社労士の懲戒請求とは?懲戒請求の方法やよくある苦情

社労士の懲戒請求とは?懲戒請求の方法やよくある苦情

社労士の懲戒請求とは?懲戒請求の方法やよくある苦情

士業である社労士が実務に携わる上では、常に職業倫理に則った対応が求められます。

万が一、社労士としての仕事ぶりに問題がある、社会的役割や責任と取らし合わせて相応しくないと認められる場合には、懲戒請求の対象となることを忘れてはなりません。

これから社労士を志す皆さんであれば、問題視される社労士の行為や懲戒請求の具体事例を把握し、いざ業界に飛び込んだ際に細心の注意を払えるようにしておくのが得策です。

目次

社労士の懲戒請求はどんな時に行われるか?

「懲戒請求があり得る」というと、いざ試験合格後、社労士として実務に携わることが怖く感じられるかもしれません。

しかしながら、ごく一般的な会社員であっても、仕事ぶりによっては会社の懲戒処分に該当する可能性があります。もちろん、日々業務と誠実に向き合ってさえいれば、懲戒処分を過度に恐れる必要はありません。

まずは、どのようなケースで社労士が懲戒請求をされるのか、具体事例を知りましょう。

社労士の懲戒請求事例① 事実に反して事務代理を行ったとき

厚生労働省は、社労士の懲戒処分に関わる基準として、「行為」「懲戒内容」「事例」を公開しています。

社労士の懲戒請求事例の第一に挙げられるのは、「事実に反して事務代理を行ったとき」です。

具体的には、助成金申請や保険適用手続きに際し、事業主と共謀して虚偽の事実に基づく申請書を作成し行政機関に提出した、給付金を搾取した等の事例が該当します。懲戒の内容は、戒告や1年以内の業務停止、失格処分など、行為の程度に応じて異なります。

社労士の懲戒請求事例② 労働社会保険諸法令違反となる行為等の指示を行ったとき

労働・社会保険の専門家である社労士は、当然、労働社会保険諸法令違反となる行為に関与した際にも懲戒請求の対象となります。この場合、社労士が直々に事務を代理せずとも、法違反に該当する不正な行為を事業主や担当者に指南することでも、懲戒処分となります。

労働社会保険諸法令違反に関係した場合、過去には失格処分又は1年以内の業務停止といった重い処分を下された事例がありました。

社労士の懲戒請求事例③ 複数の懲戒事由に該当する事案に係る処分

社労士の懲戒事例の実際では、複数の懲戒事由に該当し、処分の内容が検討されるケースが多く見受けられます。

一例として、自らを実態として雇用関係のない会社に雇用され、その後離職したとして雇用保険の基本手当(失業に関わる給付)を受け取った事例がありました。

こうした不正に対しては、「故意に、真正の事実に反して申請書等の作成」を行ったとき及び「社会保険労務士たるにふさわしくない重大な非行があったとき」の2つの懲戒事由に該当したとして、失格処分が下されています。社労士の専門知識と実務経験が悪用され、職業倫理を大きく逸脱する、極めて不適切な事例といえます。

社労士の懲戒請求の方法

社労士の懲戒請求の方法

さて、これまで解説してきた通り、職業倫理に反して不適切な行為をした社労士に対しては、「懲戒請求」により制裁が下されることがあります。

社労士の懲戒請求は、何かしらのきっかけで不正事案が発覚した後、不正に関わる事務担当部署での調査・捜査、懲戒処分に係る調査・結果の取りまとめ、不正を行ったとされる社労士に対する聴聞を経て、最終的に処分が決定されます。

どのように不正が発覚するかは事案により様々ですが、各都道府県の社労士会への苦情相談窓口を経るもの、行政宛に直接不正情報が寄せられるもの、または助成金や手続きの申請先窓口から申告されるもの等があります。

社労士の懲戒処分の種類とその影響

社労士の懲戒処分の種類とその影響

社労士の懲戒処分には、大きく分けて下記の3種類があり、不正や悪質性の程度によって内容が決定されます。

  • 訓戒
    「厳重注意」のことで、懲戒処分の中では最も軽度の処罰です。過去には、「助成金申請書類の作成時に十分な事実確認を怠った」等の事例で訓戒となったケースがありました。
    訓戒処分があった旨は官報公示されると共に、処分の日から1年間、厚生労働省のホームページで公表されます。
  • 業務の停止
    懲戒処分として、「社労士業務の停止」が言い渡されることもあります。業務の停止に該当する事例としては、「虚偽の助成金申請書類に対する調査に対し、事業主に虚偽の申告をさせた」「労働基準監督署の印を付した就業規則を偽造して、助成金申請時に添付し、不正受給を行った」等が挙げられます。
    業務の停止処分があった旨は、業務の停止の日から期間終了の翌日より2年間、公表されます。
  • 失格処分、法人であれば解散処分
    社労士の懲戒では最も重い処分に「失格、または解散」があります。過去には、「複数社の算定基礎届について、事業主と共謀し、実際とは異なる報酬月額を記載して申告に係る不正を行った」「事実とは異なる雇用関係について、資格取得・喪失の手続きを経て雇用保険の基本手当を不正受給した」等の事例で、失格処分が見受けられます。
    「解散」とは、社労士法人に対する資格喪失処分です。公表期間は、処分の日から5年間とされています。

社労士に対するよくある苦情とは?

社労士に対するよくある苦情とは?

前述の通り、社労士の不正行為は、外部から寄せられる苦情や相談をきっかけに発覚することも少なくありません。前述の通り、苦情事の内容によっては専門部署での調査が行われ、懲戒処分の対象となることがあります。

とはいえ、社労士に対する苦情は、必ずしも不正や法令違反といった懲戒処分となり得る内容ばかりではありません。「仕事をしてくれない」「仕事が遅い」「助成金申請代行を依頼したが受給できなかった」等の事業主から寄せられる仕事ぶりに関わる苦情の他、以前報道にあったように「不適切な情報を発信している」等の声が一般から寄せられることもあります。

もっとも、常に社労士としての職業倫理を意識し、誠実かつ丁寧な業務遂行を心がけていれば、苦情の対象となることは多くありません。皆さんが社労士となったら、ぜひ「当たり前のことを当たり前に行える」実務家を目指しましょう。

必ずしも「懲戒請求=苦情」ではない理由

必ずしも「懲戒請求=苦情」ではない理由

社労士の不正行為は、時に「顧客利益」を追求する結果として生じてしまうことは少なくありません。この場合、社労士による不正は苦情の対象ではなく、むしろ事業主にとっては何ら問題のない、好意的な行為です。しかしながら、不適切な取り扱いを知り得てしまった従業員や各種申請書類の不整合から、不正が発覚することもあります。

助成金申請代行を依頼された際、「現状では要件に該当しないが、この数字を少し変えてあげれば、助成金受給が可能になる」といったケースに遭遇することはよくあることです。

しかしながら、良かれと思って講じた措置が不正、懲戒事由に該当してしまうのであれば、それはしてはいけないこと。ぐっと思い止まることのできる、社労士倫理が求められます。

まとめ

  • 事実と反する内容での事務代理を行う、労働社会保険諸法令違反に携わる、社労士たるに相応しくなる非行がある等に該当する行為に対して、社労士は懲戒請求されることがあります。
  • 社労士の懲戒では、事案発覚後、慎重な調査・聴聞が行われた上で、処分の内容が下されます。
  • 社労士の懲戒処分の種類には大きく分けて3つ、「訓戒」「業務の停止」「失格(法人の場合は解散)」があります。
  • 懲戒処分の対象となる行為には様々ありますが、顧客利益のために行った行為が該当してしまうケースもあるため、実務に携わる上では常に社労士としての倫理感を意識するよう注意する必要があります。