実務家密着取材

直撃インタビュー
行政書士 中谷綾乃さん

行政書士   中谷綾乃 さん

1970年千葉県生まれ。1989年に高校卒業後、広告代理店、ギャラリー、医療秘書などの勤務経験を重ねる。2003年に中谷行政書士事務所を開業。2006年にCTC行政書士法人を設立し、代表社員に就任。
CTC行政書士法人のホームページは下記のとおりです。
URL : http://www.ctc-cc.jp


行政書士は、迷える人たちの道先案内人。
法律用語を顧客目線で“翻訳”し、サポートする知的な肉体労働者。

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回はCTC行政書士法人の代表である中谷綾乃さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


行政書士は、行政書士法に基づく国家資格者です。役所に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成等を行いますが、書類の数は約3000種類あると言われています。弊社で取扱いが多い案件は、建設業、運送業、自動車の登録・車庫証明、相続関係です。当事務所の行政書士は有資格者を含めて6名おります。それぞれ得意分野がありますので、チームに分かれて作業をしています。

行政書士は“書類作成の専門家”と言われていますが、実は書類関係は誰でも作れます。私たちは書類作成以前のコンサルティング、お客様の問題を迅速に解決へ導くことが一番重要な仕事だと考えています。特に法律用語というのは一般市民に馴染みのない言葉が多く、分かりにくかったりします。そこで行政書士が窓口になり、弁護士や司法書士、税理士、社会保険労務士などの専門家とお客様の間に入り、ワンストップサービスを提供しています。


デスクで作業をする中谷さん。

デスクで作業をする中谷さん。


行政書士の資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか


離婚がきっかけです。結婚してから病院で医療秘書をしていたのですが、離婚して実家へ戻ることとなり、病院を辞めることになりました。病院では、医師や看護士、検査技師等の専門職の女性達が活躍しており、人の役に立つ仕事への憧れがありました。そこで離婚を機に「資格を取ろう!」と一念発起し、はじめは宅地建物取引主任者を取りました。宅建の勉強をするうちに民法に興味がでてきて、いろいろと調べるうちに行政書士という仕事があることを知り、その当時、法曹関係の事務所を舞台にしたドラマや映画を観たこともあり、「私もやりたい!」と行政書士を目指しました。

大人になってから勉強は、すごく新鮮で、新しい知識を身につけることがとても楽しかったです。世の中には法律は難しいと感じてらっしゃる方が多くいらっしゃると思います。また、「弁護士と話すと法律用語が多くわかりにくい」「専門家と直接話すのにはハードルがある」というお客様の声を耳にすることがよくあります。難解な法律や許認可等について、お客様と同じ目線で“通訳”することが行政書士の仕事の醍醐味だと思います。


バッグに常備しているのは、手帳と名刺ケース、携帯電話。

バッグに常備しているのは、手帳と名刺ケース、携帯電話。


どのように仕事を進められたのでしょうか? また報酬について教えてください


開業当初は、何をしたらよいのかわからず、県や支部の研修会や会合があれば出来るだけ行くように心がけました。そのうちに、「どの先輩が得意な分野は何か」ということが分かるようになってきました。営業は好きな方でしたので、仕事を取ってくると、その分野が得意な先輩にお願いして、アシスタントにしていただき、さまざまな業務を覚えました。また、ホームページを開設し、当時出来たばかりの新しい法律「中小企業挑戦支援法」「新事業創出促進法」などの“確認株式会社”に的を絞った専門サイトを立ち上げました。それから定期的に仕事がくるようになり、月70〜100万くらいの収入を得られるようになりました。自宅ではお客様に来ていただくことも難しいため、オフィスを構えることにしました。行政書士という仕事は本当に業務範囲が幅広く飽きません。行政書士にならなければ、私が会社を立ち上げることもなかったと思います。さまざまな方との出会いもありますし、変化に富んでいるのが最大の魅力です。

報酬については、業務によって様々です。車庫証明から許認可まで、それぞれ単価が違います。お客様は、インターネットで報酬については事前に調べているケースが多いので、わかりやすい報酬となるよう心掛けています。事前に見積を提示し、了解を得てから業務に着手するようにしています。作業量と報酬が比例している職種だと思いますので、儲かるというよりも数をこなして稼いでいく知的な肉体労働者だと思います。


使いこまれた六法全書には付箋が。

使いこまれた六法全書には付箋が。


仕事をスムーズに進める上で心がけていることは何でしょう


仕事をする上で心掛けていることは、お客様目線に立つことと、スピードです。それから、行政書士の仕事は業務が多岐にわたるため、ノウハウの蓄積が大切だと思っています。そのためには、一人の力では限界があると思い、2006年にCTC行政法人を設立しました。

最近は企業のモラルやコンプライアンスが厳しくなったこともあり、法人からの仕事が増えました。「不況に弱い」と言われますが、不況なりの仕事があります。不況をチャンスと捉え、前向きな提案をお客様に出来るよう、情報収集に力を入れています。行政書士という仕事は地味で、地道な仕事ですが、奥が深く日々勉強が欠かせません。世の中の動きを見極め、行政書士が必要とされる役目を果たせるよう、自らの能力を高めていくことが大切だと思います。


11人のスタッフが勤務しており、大半は女性。

11人のスタッフが勤務しており、大半は女性。


今後の目標について教えてください


今後は事務所を拡大することよりも、質を高めていきたと思っています。事務所を整備し、Pマークの取得など、お客様に信頼される要素をもっと増やしていきたいです。また、人は宝ですので、スタッフの働く環境をもっと良くしていきたいです。弊社はいい人に入っていただき、本当に助けられています。チームでやっているからこそ、出来る仕事もたくさんあります。本当に私1人の力は微々たるものです。私の持論ですが、「人は育てられるものではない」と思います。私と一緒に仕事をしてくれている人たちは、もともと素質や能力がある人たちです。縁あって、一緒に仕事が出来て、本当にラッキーだと思っています。いい人材に集まってもらえるいい会社になるよう、私自身も努力しなければならないと思います。行政書士の業務はもちろん、経営の勉強をして、一緒に走ってもらえるように環境を整え、努力していきたいと思います。


「画家である母の描いたものです。生花の代わりに花の絵を」

「画家である母の描いたものです。生花の代わりに花の絵を」


行政書士はひとつの資格業として、本気で取り組む価値があります。本気で取り組めば、食べていけます。まだまだ未開発のフィールドはたくさんありますので、ご自身の経験や強みを活かせる分野を確立して頂ければと思います。私は、自立してがんばっている女性の先輩方に勇気を貰ってこの仕事を得ることが出来ましたので、私自身も自立を目指す女性たちに少しでも勇気を与えられるような存在になれたらと思って仕事に励んでいます。『善は急げ』。目標に向かって本気で頑張ってください!


行政書士   中谷綾乃 さんの、ある1日


ある日のスケジュール

5:00

起床

ストレッチし、朝食

8:30

出社

メールチェック

9:00

打ち合せ

社内ミーティング、弁護士と電話ミーティング

10:00

個別相談

相続の相談、打ち合せなど

14:00

外出

司法書士事務所にて許認可ミーティング

18:00

社内作業

事務所に戻り、メールチェック

20:00

退社

クライアントと食事

24:00

就寝