簿記講座の講師ブログ
人的資本の開示

 皆さん、こんにちは。 
 簿記講座担当の小野です。
 暖かくなったり、寒くなったり。絶対に体調は崩さないように!

 SDG’sの展開を背景に、企業が従業員に対してどのように対応しているかを説明するために、人的資本に関する開示が求められるようになってきています。まずは、上場企業に、貸借対照表や損益計算書が収容されている『有価証券報告書』という書類の中で、2024年3月から、次の3つの記載が求められるようになりました。
 
 ①管理職に占める女性労働者の割合
 ②男性労働者の育児休業取得率
 ③労働者の男女の賃金の差異

 このような数字を開示させることによって、企業がこれらの数値をよくするための取り組みを行うようになるので、SDG’sに対応するためにまずはこれらの数値の開示から始められることになりました。現在はたった3つだけですが、実際に開示されてみると、いろんなことが分かります。

 例えば、DJSIという人的資本に対する取り組みが優れている企業だけに投資するファンドがありますが、そこに含まれている企業であっても男性優位であることが分かります。DJSIに含まれている企業に伊藤忠商事がありますが、本社および子会社の③は51.9~85.8%です。つまり、伊藤忠商事グループの会社では、最も低い会社で、女性の平均賃金が男性の平均賃金の51.9%であるということです。逆に最も高い会社でも女性の平均賃金は男性の平均賃金の85.8%にすぎず、男性の賃金が高くなっていることが分かります。
 これが何に起因しているのかまでは分かりませんが、グローバル企業として世界で活動していくためには、今後さらにこの差が埋まるような経営をしていく必要があるでしょう。

 さらに、企業は『統合報告書』という冊子を発行して、環境や人的資本に対してどのような取り組みを行っているか、自主的に報告しています。多くの企業が人的資本への取り組みの指標として「従業員のエンゲージメント(働きがい)」を高めようとしています。従業員の働きがいを「エンゲージメント」という数値で表しています。給料・研修・仕事の質など様々な要素を数値化して「エンゲージメント」という1つの指標で表そうとしているのです。
 そして、NECや三井化学は、役員報酬の一部をエンゲージメントと連動させることにしました。つまり、従業員の働きがいが高まると役員報酬が上がる仕組みであり、役員がエンゲージメントとを高めるような経営をしていかなければならない環境を作っています。

 現在、人的資本への取り組みは始まったばかりですが、数値を公表させることで様々な取り組みが加速していくのでしょう。
 
 今の20~30代の皆さんは多くの恩恵を受けることができるでしょう。あと10年はやく始まっていれば私も恩恵を受けることができたかもしれないのに…。