社労士試験で過去問は重要?おすすめの活用法から使い始めるタイミングまで解説

更新日:2023年12月18日

目次

社労士試験で過去問は重要?

合格率6%の難関・社労士試験の合格するためには、何と言っても「過去問の攻略」が不可欠です。例年出題されやすいテーマを踏まえ、自身の弱点分野を強化しながら、合格に必要な知識を習得するために、過去問を活用しましょう。

試験範囲を効率良く学習できる

社労士試験対策で過去問が重要である理由のひとつに、「試験範囲を効率良く学習できること」が挙げられます。社労士試験では、労働・社会保険分野の主要8科目に加え、一般常識としてさらに幅広い関係法令や白書・統計に関わる知識が問われます。

すべての出題範囲に、じっくり時間をかけて取り組む学習方法は不向きです。膨大な試験範囲でありながらも出題傾向がはっきりとしている社労士試験対策では、過去問から試験に出やすいテーマを読み解き、出題されるポイントに的を絞った取り組みが得策です。

苦手分野を克服できる

また、「苦手分野の克服」の観点からも、過去問活用が有効です。過去問演習では、当然のことながら、社労士試験の全範囲をまんべんなく復習することになります。自分だけで対策をしているとつい苦手科目を敬遠しがちになりますが、過去問演習に取り組むことで、このような学習の偏りを修正することができます。

また、思わぬところで知識の抜けを発見したり、分かっているはずのことも設問形式になると理解不足で解けなかったり等、合格に向けて自分に足りない要素を洗い出すことにもつながります。過去問活用は、足りない知識の補強はもちろん、試験本番までに強化すべきことの明確化にも役立つはずです。

本番を想定した訓練ができる

さらに過去問は、「本番を想定した訓練」にもご活用いただけます。どんなに豊富な知識があったとしても、制限時間内にすべての設問に対応できなければ、社労士試験に合格することはできません。

そのためには対策上、知識のインプットだけでなく定期的に本番形式を練習しておくことで、社労士試験の出題に慣れると同時に、最適な時間配分を想定しておくことが必要となります。

また、問題演習を通して実力を客観的に把握し、本番までのスケジュールや学習内容・方法について軌道修正を図ることも、過去問活用の意義と言えるでしょう。

社労士試験における過去問の焼き直しとは

例えば、「解雇予告」をキーワードに、過去問での出題実績を確認しましょう。

<平成26年度 労働基準法 問3 選択肢C>

使用者は、ある労働者を8月31日の終了をもって解雇するため、同月15日に解雇の予告をする場合には、平均賃金の14日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない。


<平成18年度 労働基準法 問7 選択肢B>

使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法第20条第1項の規定により、少なくともその30日前にその予告をしなければならないが、その予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。例えば、8月27日をもって労働者を解雇しようとする場合において、8月14日に解雇の予告をしたときは、少なくとも平均賃金の17日分の解雇予告手当を支払わなければならない。


<平成16年度 労働基準法 問3 選択肢E>

使用者は、ある労働者を5月31日をもって解雇するため、5月13日に解雇予告をする場合には、平均賃金の12日分の解雇予告手当を支払わなければならない。


上記は、いずれも「支給すべき解雇予告手当の日数」を問う問題です。

これだけ繰り返しの出題があるということは、まさに頻出ポイントとして正答できる必要があります。社労士試験では、年度をまたいで、同様のポイントを問う出題がいくつも登場します。

よって、「過去問を征する者が社労士試験を征する」といっても過言ではないです。

社労士試験の問題形式の種類

社労士試験では、各試験科目について「択一式」「選択式」の2種類の形式で出題されます。択一式と選択式は、いずれもマークシートでの解答という点では共通ですが、出題形式によって特徴があるので確認しておきましょう。

択一式

択一式は、5つの選択肢の中から適切なものを1つ選ぶ解答形式です。210分の試験時間内に70問、選択肢の数でいえば合計で350もの選択肢を読み込む必要があること、選択肢の中には正誤の判断に迷う出題もあることから、受験生にとっては忍耐力と集中力を要する試験となります。

択一式の合格基準点は年度ごとの試験難易度に応じて変動するものの、目安は総得点で7割とされています。つまり、70点中49点が目標となります。ただし、各科目での合格基準点の設定もあり、10点中4点を目安にまんべんなく得点することが必要です。

選択式

選択式は、各科目について特定のテーマに関わる文章が出題され、文中5箇所の空欄補充をさせる出題です。試験時間は80分間となっており。解答群の中から合計40個の空欄について適切なキーワードを選びます。

選択式は、一見すると択一式よりも易しい出題のようにも思われますが、各科目膨大なテーマの中から特定分野について掘り下げて出題されること、各科目3点以上及び総得点で40点中28点の合格基準点が設けられていることから、例年選択式に泣かされる受験生は少なくありません。

もちろん、択一式同様、年度ごとに合格基準点の調整はありますが、原則として、どの科目のいずれのテーマについてもまんべんなく知識を習得している必要があります。

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社労士試験の過去問は、選択式対策としても有効です

社労士試験の受験をしたことのある方であれば、おそらく誰もが鬼門「選択式」対策に頭を悩ませたことでしょう。

社労士試験の選択式では、各科目特定分野に的が絞られた5箇所の空欄について、3問は正答しなければなりません。

それぞれの科目の膨大な出題範囲に対し、出題はごく一部からに限定されるため、毎年狙われるポイントの予想がつきにくく、当日多くの受験生が合格基準を満たせずに涙を流しています。

捉えどころのない社労士試験の選択式ですが、基本はやはり「過去問対策」です。なぜならば、選択式にも稀に過去問の焼き直しが見られるからです。

社労士試験の選択式で過去問の焼き直しがあるって本当?

社労士試験の選択式での出題重複について、さっそく具体例を見てみましょう。

<平成28年度 雇用保険法>

1 雇用保険法第1条は、「雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の【A】を図るとともに、【B】を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、・・・


<平成22年度 雇用保険法>

1 雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について【A】が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の【B】を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、・・・


上記の例では、平成28年度の【A】と平成22年度の【B】に入るキーワードは共に「生活及び雇用の安定」となり、全く同じです。

また、平成28年度の受験生は平成22年度の過去問に取り組んでおくことで、【B】に入るキーワード「求職活動」もおさえることができます。ちなみに、各法律目的条文からの出題頻度は比較的高いので、意識的に頭に入れておくと安心です。

社労士試験対策で過去問を使い始めるタイミング

社労士試験対策では、過去問はインプット期のなるべく早い段階から活用すべきです。

習得した知識が本試験でどのように問われるのか、そしてどこが問われるのかを、過去問を通じて的確に把握することが重要です。

一つの単元の学習が終わるたびに同じ分野の過去問演習を取り入れ、知識の確認に役立てることで、インプットとアウトプットが効率良く進みます。

社労士試験の過去問は、最初から解けなくてもOKです

とはいえ、知識ゼロ、実務未経験から社労士試験に挑戦する方にとって、「過去問」への取り組みは簡単ではありません。

少し知識を習得しただけで解けないのは当たり前ですが、解けないことで自信を失い、結果、社労士試験への挑戦がぐんと遠いものに感じられることがあるのです。

過去問への恐怖をいかにして取り去るか、これは「勇気を出してやってみる」しか方法はありません。

最初から完璧に解こうと思わず、まずは問題と解説を読み込む作業から進めていきましょう。徐々に社労士試験の出題パターンが分かる様になってくれば、いつの間にか過去問への苦手意識は薄れ、抵抗なく日々の学習に取り入れられるはずです。

社労士の過去問は最低限「5年分×3回」、「6~7年前の出題」にも要注意

受験生の間でしばしば話題になるのが、「社労士試験の過去問は何年分さかのぼれば良いか」についてです。

この問いに絶対的な答えはありませんが、最低限「5年分×3回」をしっかりこなすことが基本となります。

また、過去問の焼き直しを見る限りは、6~7年前の出題にも注意しておくと良いでしょう。

ただし、過去問演習は「量」より「質」です。「10年分解くのが良い」と一生懸命取り組んでも、結果的にただこなすだけになってしまえば意味がありません。

一方で、5年分でも出題傾向をおさえ、各出題の論点の確認まで完璧にこなせるならば、“こなしただけの10年分”より有意義です。常に取り組みの「質」を意識して、過去問演習を進めましょう!

タイプ別社労士の過去問の活用法

ひと口に「社労士試験の過去問」といっても、その種類は様々です。

それぞれのタイプを上手く使い分けることで、社労士試験対策に役立てましょう。ここでは、社労士試験の過去問集の典型である「分野別問題集」と「年度別問題集」の2種類について、それぞれの特徴とお勧めの活用法をご紹介します。

分野別過去問集

分野別過去問集は、文字通り、各科目の単元別に過去の出題が収録された問題集です。

内容ごとに択一式の選択肢がまとめられ、それぞれの肢について正誤と解説が掲載された一問一答形式のページ展開となっています。

単元ごとに頻出の論点や問われ方が把握しやすいので、日々の学習のまとめとして、学習内容に準じた設問に取り組むのがお勧めです。

また、コンパクトで持ち運びしやすいタイプが主流のため、スキマ時間の取り組みに適しています。

年度別過去問集

年度別過去問集は、実際の社労士試験本番同様の形式で全科目の出題が収録されているタイプの過去問集です。

「過去問」と聞いて、受験生の大半がまずイメージするのはこちらの年度別過去問集ではないでしょうか。

年度別過去問集は、学習の総まとめとして本試験をシミュレーションしながら活用するのがお勧めです。実際の試験時間に合わせて時間配分を考える、長丁場となる試験時間中に集中力を保つための訓練として取り組む等、試験本番を意識した対策に有効です。

出題傾向を分析すればするほど、社労士試験対策は「過去問」を主軸とした学習が効果的であることが分かります。

膨大な範囲の対策に苦戦しがちな社労士試験も、狙われやすいポイントを把握することで断然取り組みやすくなるはずです。

学習を開始した当初から積極的に活用し、学習効率の向上に役立てましょう。

また、タイプの異なる過去問集を上手く使い分けることで、それぞれの学習段階に応じた過去問活用ができるのが理想的です。

社労士試験は過去問だけでも大丈夫?

社労士試験対策は、過去問を主軸として出題傾向に則した知識の習得、問題演習を行うことで、合格に近づくことができます。ただし、例年6%程の極めて低い合格率に鑑みれば、独学で過去問に取り組むだけでの合格基準点突破は難しいと言わざるを得ません。

社労士試験合格に向け、膨大な試験範囲への対応はもちろん、白書・統計対策や法改正対応といった年度ごとの試験対策に取り組む必要があり、これらを効率良く行うためには、対策講座の活用が得策なのです。

まとめ

社労士試験対策における過去問活用の重要性や、具体的な過去問活用法についてご紹介しました。労働・社会保険分野について幅広い知識が問われる社労士試験合格のためには、試験で狙われる箇所に的を絞ったインプットと、本試験の出題形式での十分なアウトプットに意識的に取り組むことが肝心です。

過去問は、効率良く学習を進める上で、なくてはならない学習ツールと言えます。必要に応じて、社労士試験対策講座を活用しながら、戦略的に合格を目指しましょう。

この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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