中小企業診断士講座の講師ブログ

中小企業診断士 R1 経済学・経済政策 第5問設問1(乗数効果) その2

みなさんこんにちは。
フォーサイト中小企業診断士講座、講師の小嶋です。

※この記事は前ページの「R1 経済学・経済政策 第5問設問1 その1」の続きとなっています。
未読の方は「その1」からご確認ください。
またこの内容は試験対策上応用的な部分もあるため、学習をはじめたばかりの方は「その1」の方をご確認いただくだけでも十分です。

乗数理論を理解する上での第3ステップは、公式導出の過程も理解しておくことです。
乗数の公式は総供給S=Y(国民所得)、総需要D=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)、の式に消費関数C=c(Y-T(租税))+C₀(基礎消費)を代入した上で、
総供給Sと総需要Dが等しくなる国民所得Yを求める過程で導かれます。(簡略化のため、総需要から純輸出(X-M)は省いています。)

S=D
↓(総供給、総需要の式を代入)
Y=C+I+G
↓(消費関数を代入)
Y=c(Y-T)+C₀+I+G 
この式をYについて解きます。
  Y-cY=-cT+C₀+I+G
(1-c)Y=-cT+C₀+I+G
    Y={1/(1-c)}(-cT+C₀+I+G)

この式は投資Iや政府支出Gが1増加した場合に、国民所得が1/(1-c)倍増加し、
租税Tが1増加したときに国民所得は-c×{1/(1-c)}=-c/(1-c)倍増加する(-の増加なので、減少です)、ことを示しています。
(基礎消費C₀はコントロールできないものなので、議論の対象外になります。)

この導出過程から学べることは、乗数に大きな影響を与えているのは左辺でYの係数としてあらわれてくる、1-cということです。
前提条件としてYの係数となる要素が、限界消費性向c以外に出てくることにより、乗数効果が1/1-cから変動することを示しています。

この点について試験対策上は
① Yの係数になるものでc以外の要素が条件として指定された場合、乗数効果は変動する
② それが消費の減少につながる要素であれば、乗数効果は小さくなる(基本的に消費の減少につながるパターンが出題されます)
上記2点を押さえておけば、ほとんどのパターンに対応できます。
※H26 第4問設問2は定率租税tがt=0.2として与えられる(定額租税に加え、所得の2割が租税となる)ことで、投資の乗数効果が1/(1-c)よりも小さくなることが判断できれば、正解できる問題でした。

今回の記事は乗数理論について、3つのステップに分けて解説しました。
はじめから完璧に理解しようとすることは、挫折のきっかけにもなり得るため、まずは第1ステップの内容をしっかり理解し、覚えることに取り組んでください。