社労士にとって「産業分類」が業務に不可欠な理由とは?社労士事務所の産業分類は?

産業分類

すでに実務に携わったことのある方であればご存知かもしれませんが、社労士は業務遂行上、顧客の事業場の「産業分類」を確認することがあります。一見するとさほど難しくなさそうな産業分類チェックですが、実際には判断に迷ったり、労基署への確認が必要だったりと、なかなか一筋縄ではいかないことも珍しくありません。

このページでは、実務未経験から社労士を志す皆さんのために、「そもそも産業分類って何?」「なぜ社労士業務に産業分類が関係あるの?」という疑問にお答えします。

目次

業務上、社労士が「産業分類」を確認する理由

それではさっそく、社労士業と産業分類の関係性について解説してまいりましょう。ただ「産業分類」といっても一般的には普段あまりなじみのない言葉かと思いますので、まずは「産業分類とは何か?」について触れておきます。

そもそも「産業分類」とは?

「産業分類」とは、文字通り、会社の事業を大まかな種類で分類するためのものです。正式名称を「日本標準産業分類」といい、職業的活動を分類する目的で作成された分類区分を元に事業の種類を考えます。産業分類表は、19の分類項目と分類不能の産業との20項目で構成されています。

社労士業では、労働保険手続きや法改正対応時に「産業分類」が必要

産業分類がなぜ社労士業と関係があるかというと、労働保険関連の届け出の際に、産業分類に基づいた業種を記載する必要があるからです。

厳密にいうと、労働保険手続きを行う上では事業の種類を「労災保険率適用事業細目」を用いて確認しますが、この事業細目は「日本標準産業分類」を基準に作成されています。「労災保険率適用事業細目」はあくまでざっくりとした区分にとどまり分かりづらいため、事業の種類をより正確に判断するためには日本標準産業分類も併せて確認することは珍しくありません。

労災保険や雇用保険に係る保険料率は、産業分類上の業種によって異なります。そのため、事業場や被保険者が適切な保険料支払いをするためには、会社の事業が産業分類上のどこに分類されるのかを正しく判断しなければなりません。

加えて、自社が労基法上「大企業」「中小企業」のどちらに該当するのかを判断する際にも、産業分類に基づく業種と従業員数が基準となります。そもそもなぜ「大企業」「中小企業」の区別が必要なのかといえば、一部の法令で、企業規模によって施行時期が異なることがあるためです。

今般の働き方改革では労働・社会保険関連法令について大がかりな改定が行われましたが、大企業に対して改正法を先に適用し、中小企業には年単位で猶予期間を設けるケースも少なくありません。

このように、事業場における労働保険手続きや改正法対応を正しく行う必要から、社労士が産業分類を正しく把握しなければならないというわけです。

社労士業に必須の「産業分類」はどこから確認できる?

産業分類は、総務省ホームページから誰でも確認できます。

総務省トップ > 政策 > 国民生活と安心・安全 > 統計基準・統計分類 > 分類に関する統計基準等 > 日本標準産業分類 > 日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行) >日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-目次より確認可能

※施行中の日本標準産業分類については総務省ホームページにてご確認ください

ただし、実務上は、判断に迷う事業があったり、一つの事業場で複数事業を行っていたり等、事業の種類について頭を悩ませるケースも少なくありません。こうした場合には、思い込みや独断を押し通すのではなく、必ず労働局や労基署に相談の上、適切な分類を確認します。

社労士は産業分類上、どこに属する?

これまでのお話で、社労士業務に携わる上で産業分類は重視すべきポイントであることがお分かりいただけたと思います。

産業分類の検討は、ただ一覧に当てはめて考えるだけで対応できるわけではありません。必ず実態を考慮すること、時には関係機関へ確認しなければならないことから、意外と注意が必要な仕事であると言えます。

さて、ここからは余談ですが、社労士事務所自体は産業分類上、どこに属するのでしょうか?日本標準産業分類から確認してみましょう。

社労士事務所は産業分類上、しっかり明記されている

日本標準産業分類を見てみると、ちゃんと「社労士事務所」の項目があります。周辺を見ると他士業についても幅広く項目がありますから、少なくとも士業事務所の分類では迷う余地はなさそうです。

総務省トップ > 政策 > 国民生活と安心・安全 > 統計基準・統計分類 > 分類に関する統計基準等 > 日本標準産業分類 > 日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行) > 日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-分類項目名より。「中分類 72 専門サービス業(他に分類されないもの)」の中の「725 社会保険労務士事務所」

※施行中の日本標準産業分類については総務省ホームページにてご確認ください

産業分類上に明記される社労士業に携わる上では、専門職としての誇りをもつべし

前述の通り、社労士事務所は弁護士事務所や税理士事務所同様、「専門サービス業」のひとつに分類されます。専門職として社会的に認められる仕事であることが分かれば、目標として自信を持って目指すことができますね。近い将来、専門職として活躍できるよう、受験生の皆さんは社労士試験突破に向けて邁進しましょう!

まとめ

  • 産業分類とは正式には「日本標準産業分類」といい、職業的活動を分類する目的で作成された分類区分を指します
  • 社労士業では、労働保険に係る保険料率決定、さらに労基法上の「大企業」「中小企業」の区別の検討に伴い、事業場が行う事業の産業分類を考える機会があります
  • 社労士事務所は、産業分類上、「専門サービス業」に区分されます
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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