簿記講座の講師ブログ

のれん償却どうなる?

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 暑いし、ムシムシしてきたし、快適な環境を作るのが大変ですね! 

 他の企業を合併・買収した際に「のれん」が生じます(簿記2級)
 純資産(資産-負債)が10億円の企業を合併・買収する際に15億円払ったとすると、差額の5億円が「のれん」として貸借対照表に計上される資産となります。純資産にはブランドなどの無形資産が反映されていないので、「のれん」はそれらに対する対価という位置づけです。

 日本ではこの「のれん」を20年以内に償却する必要があります(償却期間は企業が決めます)。
 「のれん」を無形固定資産と見なして、合併・買収後にその「のれん」を利用して営業を行う以上、時間の経過などによってその「のれん」が減価すると考えます。ブランド価値などの取得価格する「のれん」を有形固定資産(建物や備品など)と同じようにみなすわけです。
 一方、国際会計基準では「のれん」を償却することはありません。定期的に「のれん」の価値が残っているかどうかチェックして、「のれん」の価値が下がったときに評価損を計上するだけです。「のれん」の価値が下がっていないと判断すれば、「のれん」の金額は減ることなく、「のれん償却」という費用も計上されません。

 ですから、国際会計基準を採用すると、企業は合併・買収によって、
 ・資産を増やすことができる
 ・毎年の費用に影響を与えないことが多い
状態を作り出すことができ、合併・買収で企業を大きくする戦略をとっている企業は、こぞって国際会計基準を採用しています。

 例えば代表格はソフトバンクグループです。ソフトバンクグループの連結貸借対照表(2022年3月)に計上されている資産の総額は約46兆円であり、そのうち4.6兆円が「のれん」です。資産の1割が「のれん」なんです! そして、この期間の純利益は5.5兆円です。もし「のれん」を10年で償却していたとしたら「のれん償却」という費用が0.46兆円計上されますから、純利益が5兆円ほどになり、1割程度減ることになります。

 このように「のれん」を償却するというのは、企業の業績に大きなインパクトを与えます。資産や利益の1割を「のれん」関連で占めるのですから。

 このように国際会計基準では、現在、「のれん」を償却しないのですが、今後は償却する方向に進むかもしれません。秋ごろ、「のれん」を償却する会計基準へ変更するかどうかを決めると発表されました。
 もし「のれん」の処理方法を変える気がないのであれば、こういったアナウンスが行われることはないでしょう。こういったアナウンスが行われるのは「のれん」の償却をするように会計基準を変える必要があるからでしょう。

 「のれん」を償却することになれば、「のれん償却なし」目当てで国際会計基準を採用してきた企業の財務戦略が変わってくるでしょう。要注目です!