今回は過去問で頻出のアタッチメント(愛着)について、重要なポイントを押さえていきましょう。
さっそく過去問を見ていきます。
令和5年前期保育の心理学の問20では、以下の問題が出題されました。
次のうち、アタッチメント(愛着)についての記述として、適切なものを○、不適切なものを×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A ボウルビィ(Bowlby, J.)によれば、アタッチメント(愛着)の発達には4つの段階があり、分離不安や人見知りがみられるのは最終段階である。
B 子どもが周囲のものや人に自ら関わろうとして上手くいかない時、愛着関係のある保育士の存在は、子どもにとっての安全基地となる。
C エインズワース(Ainsworth, M.D.S.)はアタッチメント(愛着)の個人差を調べるために、ストレンジ・シチュエーション法を考案した。
D 表象能力の発達によって、愛着対象に物理的に近接しなくても、そのイメージを心の拠り所として利用できるようになり、安心感を得られるようになる。
(組み合わせ省略)
選択肢一つ一つを解説していきます。
A ボウルビィ(Bowlby, J.)によれば、アタッチメント(愛着)の発達には4つの段階があり、分離不安や人見知りがみられるのは最終段階である。
正解:×
ボウルビィは、自身が提唱した愛着理論の中で、愛着の発達段階を次のように分類しました。
分離不安や人見知りがみられるのは、以下の分類の第2段階(生後3か月頃~6か月頃)です。
なお、分離不安とは、愛着ある人や家から離れることに対して強い不安を抱いてしまうことをいいます。
B 子どもが周囲のものや人に自ら関わろうとして上手くいかない時、愛着関係のある保育士の存在は、子どもにとっての安全基地となる。
正解:〇
安全基地とは、常に子どもの不安を理解し、彼らが頼りにできる大人の存在をいいます。
これは子どもたちの心の支えであり、物理的な場所としての基地を築くこととは異なります。
子どもたちが不安な時に、保育士に自分の感情や体調を共感してもらうことによって、
子どもの中に安心感と信頼感が醸成されます。
これを繰り返すことによって、安全基地が確立されていきます。
必要な時に頼れる存在がいることによって、
子どもたちはさまざまなことに取り組む勇気を持つことができます。
C エインズワース(Ainsworth, M.D.S.)はアタッチメント(愛着)の個人差を調べるために、ストレンジ・シチュエーション法を考案した。
正解:〇
ボウルビィの愛着理論に基づき、
エインズワースらは愛着の個人差についての実験(ストレンジ・シチュエーション法)を行いました。
この実験では、乳児を実験室に入れ、見知らぬ人に対面させたり、
養育者と分離させたり、養育者と再会させたりして、それに対する乳児の反応を観察しました。
乳児の反応は、次のように分類されました。
❶ Aタイプ(回避型)
慣れない場面や養育者との再会にも無関心で養育者との再会を避けようとする。
❷ Bタイプ(安定型)
養育者がいないと泣いたりするなど、分離不安を示すが、養育者が戻ると安心する。
❸ Cタイプ(アンビバレント型、抵抗型、葛藤型)
養育者との分離の際に強い不安や混乱を示す。養育者に再会した後も回復が遅く、
養育者を求めると同時に責めるような行動を示すこともある。
❶と❸の反応を示す場合は、愛着形成に問題があることが多いとされています。
❹ Dタイプ(無秩序・無方向型、混乱型)
後の研究で判明したタイプであり、養育者に顔を背けながら体は接近するなど、不安への対処に一貫性がない点が特徴。
D 表象能力の発達によって、愛着対象に物理的に近接しなくても、そのイメージを心の拠り所として利用できるようになり、安心感を得られるようになる。
正解:〇
表象能力とは、目の前にいないものや人などを心に思い浮かべる能力です。
2、3歳頃になると、表象能力が発達し子どもの心に養育者の姿が形成されていきます。
養育者が近くにいなくても、子どもはその姿をイメージするだけで安心できるようになります。
こうした心に形成される養育者のイメージを内的ワーキングモデル(内的作業モデル)といいます。
今回の過去問はいかがでしたか?
この問題は、保育の心理学では基本的な項目が出題されており、
ぜひとも正解していただきたい問題でした。
特に、エインズワースのストレンジ・シチュエーション法については、
各タイプの特徴を問う問題も以前出題されているので要注意です。
赤字のキーワードを押さえてそれぞれの肢の正誤が自信をもって答えられるようにしておきましょう。