社労士試験頻出「産業医」の「選任要件」「資格」「巡視義務」を確認

更新日:2021年6月7日

「産業医」は、社労士試験に出題される安全衛生管理体制関連用語の一つとして、おさえておきたいキーワードです。

産業医とは、常時50人以上の事業場で労働者の健康管理等に従事する専門家のことで、企業は事業場規模に応じて所定数の産業医を選任することになっています。

ここでは、社労士試験に出題されるポイントに沿って、「産業医」をより深く理解しましょう。

目次

社労士試験対策上、「産業医」について理解しておくべきポイント

産業医について理解しておくべきポイント

「産業医」関連で社労士試験に出題されるポイントは、資格要件、選任すべき人数、専属要件、選任期日、届出、勧告、巡視義務等、多岐に渡ります。

これらの項目については、労働安全衛生法に登場する各種管理者の要件と類似する内容が多いため、混同に注意しながら頭に入れる必要があります。

産業医を選任すべき事業場規模

冒頭でも触れましたが、産業医は、常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任することになっています。このうち、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医の選任が必要です。

加えて、以下のいずれかに該当する事業場では、専属の産業医を選任しなければなりません。

  • 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
  • 一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場

産業医の資格要件

産業医となるためには、「医師である」ことの他に、次のいずれかの要件を備える必要があります。

  • 厚生労働大臣の定める研修の修了者(具体的には、日本医師会の産業医学基礎研修、産業医科大学の産業医学基本講座)
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生であるもの
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授または常勤講師の経験のある者

過去の社労士試験では、これら産業医の資格要件に関わる出題実績があるため、上記の項目については正しくおさえておきましょう。

特に、「労働衛生コンサルタント試験に合格した者」の要件については、他の試験合格者は含まれない点に注意が必要です。

産業医の選任期日と届出

産業医は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。

届出に用いるのは、様式第3号「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」で、届出が必要な各種管理者と同様の書式です。

産業医の職務

産業医の仕事は、労働者の健康管理や健康意識の向上、職場における適正な作業環境管理のために、医学的な見地から適切な対応・助言・指導を行うことです。

産業医の具体的な職務として、以下が挙げられます。

  1. 健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること
  2. 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
  3. 労働衛生教育に関すること
  4. 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること

参考:厚生労働省「産業医について」

産業医は「勧告」できる

産業医は、必要に応じて、事業所において勧告や指導・助言をすることがあります。

社労士試験対策上、以下を参考に、「どのような場合に」「誰に対して」「何を行えるか」を正しく整理しておさえておくと良いでしょう。

労働者の健康確保のために必要があると認めるとき
事業者に対し
→労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる

労働者の健康障害の防止に関して
・総括安全衛生管理者に対する
→勧告
または
・衛生管理者に対する
→指導、助言をすることができる

産業医には、月1回もしくは2ヵ月に1回(要件を満たす場合)の巡視義務あり

巡視義務

産業医の「巡視義務」と「巡視頻度」も、社労士試験頻出です。

産業医は、少なくとも毎月1回作業場を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならないとされています。

ただし、例外的に、以下の2要件をすべて満たす場合に限り、「2ヵ月に1回」の巡視が認められます。

  • 事業者から毎月1回以上一定の情報の提供を受けている
  • 事業者の同意を得ている

「産業医」の社労士試験出題実績

社労士試験出題実績

産業医について社労士試験で狙われるポイントは、実際の過去問から探るのが一番の近道です。

出題実績からみた頻出事項は、概ね安全衛生管理体制に登場する他の管理者と同様ですから、産業医の要件とその他の管理者の要件との区別を意識しながら知識を整理します。

それでは実際に、社労士試験の産業医関連の出題を確認しましょう。

産業医の巡視義務(平成23年安衛法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「常時60人の労働者を使用する自動車整備業の事業場においては産業医を選任しなければならないが、産業医は少なくとも毎年1回作業場等を巡視しなければならない。」

回答:×

産業医は、少なくとも月1回、一定の要件を満たす場合に限り2ヵ月に1回の巡視を行わなければなりません。

産業医の資格要件(平成24年安衛法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「常時50人の労働者を使用する自動車整備業の事業場の事業者は、産業医を選任する義務があるが、厚生労働大臣の指定する者が行う労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修を修了した医師であれば、他に資格等を有していない場合であっても、その者を産業医に選任し、当該事業場の労働者の健康管理等を行わせることができる。」

回答:

労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修を修了した医師であれば、他に資格等を有さずとも産業医に選任できます。

まとめ

  • 過去問もしくは労働安全衛生法上の他の管理者の出題状況から、社労士試験で産業医について何が問われるかを把握します
  • 社労士試験対策上おさえるべき産業医に関わるポイントは、資格要件、選任すべき人数、専属要件、選任期日、届出、勧告、巡視義務で、これらは他の管理者の要件と混同しないよう整理しておく必要があります
  • 産業医は、常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任することになっており、このうち常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では2人以上の産業医を、さらに一定の要件を満たす事業所では専属の産業医を選任しなければなりません
  • 産業医に認められる「勧告」「指導・助言」は、どのような場合に、誰に対して、何を行うのかをおさえましょう
  • 産業医には事業場の巡視義務があり、頻度は原則「月1回」、一定の要件を満たす場合に限り「2ヵ月に1回」となっています
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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