簿記講座の講師ブログ

円安ならば株高になるはずなのに…

 皆さん、こんにちは。
 簿記講座担当の小野です。
 春本番! 眠くならないように!

 ここ最近、円安が猛烈に進んでいます。2021年中は1ドル110円程度で推移していましたが、ここ最近は1ドル130円程度まで円安が進んでいます。
 これまで大きく円安が進むと株価が上がっていました。例えば、次のような感じです。

 ・2012年:野田総理が解散し、自民党が政権奪取 円4%安、株10%アップ
 ・2013年:日銀が異次元緩和を導入       円6%安、株12%アップ
 ・2014年:日銀が追加緩和を決定        円7%安、株11%アップ
 ・2022年:ロシアのウクライナ侵攻       円13%安、株1%アップ

 今回は円が大幅に安くなってしまったにもかかわらず、株価はほとんど動きませんでした。これまでは、円安になると、輸出が多く、対外債権(アメリカ国債など)を多く持っている日本は有利な立場になるため、株価が上がっていました。日本は2012~2014年を除いて貿易黒字を維持していますし(輸入より輸出が多いということ)、外国に対する純債権が350兆円ほどあります(対外資産が1,146兆円、対外負債が789兆円)。ですから、円安になれば「貿易収支×円安分」だけ日本円での取り分が増えますし、「350兆円×利子率×円安分」だけ受取利息・配当金が増えます。貿易をしているのは企業ですし、対外債権の大部分を持っているのも企業ですから、円安になれば日本企業にとって有利な状況ですから、株価が上がっていたわけです。

 しかし、今回は円安になっても株価は上がりませんでした。
 その原因の1つはエネルギー・食料価格が上がりすぎていることでしょう。天然ガスや小麦などの輸入量は増えていませんが、輸入単価が暴騰したため、輸入額が大きく増加しました。輸出額はそれほど変わりませんので、エネルギー・食料の暴騰分が貿易収支を減らしてしまったわけですね。少なくとも数年は、ロシアからの天然ガス・小麦輸入が復活する可能性はないでしょうから、この傾向はこのまま続くでしょう。

 また、海外は数十年ぶりのインフレに見舞われている(アメリカやイギリスのインフレ率は6~7%!)ため、中央銀行が市場利子率を少しずつ上げています。金利が上がると債券価格が下がります。ですから、日本が持つ対外債権についても評価損が発生してしまっているはずです。

 このように、今回は円安になっているにも貿易収支と対外債権にマイナスの影響を与えてしまっているため、企業の株価が上がらない状況となってしまっています。

 でも、この状態で円高に戻ってもあまりいいことはなさそうだし、過去にあまりない状況になっていることは確実でしょう。

 次から次へといろいろな難題だらけですね。