簿記講座の講師ブログ

株高で最も儲かったのは誰か

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 暑いし、ムシムシしてきたし、快適な環境を作るのが大変ですね!

 世界的な株高が続いています(7月中旬の原稿執筆時点)。
 日経平均株価は、バブル後高値の32,000~33,000円を維持して推移していますし、アメリカのダウ平均も過去最高値圏で推移しています。そして、世界で多くの人々が株高の恩恵を受けています。

 最も恩恵を受けたのは、株式を直接売買している投資家でしょう。個別の株式は値上がりしたり値下がりして、すべての株式でもうけを出せたわけではありませんが、これ以上の金利アップはほぼ考えられず、アメリカの景気も絶好調ということを考えれば、日経平均やダウに投資する投資信託・ETFを買うだけでかなりの利益を享受できたでしょう。

 その中でも長期投資家(買った株式を最低でも10年程度保有する投資家)は超絶儲かっているでしょう。例えば、日本ではリーマンショックで日経平均は8,000円くらいまで下がり、東日本大震災もあり、ずっと10,000円以下でくすぶっていましたが、安倍政権で始まった金融政策で日銀が株を買い始めたこともあり、今や33,000円です。リーマンショックのころのバーゲンプライスで株を手に入れた人々は、15年くらいで資産を3~4倍に増やすことに成功したわけです。
 どんな人が長期投資家なのか。そう。今の日本では日銀です。本来、中央銀行が民間企業の株(や国債)を買うことは禁じ手ですが、リーマンショック後の日本経済を立て直すためにはそのくらいのことをしないとどうしようもありませんでした。
 そこで日銀が株式を買って株価を何とか維持してきたわけですが、ここにきて日銀が所有している株式の価値が爆上がりしています。日銀が特定の民間企業の株式を狙い撃ちして買うとまずいことになりますので、日銀は日経平均株価を校正する225社の株式を広く薄く買っています。薄くといっても、その購入価格は36兆円! そして、その時価は今や60兆円! 日経平均が8,000円くらいのころに買い始め、少しずつ買い足していき、合計36兆円分の株式を買いました。その時価が60兆円で、東京証券取引の時価総額の約9%程度に相当します。要するに日本企業の株式の1割を国が所有しているということです。

 株を所有すれば、企業の利益に応じた配当金を受け取ることができます。その額、年間1兆円! また、日銀はその他の業務で1兆円ほどの利益を得ており、今年度の国への納付金は2兆円に上り、過去最高です。防衛増税はとりあえず延期されましたが、陰ではこういった政府の収入増もあったわけです。

 また、もう1人、巨大な長期投資家がいます。GPIFです。私たちが収めた年金保険料を運用している組織ですね。GPIFは約50兆円の日本株式を保有しています。GPIF資産全体で、累計108兆円の利益を獲得しています。もし、GPIFがなかったら、私たちは108兆円余計に保険料を払わなければならなかったでしょう。現在でも、「若い世代は年金をもらえるの?」という疑念は消えませんが、GPIFがなかったらもっとひどいことになっていたんでしょうね。

 こうやって考えてみると、株高になってくれるおかげで、私たちは払うべきものを払わずに済んでいる状態であるともいえます。そして、株高になればお金持ちの方々がたくさんの消費をしてくれて景気を良くしてくれる(はずな)ので、私のような庶民にも少しは恩恵があるかもしれません。願わくは、収入が増えた政府が、その増えた収入を無駄遣いしませんように!ってところでしょうか。