簿記講座の講師ブログ

目的と手段 -新型コロナウィルス対策に見る思考-

皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。

春にはなりましたが、心は…。何とか、
この難局を乗り切っていきたいものですね!

簿記は、「企業内部の人が企業を管理することができる情報を作る」
ことを目的に行われます。ある「目的」があって、
その目的を達成できるような「手段」が使われるわけです。

とても当たり前の話です。
でも現実社会では、この原則をうまく動かすことがとても難しいようです。

4月7日、大都市圏で緊急事態宣言が発出され、それに基づき、
各自治体が休業要請など様々な施策が始まりましたが、
休業要請の対象・方法など様々な議論を呼びました。

安倍首相(国)はできる限り休業対象を減らして経済を
維持したいと考えている(ように感じる)
一方、小池都知事(自治体)はできる限り多くの企業に
休業してもらって感染者を減らしたいと思って(いるように感じる)います。

それに対して、多くの国民は「政府の無策は酷い。
政府は邪魔するな!」と声を上げています。
全く、かみ合っていないわけです。

感情はちょっと置いておくとして、
この現象を「目的」と「手段」の視点から見ると、
両者の食い違いが分かるような気がします。

まず、前提として、「緊急事態宣言」は「手段」に位置付けるとします。
では、「目的」は何でしょうか?

安倍首相(国)は「ワクチンができるまで1年以上かかるのだから、
根本的に短期に終息させるのは無理。
外出制限などで長期的に経済活動を止めることは無理。
とすればできることは(NYのように)医療崩壊が起きないようにするだけ。」と
考えているようです(これまでの発言から)。
  
目的:医療崩壊を起こさないこと
手段:緊急事態宣言

だから、医療崩壊を起こさない程度の感染者の発生は許容するということになります。
外国の状況を見て、外出制限をしても感染者をゼロにすることは
できないと考えているのかもしれません。

一方、小池都知事(自治体)は
「短期的に感染者がいない状態を作る。」ことを目的としているようです。

目的:感染者をゼロにすること
手段:緊急事態宣言

だから、感染者をゼロにするために人と人の接触を
できればゼロにしたいため、休業要請などを考えることになります。
 
このように、短期的に終息できるかどうかに関する見解が異なるため、
それが異なる「目的」となっています。

そして、異なる「目的」のために、同じ「手段」を使おうとしているのですから、
話がかみ合わず、「手段」の使い方が違ってくるのは当然です。

「目的」が違う以上、おそらくどれだけ話し合っても、
首相と都知事が「一致団結して頑張ろう!」という状態になるのは難しいかもしれません。

今回の問題は感染すると命に関わる問題ですから、
多くの国民は小池都知事が考える枠組みが望ましいと考えているようです
(だから、安倍首相への批判のほうが圧倒的に多いですね。というか、批判を超えてる!)。

今後、様々な施策が実行に移されていくと思いますが、我々市民は、
その施策の「目的」がどこにあるのかを理解しながら行動しなければ、
期待される効果をあげられないという点をしっかり意識しておかなければならないようですが、そこまで考えなきゃいけないのはちょっと酷ですよね?