簿記講座の講師ブログ

再・減資しちゃダメなの?

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 まだまだ寒い日が続きます。皆さん体調管理には十分気をつけて!

 昨年の今頃、毎日新聞社が資本金を大幅に減らす(41億円から1億円へ)と発表しました。その後も続々と減資する企業があり、東京商工リサーチ調べによると、21年度上半期に684社が資本金を1億円以下に減資しました。

 では、資本金を減らすってどういうことでしょう? 実は、会社の財産的な実態は何も変わらず、「資本金」という名前(勘定)を「その他資本剰余金」という名前(勘定)に変えるだけです。帳簿上の操作なんですね。
 多くの方が「資本金が多い会社はたくさんお金を持っていて、安全な企業なんだ!」って誤解されているケースが多いようですが、資本金は、過去のお金の集め方であって、今持っているお金ではありませんから、資本金が大きいからといって安全な企業であるとは限りません。資本金の大小と、経営危機のレベル・持っている現金の額は関係ないんですね。

 では、何のために減資するのでしょう?
 それは主に税務面のメリットです。
 法人税法では資本金1億円以下の会社を中小企業と呼んでいて、優遇されます。
 会社の所得には税率23.2%の法人税がかかりますが、中小企業なら所得800万円まで15%しか課税されません。
 ただ、法人は儲けていなくても一定額の税金を支払う必要があります。資本金1億円を超えると、所得だけでなく、給与と支払家賃の合計額、資本金にも課税されてしまいます。これを外形標準課税といいます。ある程度の規模(資本金)があって、給料や家賃をたくさん払っているんだったら、少しくらい税金払う余裕はあるでしょ?というわけです。

 「税制の優遇を受けるために資本金を減らすという帳簿上の操作を行う」というと、何だかなぁって感じもしますが、企業は生き残りをかけて活動しなければなりません。つぶれてしまっては社員に給料を払うこともできないし、納税することもできません。ですから、個人的には、企業は雇用する・納税するという社会貢献もしなきゃいけないけど、使えるルールは使ってもいいような気もします。
 難しい選択なんだと思いますが、生き残ることも必要です。だったら、使えるルールは適切に使うという考え方もありかもしれませんね。