簿記講座の講師ブログ

交流の大切さ

 皆さん、こんにちは。
 簿記講座担当の小野です。
 暖かくなったり、寒くなったり。絶対に体調は崩さないように!

 厳しい時代が続いています。
 少子化はあらゆる想定を上回って進んでいますし、社会的・経済的な格差もどんどん開いています。どちらに対しても様々な取り組みが行われていますが、なかなか効果を発揮できていませんが、一部、高等教育の無償化が少し効果を発揮しているようです(授業料無償化の対象となる所得階層の進学率が10ポイントほどアップしているそうです)。

 そんな中、注目に値する論文が発表されました。
 ハーバード大学のラジ・チェティ教授の研究によると、アメリカでは、所得階層間の交流が盛んな地域ほど、低所得の家庭に生まれた子供が、成長後により高い所得階層へ上方移動している割合が高いということが明らかにされました。例えば、この研究で、階層間の交流が最も盛んな状態にあるとされるサンフランシスコでは、上方移動の割合が最も高いという結果が示されました。

 この研究では、交流を集団要因(学校や宗教組織など社会集団の中での交流)と友人関係要因(個人的な交流)に分けて、分析されました。また、所得を収入だけではなく、人的ネットワークや学歴など無形のものを含めて定義しています。分析の結果は、集団要因の影響が大きい地域ほど、その地域で育った子供の所得階層が上がるというものでした。

 言われてみると当然でしょうか。収入が多く人的ネットワークが豊かな家庭に生まれた子供にはたくさんの知識・経験が蓄積されるでしょう。一方、収入が少なく人的ネットワークも少ない家庭では休日の過ごし方もワンパターンになりがちかもしれません(先日、日本の子供の3割は、休日に、学校に関連しない活動をしない。例えば、日本の子供の3割がここ3年間、家族旅行に行っていないという調査結果が公表されていますね)。そんな状況の中、高所得階層の子供と低所得階層の子供が交流したら、低所得階層の子供が刺激を受けることは必至でしょう。

 ここでのポイントは社会的な活動において、高所得階層の子供と低所得階層の子供が、障害なく交流できるシステムを作ることです。学校にあらゆる階層の子どもたちが集まっても、子どもたちが学校の中で階層ごとの小集団を作ってしまっては意味がありません。校区、入試、クラス分けなど様々な局面で、交流の障害をなくすことが政策当局の仕事なのです。より多くの人々が高所得階層になれば社会全体が豊かになり、結果として、現在高所得階層にいる人々にもさらなる恩恵が与えられる可能性は高いでしょう。

 日本では、東京での私立中学校進学率が高まっています。これは階層間の交流を遮断する要因となってしまうかもしれません。中間層の充実が求められている現在、ラジ教授の研究は示唆に富んでいますね。