社労士試験頻出!「専門業務型裁量労働制」とは

専門業務型裁量労働制は、業務の進め方や時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねるべき専門的な仕事のうち、厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務に従事する労働者について、労使の合意の元、適用することのできる特別な労働時間制です。

社労士試験では企画業務型と並んで頻出のキーワードである「専門業務型裁量労働制」について、理解を深めましょう。

目次

「専門業務型」と「企画業務型」、同じ裁量労働制でも何が違う?

専門業務型と企画業務型の違い

同じ裁量労働制でも、「専門業務型」と「企画業務型」は、適用対象や導入手続きが異なります。社労士試験では、しばしば両制度の相違点に関わる出題が見られるため、試験対策上、対象となる業務や労働者等を比較しながら区別してインプットするのが得策です。

専門業務型裁量労働制の対象業務は「19種類限定」

まずは「対象業務」について、企画業務型裁量労働制では比較的ざっくりとした定めである一方、専門業務型裁量労働制では厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によってきっちり決められています。

専門業務型裁量労働制の適用は、新技術の研究開発や情報システムの分析・設計、一部の士業等の19種業務のみに限定されている点に注意が必要です。具体的な対象業務については、厚生労働省 のホームページ「専門業務型裁量労働制」よりご確認いただけます。

「事業場」「労働者」は専門業務型の方がシンプル

適用対象となる「事業場」「労働者の範囲」については、専門業務型裁量労働制では「対象業務が生じる事業場」「対象業務に従事する労働者」とされています。企画業務型裁量労働制よりも、分かりやすく規定されている点が特徴的です。

専門業務型は「労使協定締結・届出」で導入可能

専門業務型裁量労働制は、労使協定の締結・所定の様式による届出によって導入できます。社労士試験に出題された選択肢では「就業規則に規定すれば導入できる」というものがありましたが、これでは足りず、必ず労使協定が必要になります。

ただし、企画業務型と異なり、労使委員会の設置・決議は必要ありません。専門業務型裁量労働制の労使協定で定めるべき事項は、以下の通りです。

① 制度の対象とする業務

② 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと

③ 労働時間としてみなす時間

④ 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容

⑤ 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容

⑥ 協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。)

⑦ ④及び⑤に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

また、専門業務型裁量労働制では、企画業務型で義務付けられている「6ヵ月ごとの定期報告」について対応する必要がないことも覚えておきましょう。

専門業務型裁量労働制に関わる残業代の定義

専門業務型裁量労働制に関わる残業代については、企画業務型裁量労働制同様、「休日・深夜に労働した場合」に割増賃金が発生すると考えましょう。法定休日の労働については35%、深夜労働については25%が加算されます。

また、裁量労働制にはそもそも時間外労働の概念はありませんが、「みなし労働時間が8時間を超える」場合には、法定労働時間超となる部分の時間給・割増賃金を考慮した給与の設定が必要になります。

裁量労働制に登場する「みなし労働時間」とは?

みなし労働時間

社労士試験対策上、専門業務型や企画業務型等の裁量労働制で登場する「みなし労働時間」の考え方について正しく理解しておきましょう。「みなし労働時間」とは、業務遂行に必要とされる一日当たりの労働時間を算出し、実労働時間にとらわれず、あらかじめ定めた労働時間を基準とする考え方です。

労働時間が必ずしも成果に直結しない業務や、遂行をある程度労働者の裁量にゆだねるべき業務への適用は、合理的と言えるでしょう。しかしながら、一方では、過重労働の温床となりやすいため、対象業務・対象労働者の厳選、適切な制度設計・運用が不可欠です。

また、裁量労働制の対象であっても一切の勤怠管理が不要となるかと言えばそうではなく、政府のガイドラインでは、労働者の健康・福祉確保の観点から、日々の労働時間把握は使用者の責任として行っていくべきとされています。

まとめ

  • 専門業務型裁量労働制は、19種の対象業務のみに認められる労働時間制であり、業務の進め方や時間配分等について使用者が具体的な指示をしないことを条件に適用できます
  • 社労士試験対策上、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制は横断的に学び、それぞれの類似点・相違点を意識しながら、各制度に関わる理解を深めていくと、知識の混同防止に効果的です
  • 専門業務型裁量労働制は、単に就業規則への規定のみでは足りず、必ず「労使協定の締結・届出」によって導入します
  • 企画業務型同様、専門業務型裁量労働制でも「休日・深夜」の労働に対する割増賃金の支払いが必要です
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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