損害保険と損害賠償とは?

損害保険と損害賠償とは?
目次

損害保険と損害賠償とは

損害賠償については民法に規定されていますが、民法に優先して適用される特別法の中には損害保険商品に関係するものもあります。

民法の規定とは

民法においては損害賠償請求にあたり、「被害者」が「加害者」の過失を立証する必要があります。

不法行為責任による損害賠償責任とは

故意・過失により他人の権利を侵害した者はその損害を賠償する責任を負います。

債務不履行による損害賠償責任とは

債権者に対する債務の履行ができなくなった場合は、損害賠償責任を負います。

使用者責任による損害賠償責任とは

業務中の雇用者が第三者に損害を与えた場合は使用者も賠償責任を負います。

共同不法行為による損害賠償責任とは

複数の加害者が加えた損害は全員で損害額全額を連帯して賠償責任を負います。

自動車損害賠償保障法(自賠法)とは

自動車人身事故について、民法に優先して加害者に無過失責任に近い責任を課しています。自賠法では立証責任を加害者に移し、無責3条件をすべて立証しない限り賠償責任を免れません。

無責3条件とは

以下の条件3つを、無責3条件といいます。

  1. 自動車の運行に過失がなかったこと
  2. 被害者または運転者を除く第三者に故意・過失があったこと
  3. 自動車に欠陥がなかったこと

したがって、加害者に最低限度の賠償資力を持たせ、結果的に被害者の保護を図るため、原付自転車を含むすべての自動車の保有・使用・管理者に自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)を義務付けるとともに、政府の保障事業により、たとえ自賠責保険の未加入者などによる事故でも、自賠責保険と同じ額の補償を受けられます。

しかし自賠責保険だけでは補償が足りないうえ、自賠責保険では補償されない対物事故による損害を補償するため、自動車保険の対人・対物賠償保険の加入が必要となります。

失火の責任に関する法律(失火責任法)とは

火災事故における不法行為責任の特別法で、故意または重過失の場合を除き、軽過失による失火(爆発を除く)で第三者へ損害を与えても賠償責任を負わない旨を定めています。

したがって自分が被害者になる場合を想定し、建物・家財の補償(火災保険)を備えておく必要性があります。また、加害者になる場合も考えると賠償責任に対する補償(個人賠償責任保険)も必要となります。

しかし、失火責任法は債務不履行に対しては効力を持たないため、賃貸の場合は家主と結んだ賃貸借契約に従い、退居時は原状回復義務を負います。つまり家主に対する賠償責任(借家人賠償責任保険)も保険で付帯する必要もあります。

失火の責任に関する法律(失火責任法)とは

製造物責任法(PL法)とは

製造物責任法では、製造業者などは引き渡した製造物の欠陥によって、他人の生命・身体または財産を侵害したときは、原則として損害賠償責任を負うこととされており、過失に対する挙証責任が被害者側から製造業者側に転換されています。

したがって、被害者は加害者の過失を証明する必要はなく、製造物の欠陥による損害を証明すればよいことになっています。製造業者などは、従来以上に製造物責任を負うリスクが大きくなり、この補償(生産物賠償責任保険等)の必要性が高まっています。

損害保険と損害賠償に関するよくある質問

自賠責も飲酒、無免許、運転免許失効中でも支払い対象になりますか?

結論から先に言うと補償の対象になります。

自賠責保険は、交通事故による被害者を救済するために加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることを目的としています。(加害者が全額支払えるとは限らないので)

したがって、加害者の飲酒運転や無免許運転といった違法行為による事故であっても任意加入の対人賠償保険と同様に被害者に対して補償されます。

しかしながら、無保険車による事故、ひき逃げ事故の被害者に対しては、自賠責保険では補償されないのでその代わりに、政府が行っている損害賠償保障事業によって補償されています。

自動車保険の賠償保険金には税金がかかりますか?

損害保険契約から支払を受ける保険金は、原則として非課税です。したがって、自動車保険の賠償保険金はもちろん、火災保険や債務返済支援保険(所得補償保険金の一種である)も、原則通り非課税です。

「金融商品販売法に規定されている顧客への説明義務を怠った場合、金融商品販売業者は顧客に対し、損害賠償責任を負う」とのことですが、実害が出ていなくても、損害賠償責任を負うものでしょうか。

顧客への説明義務を怠った場合、業者は顧客に対して損害賠償責任を負うことになります。

このとき、説明義務がある重要な事項について説明しなかったことにより損害が発生した場合は、販売業者に損害賠償請求ができます。

ただし、立証責任は消費者側にあります。 実害が出ていないならば、消費者がそもそも請求する損害がないわけですから、業者がその責任を負うことはありません。

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