委任状なしで戸籍謄本を取得可能!社労士の「職務上請求」とは?

委任状なしで戸籍謄本を取得可能!社労士の「職務上請求」とは?

社労士を志す方であれば、「職務上請求」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。「社労士であれば、業務上の必要に応じて依頼者の戸籍謄本等を入手できる」というのがざっくりとした理解ですが、社労士による職務上請求は無条件に認められるものではないため注意が必要です。

ここでは、これから社労士を目指す皆さんに向け、ひと足お先に「職務上請求」に関わる実務のお話をご紹介します。

目次

戸籍謄本等の取得が可能になる、社労士の「職務上請求」はどんな時に活用する?

「職務上請求」とは、職務上の必要に応じて、社労士が委任状なしで戸籍謄本や住民票を取得できる手段のことを指します。

方法としては、「職務上請求書」と社労士自身の本人確認に必要な「身分証明書」を行政窓口に提出することで、依頼者の戸籍謄本等を入手することができます。

この権利は社労士の他にも、「特定事務受任者」とされる弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、海事代理士、行政書士といった士業に認められています。

まずは、どのようなケースで社労士が戸籍謄本等を職務上請求によって入手できるかを考えてみましょう。

社労士の職務上請求は、遺族年金の裁定請求など一部の業務に限られる

社労士が職務上請求を活用する場面、つまり顧客の戸籍謄本や住民票の写しが必要になる場面は、年金の裁定請求や社会保険の扶養者申請などごく一部に限られています。

もっとも、社労士が代行する手続き上、戸籍謄本や住民票の写しが必要であっても、依頼者自身が直接手配するケースがほとんどです。よって、実際には社労士が職務上請求をする機会はあまりなく、むしろ請求したことのない社労士の方が多いとも言えるかもしれません。

依頼者が高齢や入院中等のケースで、職務上請求が活かされる

ただし、依頼者が高齢であったり、入院中であったり等で外出困難な状況にあれば、職務上請求が役に立ちます。また、遺族年金の裁定請求では、依頼者自身がひどく憔悴してしまっていることも多く、このような場合には手続きに必要な戸籍謄本等も社労士が取り寄せて、手続き関係の一切を支援するのが得策と言えましょう。

このように、社労士の職務上請求は、状況に応じて上手く活用できるのが理想的です。

社労士なら誰でも、「職務上請求」で戸籍謄本等を取得できるか?

委任状なしで戸籍謄本を取得可能!社労士の「職務上請求」とは?

前述の通り、社労士等の士業に認められる職務上請求ですが、社労士であれば誰でも行うことができるのかといえば、必ずしもそうではありません。

社労士であっても戸籍謄本等を顧客に代わって取得できないケースについても、正しく理解しておきましょう。

勤務社労士の職務上請求は認められない

社労士の職務上請求は、開業社労士か、もしくは社会保険労務士法人に勤務する社労士のみに認められています。

一般の事業所(会社等)に勤務登録する勤務社労士の場合、社内の従業員についての労働・社会保険関連手続きしか行うことができず、これらの業務において実務上職務上請求書を使用することは想定されません。

職務上請求ができても、戸籍謄本等の管理には細心の注意が必要

社労士等の士業が職務上請求を活用できるのは、あくまで「業務上の必要がある場合のみ」に限られます。業務と関係がないにもかかわらず、社労士が他人の戸籍謄本等を取得することは厳禁です。

ところが残念なことに、士業が依頼を受けて不正に個人情報を入手し、こうした情報が売買される事件は相次いて発生しています。実際に、士業による戸籍等の不正取得が発覚し、逮捕されているケースもあります。

このような戸籍謄本等の不正取得の危険性に鑑み、各自治体では「本人通知制度」を設け、第三者によって戸籍謄本等が交付された際に本人に知らせるサービスの運用を開始しています。

もちろん、社労士が業務上の必要に応じて適正に取得した戸籍謄本等については、依頼者の個人情報であることを十分に考慮し、細心の注意を払って管理する必要があることを忘れてはなりません。

まとめ

  • 社労士が他人の戸籍謄本等を取得できる「職務上請求」は、業務の必要に応じて特定事務受任者である8士業に認められた制度です
  • 職務上請求を活用して社労士が戸籍謄本等を取得する業務は、実際のところ、ごく一部に限られています
  • 社労士であっても、民間企業に勤める勤務社労士の場合は、職務上請求が必要となる業務に携わることはありません
  • 職務上請求を用いて社労士が戸籍謄本等を取得できるのは、あくまで業務上の必要がある場合のみであり、個人情報売買の目的等での不正取得は厳禁です
  • 職務上請求で社労士が取得した戸籍謄本等の個人情報は、細心の注意を払い、適正に管理する必要があります
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

社労士コラム一覧へ戻る