行政書士講座の講師ブログ

連帯債務と不可分債務について その1

皆さん、こんにちは!
フォーサイト専任講師・行政書士の福澤繁樹です。

今回は、受講生の方が難しいと感じることの多い「多数当事者の債権債務関係」から、
「不可分債務と連帯債務」について解説したいと思います。
ただし、解説する分量が多いので、何回かに分けて書いていきます。

第1回目は、両者の意義と成立における相違点を見ていきます。

まず、民法436条は、以下のように連帯債務を規定しています。

「債務の目的がその性質上可分である場合において、
法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、
債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての
連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。」

つまり、連帯債務とは、そもそも、民法では、
数人の債権者や債務者がある場合には、
原則として分割債権・債務であると規定しているところ
(427条)、「債務の目的がその性質上可分である場合において、
法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を
負担するとき」においては、「債権者は、その連帯債務者の一人に対し、
又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、
全部又は一部の履行を請求することができる。」というものです。

次に、不可分債務について、民法は430条で以下のように規定しています。

「第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、
債務の目的がその性質上不可分である場合において、
数人の債務者があるときについて準用する。」

つまり、不可分債務は、
「債務の目的がその性質上不可分である場合」に成立します。

まとめると、条文上、不可分債務と連帯債務は、
その成立において、以下のように違いがあります。

すなわち、不可分債務とは、その債務の性質が不可分であれば、
当然に不可分債務として成立するものですが、連帯債務の場合は、
そもそも債務の性質は可分なので、何もしなければ分割債務となるところ、
法令や当事者の意思により連帯債務としているということです。

<不可分債務>
債務の目的がその性質上不可分である場合で、数人の債務者があるとき

<連帯債務>
債務の目的がその性質上可分であるが
①法令の規定、または②当事者の意思表示、により
数人が連帯して債務を負担するとき

なお、不可分債務は連帯債務を準用していますので、両者ともに、
債権者は、その連帯債務者(不可分債務者)の一人に対し、
又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者(不可分債務者)に対し、
全部又は一部の履行を請求することができます。

もちろん、両者ともに、債権者が受領できるのは、債権額の範囲に限られます。
たとえば、連帯債務(不可分債務)の債権額が300 万円、
連帯債務(不可分債務)者ABC、債権者Dとします。

そして、この場合、債権者Dは、
ABCのそれぞれに対して300 万円ずつ請求することができますが、
Dが貰える合計額はあくまでも300 万円となります。

そして、ABCのうち誰か一人がDに300 万円を支払えば、
そこで不可分債務(連帯債務)は終了となります。

この点は、両者で違いはありません。

今回は、両者の意義と成立における相違点を確認しました。

次回は、両者の債務者の一人について生じた事由の
他の債務者に対する効力についてみていきたいと思います。

それでは、また。