簿記講座の講師ブログ

N分N乗はどうなった?

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 寒くなったり、温かくなったり、体調管理には十分気を付けて!

 一時期、「少子化対策のためにN分N乗方式による課税を導入すべき」という議論が盛んになっていたようですが、ここ最近はピタッとなくなりました。どうなったのでしょう?

 N分N乗方式は、子育て支援のための一施策として導入が叫ばれました。課税所得をいったんN分の1し、N分の1の所得額に適用される税率で所得税を計算し、その所得税額をN倍する方法です。例えば、課税所得が350万円(給与収入600~650万円くらい)だとすると、
  所得税額=350万円×20%-42.75万円=27.25万円
となります。
 これに例えば4分4乗(4人家族の場合の数値)が適用されると、
  課税所得を1/4:350万円×1/4=87.5万円
  そのときの所得税額=87.5万円×5%=4.375万円
  実際の所得税額=4.375万円×4=17.5万円
となります。
 このように、課税所得が350万円くらい(給与収入が600~650万円くらい)の方の場合、N分N上方式の導入によって、所得税額が10万円ほど安くなります。子育て世帯は共働きが多いので、夫婦それぞれにこれが適用されるとそこそこの支援になるのではないかということです。

 しかし、もうお気づきの方も多いでしょう。給与収入(要するに年収)600~650万円くらいの方だったら、そもそもの所得税率が20%ですから上記のような税優遇につながりますが、給与収入がもっと低ければそもそもの所得税率が低いので、どれだけN分しても、税率が下がらないケースが多くなる=税優遇にはつながらないということです。日本の納税者のうちの6割が所得税率5%適用者です(実は、日本人の半数以上が、5%という最低税率が適用されているにもかかわらず、何でしょうね、最近の重税感は・・・)。よって、6割の人々はN分N乗の恩恵を受けることはできません。N分N乗の恩恵を受けるのは、給与収入が高い人たちだけです。

 児童手当に所得制限をかけるべきかどうかというアンケートに対して、現役の子育て世代の6割が「かけるべき」と答えました。N分N乗方式の話しも、上記のような詳細が説明されるとピタッと議論されなくなりました。現役の子育て世代は「苦しい人だけ助けて、苦しくない人は助ける必要がない」という考えを貫いているようですね。子育て世代の中で分断が起きないことを願うばかりです。