簿記講座の講師ブログ

消費税で賄えないかな

 皆さん、こんにちは。
 簿記講座担当の小野です。
 春本番! 眠くならないように!

 政府が異次元の少子化対策を進めています。その政策にはお金がかかり、そのお金をどこから持ってくるのかをはっきりさせないといけません。例えば、政策に5兆円かかる場合、今の政府支出をいくら削って、〇〇税をこれだけ増税して、・・・という話をしなければなりませんよね。
 
 そこでポイントとなるのはこの政策の理念でしょう。想定以上に少子化が進み、国の存立さえ脅かされる(他の国から乗っ取られる?)可能性がある今、少子化対策はかなり優先順位の高い事項です。そこで、政府は少子化対策を「社会全体で子供を育てる政策」と位置づけました。とすれば、社会全体で、平等にそのコストを負担すべきです。

 実際には、医療保険料に上乗せしてそのコストが徴収されることになりました。日本は国民皆保険の国ですから、医療保険料が増額されれば、国民全員が負担することになり、とても平等に見えます。でも、平等の意味次第ですが、もしかするとあまり平等ではないかもしれません。
 
 まず、医療保険に入っている人が、全員一律で、年間30,000円支払う(年間保険料が30,000上乗せされる)ことを考えてみましょう。元々の医療保険料は収入に保険料率を乗じた額が徴収されていますので、定額徴収で30,000円だけ医療保険料が増えるというのは、低収入の人にとってキツいやり方となります。定額という面では平等ですが、高収入の人を優遇するやり方になると言えるでしょう。

 次に、現在の保険料率をアップさせる方法はどうでしょう。例えば、企業の健康保険組合の保険料率は約9%が標準ですが、これを10%にするわけです。同じ料率でも、収入が多いと支払う保険料は多くなります。収入が多い人には多く負担してもらうという、税の基本的な考え方である垂直的公平性に合致しますから、望ましいやり方かもしれません。
しかし、サラリーマンが入る企業の健康保険組合の場合には収入の一定割合が保険料とされるのに対し、年金受給者や自営業者が入る国民健康保険の場合には所得(収入-所得控除)の一定割合が保険料とされる点を見逃してはなりません。つまり、同じ収入・保険料率であっても、年金受給者や自営業者の負担額はサラリーマンの5割〜7割位になります。しかも、九六四(クロヨン)や十五三一(トーゴーサンピン)と言われるように、自営業者が申告している収入は正確でないという話もあり、その分だけ平等から離れていきます。

 では、消費税だとどうでしょうか?消費税は消費額の10%徴収されます。消費は収入だけでなく、貯蓄にも影響されます。つまりその人の経済状況をより反映しているのが消費です。もちろん、貯蓄がなく収入が少ない人にとって消費税が上がるとキツいやり方になるかもしれません。しかし、経済的に豊かな人からより多く徴収しやすくなり、医療保険料上乗せ方式よりよっぽど平等に近いのではないかと思うのです。

 少子化を止めることが優先的な政策であれば、そのコストを誰かが負担しなければなりません。全員が納得する徴収方法はないでしょうから、どこかで妥協しなければいけません。そうであれば、消費税アップが一番いいと思うのです。

 あるいは、密かにですが、「もう少子化対策はしない」というのもアリかなと思っています。今まで散々やってきたはずですけど全く効果がないのですから、もう諦めて、日本崩壊直前まで放置して、明治維新や戦後復興のような奇跡に賭けるというわけです。といいながらも、でもそれはできれば遠慮したいかな。