簿記講座の講師ブログ

のれんは非償却?

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 秋も深まってきて、寒い日が増えてきました。皆さん体調管理には十分気をつけて!

 IFRS(国際財務報告基準)で、長年にわたって、のれんを償却するかどうかが議論されてきましたが、つい先日、償却しないことに確定しました。
 現在、日本の会計基準ではのれんを計上すると、その後20年以内に、毎年均等額以上の償却をしなければなりません。2級でも企業を買収・合併した場合、子会社化した場合にのれんが計上され、それが償却される問題が出題されますね。
 しかし、IFRSではのれんを償却しませんでした。ただ、のれんは時間の経過とともにその価値が小さくなっていく可能性が大きいので償却すべきであるという意見も多かったことからIFRSのルールを変えるかどうか議論されてきました。その結果、「やはり償却は不要」という結論になりました。ちなみにアメリカものれんを償却しません。ただし、のれんの会が減少したときには評価損(減損損失)を計上します。

 ここで問題となるのは、IFRSを使っている企業と日本基準を使っている企業の比較です。
 例えば、ソフトバンクはIFRSを使っていて、総資産47兆円のうちのれんは5兆円です。ただしソフトバンクの資産の多くは傘下のビジョンファンドなどが有する20兆円ほどの有価証券を除くと、ソフトバンクの総資産は約25兆円で、そのうちのレンガ5兆円ほどを占めることになり、資産の約2割がのれんということです。
 売却して収入を得ることができないのれんという資産が5兆円あり、それが総資産の2割を占めるわけです。

 ソフトバンクがのれんを償却する場合、20年で償却するなら年間の償却費が2,500億円、10年で償却するなら年間の償却費が5,000億円となり、その分だけ利益が減少します。年間、2,500~5,000億も利益を変動させてしまうわけです。ですから、ソフトバンクと同業者を比較する場合には、こののれん償却の存在を頭に入れておかなければ、利益の比較が意味を持たなくなってしまいます。

 では、今後日本企業はどのように動くでしょうか?
 のれんを多く計上している企業はIFRSを採用すれば、それだけで利益を増加させることができます。日本基準とIFRSでは違いが多いので、現在に本基準を使っている日本企業がIFRSに変更することはかなり大変かもしれません。しかし、年間1,000億円単位で利益を増加できるようになればどうでしょうか? 今後の日本企業の動きに注目です。