旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

㊗️北陸新幹線延伸開業!

 前回まで、東京方面から見た北陸新幹線を語ってきました。直通で早く行けて、北陸での活動範囲が広がり、首都圏の観光客・ビジネス客にはメリットが大きいと受け止められています。
 しかし、他の地域-特に、関西・中京方面から見た北陸新幹線とは、一体どうなのでしょう?私は首都圏在住なので、つい首都圏側からの観点で見てしまい、関西・中京圏の声を忘れてしまいがちです。そこで、地元マスコミ等の記事をいくつか読んでみました。すると、なかなか微妙な空気があることが感じられます。

4.速いが高いし面倒が増す?
 まずは、北陸新幹線金沢〜敦賀延伸開業前と開業後のデータを見てみましょう。
❶時間短縮効果
 ・大阪発
  延伸開業前より、福井までは3分短縮、金沢までは22分短縮、富山までは29分短縮
 ・名古屋発
  延伸開業前より、福井までは3分短縮、金沢までは16分短縮、富山までは23分短縮
 大阪、名古屋とも、富山・金沢行きは一定の時短効果があります。福井までは3分の短縮なので、ほぼ開業前と変わりません。
 これより重大と思われることは、以下の2点。
❷運賃料金アップ
 延伸開業前と開業後の運賃・特急料金の差額を見てみましょう。
 ・大阪発
  福井まで 6,140円→7,290円(1,150円アップ)
  金沢まで 7,790円→9,410円(1,620円アップ)
 ・名古屋発
  福井まで 5,810円→6,960円(1,150円アップ)
  金沢まで 7,460円→9,080円(1,620円アップ)
 新幹線の特急料金は割高ですし、2本の列車を乗り継ぐことになるため、どの区間でも料金がアップします。実は、関西・中京方面から通常に料金を計算すると、これよりももっと高くなります。さすがにJRも気が引けたのか、敦賀で改札を出場せずに乗り継ぐときには、料金を割り引いています(従来の「乗継割引」ではありません)。上記は、その割引料金をもとに計算しています。
❸金沢方面直通特急列車の廃止
 延伸開業前には、大阪発が1日に25本、名古屋発は1日に15本の特急列車が運行されていました(いずれも臨時列車を除く)。北陸本線内は1時間に何本も特急が運行され、「特急街道」と呼ばれもしました。和倉温泉まで直通する列車もあったのです。
 しかし延伸開業後は、大阪発、名古屋発とも、直通列車はすべて廃止され、敦賀駅で乗り換えることになります。和倉温泉までは、2回の乗り換えになります。
 う〜ん、関西・中京にお住まいの方は、どう受け止めておられるのでしょうか。たとえば福井までは3分だけの時短効果しかないのに、金額アップ、乗り換えの手間を考えると、心理的には遠くなった気がしないでもなく・・・関西・中京在住の方は悩ましいところですね。
❷北陸の温泉はバスで?
 これほどの人気観光地に、なぜ直通列車を少しでも残さなかったのでしょう? 家族連れ、団体客は乗り換えが少ないほど助かるものです。
 芦原温泉、加賀温泉郷は「関西の奥座敷」として賑わう、北陸を代表する温泉郷です。首都圏からはまちがいなく観光客が増えるでしょうが、関西・中京方面からの客足に影響が出ないか気になります。特に、団体旅行で乗り換えがあると、添乗員は非常に気を使うものです。誘導、人数確認などの手間で、個人の倍くらいの移動時間を見込まなければなりません。
 敦賀駅の標準乗り換え時間は「8分」となっています。私は実際の駅を見ていないのでわかりませんが、1階(在来線ホーム)から3階(新幹線ホーム)まで団体が移動するのに大丈夫なのかな?と心配になります。1本列車に遅れたら、大惨事です。
 結局、手間いらずということで、団体旅行は今まで以上に貸切バスの利用が増えるのではないでしょうか。

 せっかくの延伸開業に水を差すような内容になりましたが、全然そういう気持ちはなく、北陸路の観光地は全力で応援しています。今回は、地元紙で拝見した不安や懸念を参考にしました。
 カニの美味しい季節です。北陸へ行きましょう!