簿記講座の講師ブログ

ゼロ金利政策からの脱出。何が起きてる?

ゼロ金利政策からの脱出。何が起きてる?

皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。
今日もがんばっていきましょう!

長らく続いてきたゼロ金利政策ですが、
先日、日銀の黒田総裁が0.2%くらいまでの金利上昇は認めると宣言しました。
そもそも、景気拡大・物価上昇を達成するためのゼロ金利政策でしたが、
その目標が達成されない状況での政策変更です。

教科書的に言うと、金利を下げればお金を借りやすくなり、
たくさんお金を使ってもらえば景気がよくなり、物価も上がるはずです。
しかし、今回のゼロ金利政策ではうまくいきませんでした。その原因は大きく3つあると思います。

1つは企業側の要因です。日本は人口減少社会ですね。
売る相手(日本人)が減るから、企業がお金を借りて、工場を建て、
製品の生産量を増やしても無駄と考えて、お金を借りず、使いませんでした。
だから、あまり景気は良くならなかったんですね。

2つ目は消費者側の要因です。
将来不安でお金を使いたくない=貯めちゃうという消費者心理です。

3つ目は統計上の要因です。
メルカリ・ヤフオク・エアービーアンドビーなど、
ネットの発達とともに消費者が商品を直接販売できる環境(特に中古市場)が整ってきました。
景気や物価の指標は、主に企業の会計数値から集計されるが、
メルカリでの個人売買など、企業の売上に含まれない取引は景気や物価の指標に反映されません。
だから、個人売買が盛り上がっても景気・物価の数字には全く反映されないんですね。

そんなこんな、景気・物価ともあまり動きがない中、
副作用が無視できないレベルになってきました。
ここでいう副作用とは、バブルになってしまうということです。
他にも日銀が国債を買い過ぎて取引に支障が出ているとか、
金利が低すぎて銀行が儲けられなくなったという副作用もあるけど、
世界経済でみると、バブルリスクが最大の副作用です。

*金利が下がると手持ちのお金を銀行に預けておいても利息が付かない。
そのとき、どうしますか? 
より高い利益を求めて、現金を他の資産(株式とか、不動産とか)
に替えて所有しようという動きが活発になります。
株式・不動産を買いたい人が増える=人気商品になると、当然価格は上がりますね! 

リーマンショック後、世界中で低金利政策がとられて、どの国でも株価高騰しています。
日本もアメリカも株価はリーマンショック直後の4倍ですし、
イギリス、ドイツ、どこを見ても過去最高値圏です。株価を見ると、バブルが始まっている感じなんです。
また、地域差はあるが、不動産もかなり上がっていまる。銀座の土地価格はバブル期超えしていますよね。

ただ、普通の人は金利が下がったからといって株・不動産を買わないし、
日本はバブルにはほど遠いという意見もあると思います。
最近でこそ個人に資産運用が浸透し始めているが、
それでも「いやぁ、株なんて危なそうで手を出せない」と思っている方が多いと思う。
でも、それは日本特有の事情です。

実は、個人資産の半分程度を株・不動産などのリスク資産(値動きする資産)で
所有するのがグローバルスタンダード(日本人は15%くらい)なんです。
だから、欧米では、低金利=資産価格上昇で多くの人がとても豊かになっていて、
資産効果(自分の資産が値上がりしたお金持ちになった気分になり、
消費を増やしてしまうこと)でさらに消費するので、もっと景気がよくなる好循環が生まれています。
日本では、多くの人々が資産価格の値上がりによる豊かさを享受できなかった、
それゆえ、消費も盛り上がらなかったという、世界からみるとちょっと特殊な状況なんです。

こんな状況ですから、世界的には株や不動産の価格上昇を少し押さえないと
そろそろマズいという雰囲気が出てきました。
ちょっといい方はきついですが、日本では株式を所有しているのは資産家に偏っているから、
ゼロ金利政策が日本では「金持ちをより金持ちにしただけ」で終わっている可能性があります。
株式や不動産を持たない多くの人々が住宅ローンを組みやすくなったと喜んでいる裏で、
少数の資産家の資産が3倍・4倍に膨れていて、ウハウハになっているかも…。

このような状態ですから、金利を高くすれば、株などをお金に換える人が出てきて、
価格上昇を緩やかにできます。
また、金利が上がれば、お金を使わず貯める人が増えるので、
経済活動も少し緩やかになる。

こうやって、金利をあげれば経済を落ち着いた状況にでき、
これを出口戦略とよんでいるんですね。

ただ、金利上昇で政府の利払いも増えるし、
ヘタすると急激な景気悪化になりかねないから、
十分に気をつけて操作してもらわないと困ります。

こっちをたてればあっちがたたず。
日銀には難しい舵取りが求められます。何とかうまくコントロールしてほしいものです。