社労士試験キーワード「訪問介護」!頻出の「訪問介護療養費 」とは?

頻出の「訪問介護療養費 」とは?

「社労士」と「訪問介護」は、試験対策上、そして実務上も切り離すことのできないキーワードです。

例えば、介護事業所に活用可能な雇用関係助成金の提案、介護事業所の労務問題への対応、労務問題解決のための切り札となる処遇改善加算の手続き等、社労士が訪問介護事業所のために専門性を発揮できる場面は多岐に渡ります。実際、介護事業支援を専門分野に掲げる社労士も少なくありません。

このページでは、社労士試験受験生がおさえるべき健康保険法上の「訪問介護」と、実務とのつながりについて解説します。

目次

社労士試験で狙われる「訪問介護」をまるっと理解

社労士の試験範囲のうち、健康保険法をネックに感じる受験生は少なくありません。健康保険は受験生にとって比較的身近なテーマと言えるものの、なぜ健康保険法に苦手意識が抱かれがちなのでしょうか。

その理由は、「訪問介護」分野に象徴される、一部の「なじみの薄いテーマ」にあると言えます。

知っているようで知らない、健康保険法上の「訪問介護」とは

社労士試験で問われる介護関連のキーワードである、「訪問介護」「訪問看護療養費」。これらの定義について、健康保険法では概ね下記の通り定められています。

‘疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助。(法第88条第1項)’

‘被保険者が、厚生労働大臣が指定する者(以下「指定訪問看護事業者」という。)から当該指定に係る訪問看護事業を行う事業所により行われる訪問看護(以下「指定訪問看護」という。)を受けたときは、その指定訪問看護に要した費用について、訪問看護療養費を支給する。(法第88条第1項)
指定訪問看護を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、自己の選定する指定訪問看護事業者から受けるものとする。(法第88条第3項)’

出典:e-Gov「健康保険法」

ただ条文を読むだけでは分かりづらく、読む傍から内容がすり抜けてしまいそうです。しかしながら、上記下線部のように、各条文について社労士試験の出題のポイントを意識することで内容が頭に留まりやすくなります。

このように、出題傾向を踏まえて条文を正しく読み込むことが、社労士試験対策として「訪問介護」を理解するカギとなります。

指定訪問看護事業者の責務、指定

同じく、社労士試験の訪問介護関連キーワードのひとつである「指定訪問看護事業者」の定義について、条文を確認します。ポイントを踏まえて内容理解に努めることが大切です。

‘指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の事業の運営に関する基準に従い、訪問看護を受ける者の心身の状況等に応じて自ら適切な指定訪問看護を提供するものとする。(法第90条第1項)
指定訪問看護事業者の指定は、訪問看護事業を行う者の申請により、訪問看護事業を行う事業所(以下「訪問看護事業所」という。)ごとに行う。(法第89条第1項)’

社労士試験頻出は「訪問介護療養費」

社労士試験の過去問を分析すると、訪問介護関連の出題で目立つのは「訪問介護療養費」のキーワードです。具体的な設問は下記の通りですが、対策としては訪問介護療養費の給付対象となる事業者の要件や費用負担等、訪問介護療養費の制度を比較的細かく理解することが重要となります。

<2003年度 問6 選択肢A>
訪問看護療養費に係る訪問看護を実施する者は、看護師、保健師、助産師、准看護師、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士であり、医師が含まれていない。

解答:○

<2007年度 問4  選択肢B>
70歳未満の被保険者が訪問看護を受けたとき、厚生労働大臣が定める基準により算定した指定訪問看護の費用から訪問看護療養費支給額を差し引いた額と、当該被保険者の選定に基づいて提供された指定訪問看護等に要する平均的な時間を越える指定訪問看護等及び指定訪問看護ステーションが定める営業日以外の日又は営業時間以外の時間における指定訪問看護等の利用料がある場合はその費用とを負担しなければならない。

解答:○

実務上でも重視すべき、社労士と訪問介護業界

社労士と訪問介護業界

ここまでは、社労士試験における「訪問介護」の出題について解説しました。重要なのは「出題ポイントを意識して正しく条文、制度を理解すること」です。

ここからは、社労士と訪問介護について、実務の観点からの関わり方や知っておくべきキーワードについてご紹介します。

社労士が関与すべき、訪問介護事業所の労務管理

一般的に「低賃金」「過酷な労働環境」が問題視される介護職の労務管理については、専門家である社労士が率先して改善提案をしていくべき分野と言えます。

介護に休みはありませんから、24時間体制での業務対応を可能にする勤務形態への検討が不可欠です。そして、複雑な働き方に係る勤怠管理や給与計算、介護関連の助成金申請等、労務管理の一つひとつを想定すれば、社労士が高度な専門性を以て取り組むのが得策なのです。

介護事業所の労務管理は複雑であること、しかしながら少子高齢化を背景に介護事業所数は確実に増加傾向にあることから、介護業界に特化する社労士の存在も珍しくありません。

介護職員処遇改善加算に関わる相談も社労士業務の一環

「介護職員処遇改善加算」とは、介護サービスに従事する介護職員の賃金の改善にあてることを目的に設けられた制度であり、社労士が担うべき業務範囲のひとつです。

介護職員処遇改善加算は制度自体が複雑で、また申請のための計画書作成も簡単ではないことから、職員の労働条件の改善に活かしたくとも、独自で対応することができない事業所は少なくありません。

介護職員処遇改善加算に関わるセミナー開催や相談業務、実際の申請代行を行える社労士には、常に一定の需要があります。

まとめ

  • 社労士試験受験生であれば、「訪問介護」のキーワードについて、試験対策上も実務上も十分に理解しておく必要があります
  • 社労士試験では、健康保険法上の訪問介護分野から、特に「訪問介護」「指定訪問看護事業者」「訪問介護療養費」について、出題ポイントをおさえた上で条文を正しくインプットすると効果的です
  • 低賃金や過酷な労働環境が問題視される介護業界では、社労士による労務管理への高い需要があります
  • 介護職員の賃金アップに不可欠な介護職員処遇改善加算に関わる実務もまた、社労士の業務範囲の一環です
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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