簿記講座の講師ブログ

リース会計基準の変更

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 暑い日の中、突然涼しい日があったり。絶対に体調は崩さないように!

 先日、新しいリース会計基準(案)が公開されました。
 現行のリース会計基準では、2級で出題されているとおり、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分けて処理されています。ファイナンス・リースはそのリース物件を購入したかのように処理し、オペレーティング・リースは賃借処理(支払リース料の計上のみ)を行います。
一方、新しいリース会計基準(案)では、リース物件をモノとして扱うのではなく、リース取引でリース物件を使う権利を手に入れたと考えて、原則として、すべてのリース物件を資産(使用権資産)として扱うことになります。耐用年数のほとんどの期間にわたってリースした場合でも、短期間リースした場合でも、いずれも「使用権資産」という資産を計上することになります。例えば、耐用年数5年の備品(見積現金購入価額\1,000,000)を2年間リースした場合には、(リース会社との契約にもよりますが)おそらく\400,000~\500,000の「使用権資産」が計上されることになります。
 これにより、リース条件を微妙にいじることによってファイナンス・リースにならないようにする操作がほとんどできなくなり、リース物件のほとんどが貸借対照表に計上されることになるでしょう。国際的な会計基準では、「使用権資産」を計上することが一般的であり、おそらく新しいリース会計基準(案)が正式なルールとなるでしょう。

 新しいリース会計基準(案)で大打撃を受けるであろう業界が不動産業界です。
不動産業界では、土地を所有している人にアパートを建てさせ、そのアパートを10年間一括で借り上げて、入居者に貸し出すようなビジネスを行っている企業がたくさんあります。通常、アパートなどの建物の耐用年数は30~40年(木造か鉄骨かによって異なる)ですから、10年借り上げてもオペレーティング・リースでした。そのため、貸借対照表には貸し出しているアパートが建物として計上されることはありませんでした。
例えば、株式会社レオパレス21の2023年3月の貸借対照表に計上されている建物は19,165百万円(資産総額166,548百万円)なのに対して、貸借対照表の枠外に注記されている未経過リース料は306,978百万円です。つまり、一括借り上げに対する未払のリース料が306,978百万円(=3,069億円7,800万円)あるということであり、今後、大家さんたちに対して3,069億円支払わなければならないことが確定しているわけです。レオパレスは、今後3,069億円を大家さんに支払わなければならず、一方でそれだけの物件を10年間使い続けることができるにもかかわらず(しかもその金額は総資産の2倍!)、これらが貸借対照表に載っていないのです。

 新しいリース会計基準(案)が使われるようになると、この3,069億円が「使用権資産」「リース負債」として貸借対照表に記載されることになります。レオパレスの資産総額は166,548百万円から約466,000百万円へと3倍になります。当然ながら、負債もそれだけ多くなります。
 
 新しいリース会計基準(案)はかなりインパクトの大きな会計基準です。2級で出題されるような典型的なリース契約での簿記処理はほとんど変わりませんが、その金額がとても大きくなり、企業の経営に大きな影響を与えます。この(案)にどれくらいの意見が出されるのか注目です。