簿記講座の講師ブログ

退職金課税 格差を是正

 皆さん、こんにちは。 
 簿記講座担当の小野です。
 湿っぽい日が多くなってきました。体調管理にはお気を付けて!

 働き方改革が進んでいます。その一環として退職金に対する課税額の計算方法を変えようとしています。
 退職金は退職時に一括で受け取るケース(退職一時金)と、数年で分割して受け取るケース(退職年金)があります。退職一時金の場合、その課税額は次のように計算します。

  税額=(退職収入-退職所得控除)×1/2×(所得税率+住民税率)
   ※退職所得控除
     勤続20年以下:40万円×勤続年数
     勤続20年超 :800万円×40年×(勤続年数-20年)
 
 この式からも明らかなように、勤務年数が長くなるほど退職所得控除が大きくなるため税額が小さくなります。その分だけ手取り額が大きくなりますね!特に勤続20年を越えると控除額が一気に大きくなるため、手取り額に大きな影響を与えることになります。
 政府は、働き方改革を進める中で、この点が、転職のハードルになっている(問題点①)と考え、そして転職が多い人と少ない人の課税上の公平性を考え(問題点②、改善することとしたようです(ただし、まだ具体的な計算方法などは明らかにされていません)。

 上記の議論は、働き方改革を進めるために転職しやすい社会を作ることが前提となっていて、退職金課税の変更はその一手段として位置づけられています。仮にそれが正しいとして(私は退職金課税が転職のハードルになっているわけないと思いますが・・・)、どんな計算方法が転職のハードルを低くして、かつ、公平な課税になるでしょうか?

 ここでポイントになるのは、様々な制度では、退職金が給与の後払いと位置付けられているということです(簿記2級でも退職金に関する処理の前提ですよね)。とすれば、問題点②を解決する最もシンプルなやり方は、毎月の給料に対する課税と同じように退職金に課税することでしょう。そこで勤務期間にわたって退職金を分割して、各年度に少しずつ給料をもらっていたと考えて課税額を再計算すればいいのではないでしょうか。
例えば、10年勤務した人が300万円の退職金をもらったとしましょう。この場合、この人は過去10年間に毎年30万円ずつの給料をもらっていたとして再計算するわけです。そして、②の公平性を重視するならば、退職金の総額に対して課税すべきです。退職金は給与と同じであり、すでに給与計算時にサラリーマンの経費である給与所得控除が差し引かれているからです。このように計算すると②はクリアできますし、自動的に①もクリアできますね。

 でも、「そもそも退職金への課税が優遇されているのは、退職金が老後資金の性質を持つからだ」と反論されるかもしれません。それに対しては「時代は変わって退職金だけが老後資金ではない時代になった」と答えるしかありません。今回の改正は「転職しやすい社会を作ること」が目的であり、(特に若いときの転職の際の)退職金が老後資金であるというのは無理があります。30歳の転職時に老後のことまで考えないでしょう。仮に退職金を老後までとっておくなら、NISAやidecoで税を優遇してもらえるのでそれで十分でしょう。

 まぁ、どんな改正をしても、どこからか意見が出ることは間違いありません。そして改正すれば、計算が今より面倒になるでしょう。だからいっその事、改正しないのが最善だと思うのは私だけでしょうか。