労災保険の「特別加入」は社労士試験でどう問われる?
更新日:2024年10月1日
労災保険とは、本来、事業主に雇用されている労働者のための補償です。
しかしながら、労働者以外であっても、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとされる場合、一定の要件下で労災保険に特別に加入することができます。
ここでは、労災保険の特別加入について、社労士試験対策上おさえるべきポイントについて解説します。
社労士試験頻出!労災保険「特別加入」の種類
まずは、労災保険に特別加入できる「対象」と、特別加入の「区分」を整理しましょう。
労災保険に特別加入できる方の範囲は、中小事業主等・一人親方等・海外派遣者に大別されます。そしてこれらの範囲は第1種~第3種に区分され、保険料算出には各種別に応じた保険料率が適用されます。
第1種特別加入の対象「中小事業主等」
第1種特別加入では「①一定の労働者を常時使用する事業主」「②労働者以外で①の事業主の事業に従事する人(事業主の家族従業者など)」を対象とします。
第1種特別加入の適用を受けるためには事業規模の要件を満たさなければならず、これは業種ごとに定められています。
業種 | 事業規模の要件 |
---|---|
金融業・保険業・不動産業・小売業 | 常時50人以下 |
卸売業・サービス業 | 常時100人以下 |
上記以外の事業 | 常時300人以下 |
上記の要件に加え、全業種共通の加入条件も満たす必要があります。
✓ 雇用する労働者について労働保険関係が成立していること ✓ 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること |
第1種特別加入については、「対象」と業種ごとの「事業規模の要件」、「事務組合への委託の必要」についてインプットしておきましょう。
第2種特別加入の対象「一人親方等や特定作業従事者」
第2種特別加入は、常態として労働者を使用せずに対象事業を行う「一人親方その他の自営業者」及びその事業に従事する者「家族従事者」、加えて「特定作業従事者」が対象となります。
一人親方等の対象事業とは、具体的には以下が規定されています。
|
参考:厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」
加えて、特定作業従事者に該当するための「特定作業」には以下のものがあります。
それぞれの具体的な作業内容について、社労士試験では細かく問われることはありませんが、参考リンクよりご確認いただけますので、一度目を通しておくと良いでしょう。
|
参考:厚生労働省「特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)」
第3種特別加入の対象「海外派遣者」
労災保険は、日本国内にある事業場のみに適用される保険制度のため、本来、海外の事業場で就労する労働者は適用対象外となります。
この点、国内事業場から海外に派遣された労働者を対象に、日本国内で適用となる労災保険給付を受けられるように設けられた制度が、第3種特別加入です。
第3種特別加入の対象範囲は以下の通りです。
① 日本国内の事業主(有期事業を除く)から、海外で行われる事業(海外支店、工場、現地法人、海外の提携先企業等)に労働者として派遣される人 ② 日本国内の事業主から、以下に該当する海外の中小規模事業に、事業主等(労働者ではない立場)として派遣される人 ③ 独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人 |
特別加入関連で社労士試験頻出!「給付基礎日額」とは
社労士試験の対策として、労災保険特別加入関連では第1種~第3種の種別と各対象の他、「給付基礎日額」「保険料算定」についても理解を深めておく必要があります。
給付基礎日額とは、一般労働者の平均賃金に相当する額であり、保険料や、休業(補償)等給付などの給付額を算定する基礎となります。給付基礎日額は、特別加入者の申請に基づき、都道府県労働局長が決定します。
給付基礎日額を分かりやすく解説
特別加入者の給付基礎日額は、年間の収入を基準に算定します。例えば、一人親方で年収365万円の場合、1日あたりの平均的な収入額は10,000円となり、この10,000円を給付基礎日額とするのが通常です。
ただし実際には、加入者自身が民間保険の加入状況等も踏まえ、給付基礎日額3,500円から25,000円(16段階)から選択することになります。
給付基礎日額は保険料算定基礎に
労災保険の特別加入の年間保険料は、「給付基礎日額×365」から算出される保険料算定基礎額に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じて算出します。
第1種特別加入保険料率は当該事業に適用される労災保険率と同一の率、第2種特別加入保険料率は事業の種類によって異なる所定率、第3種特別加入保険料率は3/1000(2024年度)となっています。
なお、令和6年度から「第1種特別加入保険料率(労災保険率)」「労務率」「第2種特別加入保険料率」が改定されました。厚生労働省のホームページに記載がありますので詳しくはそちらをご覧ください。
給付基礎日額を基準とした補償内容、一般労働者との違い
特別加入者に対する保険給付および特別支給金については、一般の労働者とほぼ同様です。
ただし、社労士試験対策上、以下の点で通常の労災保険とは給付内容が異なる点を把握しておく必要があります。
|
参考:【給付基礎日額】労災に強い社労士&弁護士が解説|小杉法律事務所
まとめ
- 労災保険は本来、労働者が加入できる保険制度ですが、一定の要件を満たす場合は特別加入が認められます
- 労災保険の特別加入には、第1種~第3種までの種別があり、社労士試験対策上、各種別の加入対象や要件をおさえる必要があります
- 社労士試験で狙われる労災保険特別加入関連の出題として、特別加入できる「対象」の他、「給付基礎日額」と「保険料算定」も頻出です
- 特別加入者に対する保険給付および特別支給金の取扱いは一般の労働者とほぼ同様ですが、一部異なる点について、社労士試験対策上、正しく理解しておくのが得策です
小野賢一(おの けんいち)
「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
●フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師