245w,https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/small_main-1739111794125-641459581.jpg 500w," sizes="100vw" width="660" height="240"></figure>簿記を勉強中に、度々出てくる「損益勘定」と「振替」という言葉。「そもそも損益勘定というのがいまいちわからない」「振替って簡単にいえばどういう意味？」と悩んだ方も多いのではないでしょうか。そこでこのページでは、簿記初心者を悩ませる「損益勘定」と「振替」について、日商簿記2級の学習範囲に当たる「総勘定元帳（帳簿）の締め切り手順」、3級の「資本振替手続」についてまとめました。

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