社労士の繁忙期は6月?それとも年度末?社労士実務の本当のところ

社労士の繁忙期は6月?

「社労士の働き方」は、これから試験に挑戦して社労士になろうと志す皆さんにとって最大の関心事と言えるでしょう。働き方に関するテーマのひとつに「業務の繁閑」がありますが、皆さんは社労士の繁忙期をご存知ですか?

社労士業務の繁閑は、社労士それぞれの働き方に応じて様々ですが、ごく一般的な社労士業務を考えると概ね繁忙期、閑散期に区別することができます。「社労士の繁忙期・閑散期」から、実務の世界を展望しましょう。

目次

社労士の繁忙期は6月?それとも年度末?

社労士の繁忙期は一般的に6月や年度末と言われていますが、社労士受験生であれば「なぜその時期なのか」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?多くの社労士にとって、6月や年度末が忙しいとされる背景について考えてみましょう。

社労士の繁忙期その① 年度更新・算定基礎届の6月前後

6月から7月にかけては、ちょうど労働保険年度更新と社会保険算定基礎届の申告・届出期間です。労働・社会保険関連手続きを主要業務とする社労士にとって、夏前は、特に重要な2大手続きの締め切りを迎える時期なのです。

通常、労働保険年度更新や社会保険算定基礎届の代行を担う社労士であれば、出勤簿や賃金台帳の準備のために、年度初めから徐々に相談が入り、忙しくなり始めます。そして、申告時期である6月、7月にはピークを迎えることになります。

ちなみに、年度更新や算定基礎届については、継続的に付き合いのない企業からもスポットで依頼が入ることもあります。こうした機会が顧問先獲得のきっかけになることも珍しくないため、社労士としては多少無理をしてでも数をこなしたいところです。

また、労働保険年度更新や社会保険算定基礎届の申告・届出期間となる6~7月は、支部から行政協力の相談が入ることもあります。事務所の申告・届出作業の傍ら、行政協力を担うことはなかなかハードではありますが、様々なケースの申告書に対応できる良い機会となりますので、経験を積むために積極的に引き受けると良いでしょう。

社労士の繁忙期その② 入退社が増える年度末・年度初め

社労士業務を年間で考えてみると、民間会社で従業員の入社・退社が増える3~4月に、社労士の独占業務である労働・社会保険関係手続きの件数が増える傾向にあります。こちらも年度更新や算定基礎届同様、顧問先からの依頼の他、入退社手続きのみのスポット依頼も多くあります。

前述の通り、スポットの依頼は顧問契約締結のきっかけともなりますから、社労士活用のメリットを効果的にアピールできる良い機会となります。

例外的に、常に従業員の出入りの多い会社では、特定の時期に入退社手続きが集中しないことも珍しくありません。よって、年度末や年度初めが繁忙期となるかどうかは、社労士として付き合う会社次第、というところでしょう。

社労士の繁忙期その③ 助成金業務メインなら、年明けがヤマ

社労士事務所の中には、「助成金申請」を専門とするところも少なくありません。社労士が専門とする雇用関係助成金の支給申請に向けた取り組みや支給申請手続きについては、「2月中旬~年度末」に期限が設定されているケースが多いため、助成金を専門とする事務所では年明けからが特に忙しくなります。

話は逸れますが、「助成金分野を主要業務として取り組むことの是非」については、社労士の間でも賛否両論あるようです。雇用関係助成金の申請代行には常に高い需要があることは事実ですが、申請のためには労働関係法令の遵守が求められる他、膨大な申請資料の準備も必要になります。

継続的に付き合いのある顧問先の申請であれば安心して行えるでしょうが、全く付き合いのなかった企業のスポットでの依頼の場合、日頃の労務管理上の不備が多く発覚すればそれだけ社労士側に負担がかかります。

社労士の中には「スポットの助成金申請は受けない」としている方も少なくないようです。このあたりのスタンスは、実際に社労士として実務に携わる様になってから十分に検討されることをお勧めします。

社労士の繁忙期その④ 講師業では7月~10月が特に慌ただしい

社労士としての働き方は、単に社労士実務に携わるだけでなく、「将来の実務家を育成する」という視点での活躍の道も想定できます。フォーサイトの実力派講師陣も、もちろん、一人でも多くの受験生を社労士合格に導くことを使命として、日々奮闘しています。

資格予備校で講師をしている社労士の場合、繁忙期は試験直前期から試験後の教材改訂までであり、時期としては本試験一ヵ月前の7月から各スクールで新年度対策講座が開講する10月頃までが目安となります。

夏が繁忙期ということで、まさしく社労士受験生と一緒になって頑張っているイメージですね。

社労士業に繁忙期はあれど、閑散期なし

繁忙期はあれど、閑散期なし

このように、社労士業には繁忙期については、携わっている業務内容から、比較的予想しやすいといえます。それでは、社労士がゆったり過ごせる閑散期についてはどうなのでしょうか?

結論から言えば、常に従業員を抱える会社相手にビジネスを展開する社労士の元には年間を通じて様々な相談や依頼があり、常時何かしらの案件でバタバタしています。

社労士に繁忙期はあっても、「閑散期」という言葉はあまり聞いたことがありません。

「労務顧問+給与計算」でコンスタントに仕事あり

社労士を常々忙しくさせる要因のひとつに「給与計算」があります。顧問契約をメインとした王道社労士であれば、労務顧問と併せて給与計算業務を代行するケースが大半でしょう。ところが、この給与計算業務を抱えると、会社の月間スケジュールの縛りを受けて、毎月コンスタントに忙しい時期が生じることになります。

もちろん、本業である労務相談への対応も日々生じます。よって、顧問契約を主要業務とする社労士は、時期を問わず何かしら忙しく対応に追われるのです。

助成金相談は時期を問わず

その他、雇用関係助成金を専門としなくても、社労士の元にはコンスタントに助成金関連の相談が寄せられます。

助成金申請に向けた仕事は、正式に依頼を受けた後であれば、社労士主導でスケジュールを組んで取り組むことができますが、相談自体は年間を通じて不定期に、時期を問わずやってきます。

もちろん、外部からの問い合わせが多いことは社労士として喜ぶべきことではありますが、相談対応ばかりに時間を費やして、実際の受注件数はいまいちということになれば本末転倒です。

この場合、初回相談から相談料を設定することで、真剣に依頼を検討している顧客のみの対応に絞り込みやすくなります。

まとめ

  • 社労士の繁忙期は、一般的に、年度更新・算定基礎届の申告・届出期間である6~7月、そして民間企業で従業員の入退社が多く生じる年度末・年度初めであるといわれています
  • その他、雇用関係助成金の申請代行を専門とする場合には年明けから年度末まで、講師業をメインとするなら7~10月頃が繁忙期となる傾向にあります
  • ただし、従業員を抱える民間企業の労務管理や給与計算、さらに高い需要を誇る雇用関係助成金申請代行に携わる社労士は、年間を通じて様々な相談や業務に対応することになります
  • 社労士業には繁忙期の傾向はあっても、閑散期を明確にすることは困難です
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この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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