簿記２級「返品調整引当金」の仕訳と処理をわかりやすく解説！

日商簿記2級で学ぶ「引当金」は7種類

<p>「引当金」とは、<span style="color:#f44336;">将来に発生するであろう支出に備えて、あらかじめ準備しておく見積金額</span>のことをいいます。</p><p>日商簿記2級では、3級で学習した「貸倒引当金」のほかに、「修繕引当金」「退職給付引当金」「商品（製品）保証引当金」「（役員）賞与引当金」「売上割戻引当金」「返品調整引当金」について学習します。</p>

日商簿記3級で学んだ引当金「貸倒引当金」とは？

<p><span style="color:#f44336;">貸し倒れになる場合に備えて、一定の金額を予想し、あらかじめ計上した金額</span>のこと。3級で学習したとおり、「実績法（差額補充法）」によって処理をします。</p>

日商簿記2級で学ぶ引当金「修繕引当金」とは？

<p><span style="color:#f44336;">将来、建物や機械、備品など、継続的な修繕に必要なコストに備える引当金</span>のこと。たとえ当期に修繕が行われなかったとしても、当期分の費用を「修繕引当金」として計上します。</p>

日商簿記2級で学ぶ引当金「退職給付引当金」とは？

<p><span style="color:#f44336;">将来、従業員が退職するときのために備えた引当金</span>のこと。将来支払われる退職金のうち、当期の費用を見積もって計上します。</p>

日商簿記2級で学ぶ引当金「商品（製品）保証引当金」とは？

<p>自社で販売した商品について、「一定の期間であれば無償で修理を行う」という保証を付けることがあります。<span style="color:#f44336;">将来、その商品の修理が行われることに備えた引当金</span>を「商品（製品）保証引当金」といいます。当期に負担するべき金額を見積計上します。</p>

日商簿記2級で学ぶ引当金「（役員）賞与引当金」とは？

<p><span style="color:#f44336;">将来、賞与の支給が行われることに備えた引当金</span>のこと。当期に負担するべき金額を見積計上します。</p>

日商簿記2級で学ぶ引当金「売上割戻り引当金」とは？

<p>当期に<span style="color:#f44336;">販売した商品が、次期以降に割戻されることに備えた引当金</span>のこと。当期に負担するべき金額を見積計上します。</p>

日商簿記2級で学ぶ引当金「返品調整引当金」とは？

<p>商品が売れず、得意先から返品されてきたときに備えた引当金のこと。<span style="color:#f44336;">返品によって減少する、売上総利益を見積もって計上</span>します。なお、返品調整引当金繰入は<span style="color:#f44336;">売上総利益から控除</span>、返品調整引当金は<span style="color:#f44336;">流動負債</span>として表示します。</p>

日商簿記2級の重要論点、「返品調整引当金」とは？

売上返品があったときはどうする？

<p>返品された分を「仕入（費用）」として計上し、利益部分は事前に設定した「返品調整引当金（負債）」を取り崩します。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td><p>例</p><p>前期に掛売りした商品について2,000円の返品があったので、売掛金と相殺した。なお、その商品の原価率は70%であり、前期末に設定した返品調整引当金が1,000円ある。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>仕入 &nbsp; &nbsp; &nbsp;　1,400<br>返品調整引当金 &nbsp;　600</td><td>売掛金 &nbsp;　2,000</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure><p style="text-align:right;">※（フォーサイト『簿記2級　商業テキスト』より）</p>

<p>返品の場合、モノ自体は戻ってくるので、調整する必要があるのは利益部分のみです。そのため、売上総利益率にもとづいて見積額を計算します。</p><p>計算方法は、「<span style="color:#f44336;">返品調整引当金 ＝ 返品見込額 × 売上総利益率</span>」</p><p>返品調整引当金を設定したときは、「<span style="color:#f44336;">返品調整引当金繰入（費用）</span>」を計上。このときの貸方は、「<span style="color:#f44336;">返品調整引当金」（負債）</span>となります。また、損益計算書では「<span style="color:#f44336;">返品調整引当金繰入</span>」を「<span style="color:#f44336;">売上総利益</span>」から控除して表示します。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td><p>例</p><p>決算に際し、売掛金残高1,000,000円に対して、翌朝の返品額を150,000円と見積もり、その額に売上総利益率（20%）を乗じた金額を返品調整引当金とした。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>返品調整引当金繰入 &nbsp;　30,000</td><td>返品調整引当金 &nbsp;　30,000</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure><p style="text-align:right;">※（フォーサイト『簿記2級　商業テキスト』より）<br>&nbsp;</p>

日商簿記2級、「返品調整引当金」を見積計上したときの仕訳は？

<p>「返品調整引当金」は、2016年度から日商簿記2級の試験範囲に追加された論点です。ただ、試験範囲改定後の<span style="color:#f44336;">143回から150回まで、まだ一度も出題されていない</span>ため、そろそろ出題される可能性があります。しかし、処理はそれほど難しくないので、基礎をしっかりと理解しておけば心配はありません。</p><p>なお、日商簿記2級検定では<span style="color:#f44336;">「商品保証引当金」の問題が138・141回、「売上割戻」の問題が140・148回</span>、いずれも第1問の仕訳問題として出題されています。今後も、引当金の問題が出題される可能性は高いので、どのような問題が出題されても対応できるようにしておきましょう。</p>

日商簿記2級の重要論点、「返品調整引当金」の出題傾向は？

<p>「引当金」は本試験でどのように出題されるのでしょうか？　実際の過去問を解いて練習しましょう。以下は「売上割戻引当金」に関する問題です。</p><figure class="table" style="width:100%;"><table class="ck-table-resized"><colgroup><col style="width:100%;"></colgroup><tbody><tr><td><p>次の仕訳を行いなさい。</p><p>問題<br>当社の直近3カ月の売上状況を精査した結果、一定額以上の商品を購入した神奈川商店と静岡商店に対し売上割戻を実施する条件を満たしていることが判明した。そのため、神奈川商店については50,000円を現金で支払い、静岡商店については40,000円を同店に対する売掛金から相殺した。ただし、静岡商店に関しては、前期末に売上割戻引当金を55,000円計上している。</p><p><span style="color:#f44336;">解答</span></p><figure class="table"><table><tbody><tr><td><span style="color:#f44336;">借方</span></td><td><span style="color:#f44336;">貸方</span></td></tr><tr><td><span style="color:#f44336;">売上 &nbsp; &nbsp; &nbsp;　50,000</span><br><span style="color:#f44336;">売上割戻引当金 &nbsp;40,000</span></td><td><span style="color:#f44336;">現金 &nbsp;　50,000</span><br><span style="color:#f44336;">売掛金 &nbsp;40,000</span></td></tr></tbody></table></figure><p><span style="color:#f44336;">解説</span><br><span style="color:#f44336;">（1）神奈川商店に対して行われた割戻 &nbsp;「売上割戻引当金」が設定されている旨の指示がありませんので、当期の売上げの割戻であると判断します。割戻分を現金で支払ったということは現金売上の割戻（あるいは掛売上、掛代金回収済み）だったのでしょう。よって、上記のとおり、現金売上の仕訳を逆仕訳すればOKです。</span><br><span style="color:#f44336;">（2）静岡商店に対して行われた割戻 &nbsp;「売上割戻引当金」が設定されている旨の指示がありますから、前期の売上の割戻であると判断します。「売上割戻引当金」を取り崩して割戻に充当します。</span></p></td></tr></tbody></table></figure><p style="text-align:right;">※（フォーサイト『簿記2級　商業テキスト』より）</p>

日商簿記2級「引当金」の過去問をチェック

<p>売上原価基準（収益認識基準）とは、<span style="color:#f44336;">売上をいつ、何に基づき計上するかの基準を定めた「会計ルール」</span>のこと。企業は下のように、いくつかの手続きを経て、商品売買の取引を完了させます。</p><p>「出荷」→「引渡」→「納品」→「検収（納入品が発注どおりか検査し受け取ること）」</p><p>そのため、どの時点で売上を計上するかを考え、自社にとって望ましい時点で商品売買を完了し、「売上」を計上しなければいけません。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td><p>例</p><p>4/1　得意先より商品100,000円（原価60,000円）の注文が入り、代金は掛けとして本日発送した。当社は、売り上げの記帳について検収基準を採用している。<br>4/6　得意先より、注文どおり商品が届き、検収が終了した旨の連絡を受けた。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td>&nbsp;</td><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>4/1</td><td>仕訳なし</td><td>-</td></tr><tr><td>4/6</td><td>売掛金 &nbsp;　100,000</td><td>売上 &nbsp;　100,000</td></tr></tbody></table></figure></td></tr></tbody></table></figure><p style="text-align:right;">※（フォーサイト『簿記2級　商業テキスト』より）</p>

参考までに…　売上計上基準（収益認識基準）とは？

<p>「売上原価対立法」とは、商品売買に関する処理を行う際、<span style="color:#f44336;">販売のつど売上原価を計算する方法</span>です。</p><ul><li>商品を仕入れたとき………「商品（資産）」の増加として記録します。</li><li>商品を売り上げたとき……「売上（収益）」を計上するとともに、その商品の「商品（資産）」から「売上原価（資産）」に振替えます。</li></ul><figure class="table"><table><tbody><tr><td><p>例</p><p>4/1　商品150,000円（＠500円 × 300個）を仕入れ、代金は掛けとした。なお、当社では、販売したつど売上原価を売上原価勘定に振替える方法（売上原価対立法）によって処理している。<br>4/2　4/1に仕入れた商品のうち10個を返品した。なお、代金は掛代金から控除することとした。<br>4/3　4/1に仕入れた商品のうち200個を＠800円にて販売し、代金は掛けとした。<br>4/4　4/3に販売した商品のうち10個が返品されてきた。</p><figure class="table"><table><tbody><tr><td>&nbsp;</td><td>借方</td><td>貸方</td></tr><tr><td>4/1</td><td>商品 &nbsp; &nbsp;150,000</td><td>買掛金 &nbsp;150,000</td></tr><tr><td>4/2</td><td>買掛金 &nbsp; &nbsp;5,000</td><td>商品 &nbsp; &nbsp;5,000</td></tr><tr><td>4/3</td><td>売掛金 &nbsp;　160,000<br>売上原価 &nbsp;100,000</td><td>売上 &nbsp;　160,000<br>商品 &nbsp;　100,000</td></tr><tr><td>4/4</td><td>売上 &nbsp; &nbsp;　8,000<br>商品 &nbsp; &nbsp;　5,000</td><td>売掛金 &nbsp;　8,000<br>売上原価 &nbsp;5,000</td></tr></tbody></table></figure><p>4/3　売上原価 = ＠500円 × 200個 = 100,000円</p><p>4/4　売上戻り = ＠800円 × 10個 = 8,000円<br>&nbsp; &nbsp;売上値引 = 2,000円<br>&nbsp; &nbsp;売上戻りに関する売上原価の減少 = ＠500円 × 10個 = 5,000円</p></td></tr></tbody></table></figure><p style="text-align:right;">※（フォーサイト『簿記2級　商業テキスト』より）</p>

参考までに…　売上原価対立法とは？

<p>今回は、日商簿記2級の重要論点「引当金」の中で、2016年度から試験範囲に追加された「返品調整引当金」についてお話ししました。</p><p>「返品調整引当金」は、試験範囲改定後の143回から150回までの間まだ一度も出題されていませんのでそろそろ出題される可能性は高いといえます。しかし難しい処理ではありませんので、基礎をしっかりと理解していれば問題ありません。</p><p>ただ「引当金」に関する問題は、第1問でコンスタントに出題されている傾向にあり、今後も引当金の問題が出題される可能性は高いので、どのような問題においても対応できるようにしておきましょう。</p><p><a target="_blank" rel="noopener noreferrer" href="https://www.foresight.jp/lp/boki/request/">無料体験学習</a></p>

まとめ

<figure class="image"><img style="aspect-ratio:1320/600;" src="https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/return-allowance/main-1739111842055-70214840.jpg" alt="何か書いてる人と電卓" srcset="https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/thumbnail_main-1739111842049-488429024.jpg 245w,https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/small_main-1739111842049-53200369.jpg 500w,https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/medium_main-1739111842049-342989024.jpg 750w,https://storage.googleapis.com/mcs-fs-pro-strapi-uploads-clone202504111055/large_main-1739111842049-326814074.jpg 1000w," sizes="100vw" width="1320" height="600"></figure><p>日商簿記2級の重要論点である「引当金」に追加された「返品調整引当金」は、新論点のため過去問が存在せず、どのように勉強したらよいか不安に感じている方も多いと思います。</p><p>そこで今回は、返品調整引当金の仕訳と処理に着目して「返品調整引当金を見積計上したときの仕訳」「試験の出題傾向」「練習問題」などに触れています。ぜひ、日商簿記2級の受験勉強にお役立てください。</p><p><a target="_blank" rel="noopener noreferrer" href="https://www.foresight.jp/boki/column/boki2-studyingtime/">➡簿記2級の勉強時間について</a></p>

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