社労士試験の受験資格は大卒だけ?社労士試験の受験資格完全解説

更新日:2023年3月28日

開いた状態で置かれてる本

人気の高い国家資格である社会保険労務士(以下・社労士)。

業種を選ばず活躍できる資格であり、また企業に勤務しながらその資格を活かせるというのも人気のポイントです。

そんな社労士になるには、社労士試験という国家試験に合格する必要があります。そして、この国家試験には受験をするための受験資格が存在します。さらにいうと、その受験資格が非常に多岐にわたり複雑になっています。

そこでこの記事では、社労士試験の受験資格に関して詳しく解説していきます。さらに受験資格を満たしていない方に、おすすめの受験資格取得法も紹介していきます。

目次

社労士の受験資格は大きく分けて3つ

社労士試験を受験するには受験資格が必要です。受験資格を細かく分けると16種類に分類されますが、大きく分けると受験資格は3つです。

  • 学歴
  • 実務経験
  • 他の資格を取得

この3つの受験資格に関して細かく解説していきましょう。

学歴による受験資格を紹介

まずは学歴による受験資格取得条件です。

学歴で受験資格を満たすのは、基本的には大卒資格です。しかし、大卒以外にもいろいろな条件がありますので、それぞれの条件を紹介していきます。

大卒等の学歴がある

社労士試験の受験資格を得られるのは大卒という学歴。また、四年制の大学のみではなく、大卒に準じる学力が認められれば受験資格を満たせます。社労士試験において、卒業することで受験資格を得られる学校が以下の通りです。

★受験資格を得られる学校(すべて学校教育法に準じるもの)

  • 大学
  • 短期大学
  • 専門職大学
  • 専門職短期大学
  • 高等専門学校(5年制)
  • 専門職大学の前期課程を修了した者

四年制の大学に限らず、短大や高専の卒業でも受験資格を満たすことになります。

この卒業による受験資格を証明するための書類は、「卒業証明書の写し」、「修了証明書の写し」、「卒業証書の写し」、「学位記の写し」のいずれか。受験申し込みの際に申込書に添付して申請をしましょう。

大学で指定された単位を取得している

社労士試験の受験資格を満たすのは、大学卒業だけではありません。大学において指定された卒業要件単位を取得していることを証明できれば、受験資格を満たせます。

★受験資格を得るために必要な単位数

  • 卒業要件を満たす単位を62単位以上修得
  • 卒業要件を満たす単位が、「一般教養科目」と「専門教育科目」に分けられている場合は、一般教養科目を36科目以上取得したうえで、専門教育科目を加えて48単位以上の単位を取得

上記の単位を取得している方であれば、大学を卒業していなくとも社労士試験の受験資格を満たしています。つまり、大学中退者でも受験資格を満たすケースはあります。

ここで注意しておきたいのが、上記の単位を取得しての受験の場合、短期大学の単位では認められないこと。短期大学に通っていた方は、卒業しないと受験資格を得られないので覚えておきましょう。

単位取得を証明するには「大学の成績証明書の写し」が必要になります。

旧高等学校令に準じた学歴のある方の場合

日本で現在の学校教育法が制定されたのは1947年(昭和22年)。この学校教育法が制定されるまでは、「旧高等学校令」に準じた教育が行われていました。

この受験資格要件は、旧高等学校令に準じて教育を受けていた高齢の受験者のための要件となります。

★旧高等学校令に準じた受験資格(すべて卒業が条件)

  • 旧高等学校令による高等学校高等科
  • 旧大学令による大学予科
  • 旧専門学校令による専門学校

受験資格を証明するためには、「卒業証明書の写し」「修了証明書の写し」「卒業証書の写し」のいずれかが必要となります。

厚生労働大臣が認可する学校等の卒業

卒業することで受験資格を満たす学校は上記以外にもあります。それは、厚生労働大臣が認可する学校の卒業です。

実際に認可を受けている学校には、助産師や看護師の学校をはじめ、多くの学校が認可を受けています。すべての学校をここで紹介することは難しいので、どんな学校が認可を受けているのかは、「社会保険労務士試験オフィシャルサイト」で確認しましょう。

これらの学校を卒業した証明書としては「卒業証明書の写し」、「修了証明書の写し」、「卒業証書の写し」のいずれかとなります。また、これらの書類が英語等外国語表記の場合、和訳した文書も添付して提出する必要があります。

専修学校の専門課程卒業

学歴による受験資格の中には、専修学校の専門課程卒業という条件もあります。どのような専修学校で、どのような専門課程を卒業して入れが受験資格を満たすかは、社会保険労務士試験オフィシャルサイトでご確認ください。

★社労士試験受験資格を満たす専修学校

  • 修業年限が2年以上
  • 課程の修了に必要な総授業時間数が、1700時間(62単位)以上

必要書類は「専門士または高度専門士の称号が付与されていることを証明する書面」。社労士試験オフィシャルサイトでは「専修学校修了者受験資格証明書」という書類をDLできますので、ここに必要事項を記入して提出することも可能です。

短期大学と同等の学力を要する各種学校の卒業

さらに短期大学卒業と同等レベルの学力があることを証明できれば、各種学校の卒業で受験資格を得られるケースがあります。

このケースに関しては、全国社会保険労務士会連合会の審査が必要。社労士試験オフィシャルサイトでも、具体的な学校名は掲載されていませんので、必ず事前に確認をしておきましょう。

必要証明書類は「卒業証明書の写し」「修了証明書の写し」「成績証明書の写し」「カリキュラムの写し」のいずれかとなります。

実務経験による受験資格を紹介

社労士試験の受験資格は実務経験でも満たすことが可能です。受験資格を満たすには、定められた勤務先で、定められた業務を行う必要があります。

必要書類に関しては、どの条件を満たす場合においても、社労士試験オフィシャルサイトからDLできる様式に則り、必要事項を記入の上、提出する形になります。

これら実務経験に関して詳しく解説していきましょう。

労働社会保険諸法令の規定に基づいた法人の従業員・役員

社労士試験の受験資格を得られる実務経験を積むためのひとつ目の方法は、労働社会保険諸法令の規定に基づいた法人において、役員や従業員として業務に携わることです。

この場合、非常勤の役員などでは受験資格を満たしません。あくまでも専従の役員、従業員として勤務していることが重要です。

このような法人において、労働社会保険諸法令の実施実務に3年以上従事することで受験資格を得られます。

国・地方公共団体の公務員

公務員の中にも字受験資格を満たせるケースがあります。

★受験資格を満たす団体(行政事務に従事するのが条件)

  • 行政執行法人(旧特定独立行政法人)
  • 特定地方独立行政法人(旧特定独立行政法人)
  • 日本郵政公社の役員又は職員

これらの団体において、行政事務に相当する事務に従事した期間が3年以上あれば、受験資格を満たせます。

社労士法人・社労士等の補助

社労士として独立開業をしている方も多くいます。こうした社労士の事務所や、社労士法人として開業している事務所において、その補助をする形で実務経験を3年以上積んだ方も受験資格を満たすことになります。

この条件では社労士・社労士法人だけではなく、弁護士・弁護士法人の補助をする方でも受験資格を満たすことになります。

労働組合の専従役員

労働組合の専従役員として3年以上業務に従事することでも受験資格を得られます。もちろん専従が条件ですので、非常勤の役員では条件を満たすことはできませんのでご注意ください。

労働組合の職員・労働社会保険諸法令に関する事務に従事する個人事業主

社労士試験の受験資格を得るには、何かしらの団体に所属し業務に従事している必要があると思われがちですが、個人事業主の方でも受験資格を満たせるケースはあります。

それが、労働社会保険諸法令に関する事務に従事する個人事業主の方。こうした業務に3年以上従事していれば受験資格を満たします。さらに労働組合の職員の方も3年以上の実務経験で受験資格を満たせます。

他資格所得による受験資格を紹介

最後にほかの資格を取得することで社労士試験の受験資格をえるケースを紹介しましょう。

学歴や実務経験では受験資格を満たすことが難しいという方は、ほかの資格を取得し受検資格を得ることを考えていいでしょう。

受験資格を満たしていることを証明する書類は、各種資格試験の合格証明書や登録証などとなります。

厚生労働大臣が認可した資格所有者

まずは厚生労働大臣が認可する資格を所有しているというケースを紹介しましょう。

★厚生労働大臣が認可する主な資格

  • 国家公務員採用総合職
  • 自衛隊幹部候補生採用
  • 一級建築士試験
  • 情報処理技術者試験(ITパスポート・情報セキュリティマネジメント・基本情報技術者・応用情報技術者を除く)
  • 気象予報士

ここで紹介するのは主な資格のほんの一部。実際には数多くの資格が受験資格の対象となっていますので、社労士試験オフィシャルサイトで確認しましょう。

ただし、上記の通り比較的取得が難しい資格も含まれています。この他資格取得で受験資格を得ることが考えている方は、後の仕事などで有効に活用できるような資格を取得することを考えるのがいいでしょう。

司法試験予備試験合格者

弁護士となるために必要な試験となるのが司法試験予備試験。この予備試験に合格している方も受験資格を得ることになります。また、旧一次試験、高等予備試験に合格している方も受験資格を満たすことになります。

もちろんこの予備試験は社労士試験よりもさらに難易度の高い資格。この資格取得で受験資格を得るという方はあまりいないでしょうし、新たに目指すというのはあまり選択肢とはならないかもしれません。

行政書士試験合格者

一般的な社会人で、受験資格はないものの社労士試験を目指したいという方におすすめできる、比較的挑戦しやすい資格が行政書士資格です。

行政書士試験は受験資格がなく誰でも挑戦ができる資格です。とはいえ簡単に合格できる資格ではありませんので、行政書士試験に合格し、さらに社労士試験を目指すという場合は、ある程度長期間の勉強期間を確保する必要があるでしょう。

一部受験科目免除を受けられる条件

社労士試験では、一部受験科目の免除を受けられる条件も存在します。難易度が高い社労士試験だけに、受験資格だけではなく、科目免除の条件を満たしているのであれば、ぜひ活用したいところです。

科目免除の条件となるのは主に実務経験となります。ここでは代表的な4つの例を紹介しますが、このほかにも科目免除となる条件は多岐にわたりますので、詳細は社労士試験オフィシャルサイトで確認しておきましょう。

★科目免除が受けられる主な条件

  • 国・地方公共団体の公務員として労働社会保険法令に関する事務に従事した期間が通算10年以上
  • 厚生労働大臣が指定する団体の役員・従業者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上
  • 社労士・社労士法人の補助者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方で、全国社会保険労務士会連合会が行う免除指定講習を修了
  • 日本年金機構の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間が通算して15年以上
  • 全国健康保険協会の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間が通算して15年以上

受験資格取得に関する注意点

ここまで紹介してきた通り、社労士試験の受験資格は多岐にわたり、なかなか複雑になっています。受験資格に関して一番の問題は、受験資格を満たしていると思っていたのに、実は満たしていなかったというケースです。

受験資格を持たない場合、受験資格を満たすためにかなりの時間が必要となるケースも考えられますので、まずは自分が受験資格を満たしているかどうかを把握しておくことが重要です。

そんな受験資格に関する注意点をいくつか紹介しておきましょう。

実務経験は単純実務では条件を満たさない

受験資格において注意が必要なポイントが実務経験です。実務経験といっても、どんな業務をしていても満たすことにはなりません。

上の実務条件の項でも触れていますが、実務経験として認められるのは「労働社会保険諸法令に関する行政業務」となります。つまり法令に関する実務にしっかりと関わっていることが重要です。

中でも重視されるのが「実際に申請書を作成したことがあるかどうか」というポイント。ここまでしっかりと業務に携わっていないと、実務経験とは認められません。

社労士事務所で働いているといっても、書類のコピーを取ったり、データを整理したりしているだけでは実務経験アリとは認められないケースがありますので注意しましょう。

事前に確認を行うのが重要

自分の学歴や実務経験などが受験資格を満たしているか、少しでも不安があるという方は、受験を考える前にまずは「全国社会保険労務士連合会試験センター」に問い合わせてみましょう。自分の経歴が受験資格を満たしているか確認しておくことで、安心して試験に臨めます。

社労士試験受験資格のQ&A

社労士試験の受験資格は非常に複雑です。

そこで実際に社労士試験を目指すかどうか悩んでいるという方が持っている疑問に対し解答していきます。

Q.学歴の資格を満たしていない場合は?

自身の学歴が社労士試験の受験資格を満たしていない場合は、実務経験か他資格の取得になりますが、こちらもなかなかハードルが高いのは間違いありません。

ある程度時間を確保できるのであれば、おすすめしたいのが「通信制の短期大学を卒業する」という方法。通信制であれば社会人の方でも十分に勉強可能ですし、学費の面でもそこまで高額なものではありません。

通信制の短期大学にも登校指定日はありますが、多くの場合土日祝日が指定されているため、一般的な社会人の方であれば通学も可能でしょう。

短大卒業という学歴は、社労士試験に限らずほかの資格試験でも受験条件を満たすこともあります。卒業しておいて損になることはないでしょう。

Q.受験資格を得られるおすすめの資格は?

社労士試験の受験資格を得られる資格は多数あります。どの資格がおすすめかというと、一番のおすすめは今現在就いている職に直接関係のある資格がいいでしょう。

仕事に直結する資格であれば、社労士試験の受験資格を得るだけではなく、現状働いている会社で資格手当支給の対象となるかもしれません。

今の仕事に直結する資格がない、現状仕事をしていないなどの場合、取得しておいて損がない資格としては行政書士や中小企業診断士の資格が挙げられます。どちらも受験資格なしで受験でき、さらに社会的評価の高い資格です。

Q.実務経験を積むのにおすすめの方法は?

受験資格を実務経験で満たすこと自体はひとつの方法として考えられます。将来的に社労士としての業務に就くことを考えれば、資格取得前からその業務を経験しておくことは大きなプラスとなるでしょう。

しかし、社労士試験の受験資格を得るためだけに転職をするというのはあまりおすすめできません。

受験資格を満たすために実務経験を積むのであれば、自身が興味のある分野で探すのがおすすめ。そのうえで受験資格を満たすような仕事を探しましょう。

まとめ

社労士試験には学歴、実務経験、そして社労士以外の資格取得などの受験資格があります。さらにこの受験資格は多岐にわたり、なかなか複雑な部分もあります。

大卒などハッキリとした受験資格がある方は問題ありませんが、受験資格があるかどうか不安な方は、必ず事前確認をしておきましょう。

もし受験資格を持っていないという方は、受験資格を得る必要があります。おすすめの方法は通信制の短大を卒業すること。ある程度の時間は必要ですが、社会人として働きながらでも十分卒業は可能ですし、費用面でも大きな負担にはなりません。

短大通学よりもさらに時間を短縮して受験資格を得たいという方は、行政書士試験に合格するのがおすすめ。もちろん行政書士試験も簡単な試験ではありませんが、通信講座などを利用して効率的に学べば1年間で十分合格を目指せます。

また、行政書士試験も法令関係が中心の試験。社労士試験の法令問題に対する勉強の練習にもなりますのでおすすめです。

この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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