簿記講座の講師ブログ

値上げとインフレ、どっちが先?

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 海の日まで祝日なしで続くこの時期。キツイですが何とか乗り越えていきましょう!
 
 世の中、物価上昇(社会全体での様々なモノ・サービスの価格上昇)がとまりません。
 一般には、様々なお店で売られている様々なモノ・サービスが値上げされるから、社会全体でもインフレになると思われているかもしれません。

 例えば、庶民の味方、そしてファミリー世帯の強い味方のマックでも、かなり値上げされています。ビッグマックは390円(2022年9月まで)→410円(2022年9月から)→450円(2023年1月から)と、約15%値上がりしてきたところ、さらに2023年7月から、都心のお店では500円(準都心のお店では470円)に値上げされます。その主な理由は人件費、エネルギー価格、賃料の上昇にあるそうです。

 日本だけではなく、世界中で、表向きは、コストアップを理由とした値上げが行われていて、大変な物価上昇になっています。欧米では10%前後のインフレが続いていますね。

 そんな中、面白い研究が発表されました。そのタイトルは「空前の企業利益は最近のインフレにどれほど貢献したか」というものです。タイトルだけ見ると、「なぜインフレで儲かるの? だって、企業は、コストが高くなりすぎたからそれを賄うために値上げするんでしょう?」と思ってしまいます。

 でも、この論文では、値上げ幅のうち、人件費分は1割、エネルギー・材料費分が4割、利益分が5割と分析されました。上で挙げたビックマックの値段に当てはめてみましょう。ビックマックは390円から500円に、110円値上げされました。このうち人件費分は11円、エネルギー・材料費分が44円、残りの55円はマックの利益になるということです。もちろん、論文での分析は値上げ全体の平均値ですから、マックの数字がそのまま当てはまるというわけではありませんが、社会全体としてはこんな傾向にあるということです。

 つまり、ここ最近のインフレは、様々なコストがアップした結果としての仕方ない値上げからもたらされたのではないということです。企業が、意図的に利益を上乗せした値上げを行った結果、様々な財・サービスの価格が上昇し、その財・サービスを使っている企業がコストアップを理由に、さらに利益を意図的に上乗せした値上げを行うということがかなり反映された結果のインフレである可能性が高いということです。
 インフレが起こったから様々なモノ・サービスの値段が値上げされたのではなく、モノ・サービスの値段を必要以上にアップさせたからキツいインフレになったというところでしょうか。

 それで納得がいきました。最近のインフレで厳しい経営状況が続くと言いながら、多くの企業で過去最高益を更新しています。そして、法人税の納税額も順調に伸びています。また、インフレで名目上の消費額が増えたからでしょうか、消費税の納税額も順調に伸びています。
 よく「インフレ税」という言葉が使われますが、まさに、今、私たちにはインフレ税が課されているんですね。意図的な値上げであるとしても、実際に給料が増えている人たちも多くいるみたいですし、税収も増えているし、いいことなのかもしれませんが、そのあたりの恩恵を得られていない私個人的には、ちょっと微妙な感じです…。