簿記講座の講師ブログ

国際会計基準とサスティナビリティ

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 秋も深まってきて、寒い日が増えてきました。皆さん体調管理には十分気をつけて!

 現在、社会におけるサスティナビリティの重要性が叫ばれており、会計の世界にもサスティナビリティ(持続可能性)が入り始めました。1970年代から私たちの社会におけるサスティナビリティという概念が提唱され始め、2015年の国連サミットでSDGsという形で結実しました。SDGsはサスティナビリティという概念を具体化した17の目標からなっていて、2030年までに達成すべき目標としてとらえられています。
当然ながら、企業も、SDGsへ対応しなければなりません。例えば、SDGsの目標の1つに「働きがいも経済成長も」という目標があります。企業にとってみれば、この目標を達成するために、「働きがいがある会社」と従業員が思ってくれなければなりません。ですから、企業は、様々な側面から従業員が働きやすいと思えるような環境を整えなければなりません。

注目すべきは、単なる努力目標ではなく、SDGsを達成するための制度を作っていかなければならないということです。会計の世界では、国際財務報告基準(IFRS:国際的な会計基準)を作っているIASBという機関が、SDGsを反映させたIFRSを作ることになり、2023年6月にSDGsを反映させた2つの基準が公表されました。その2つの基準は、主に、「投資家による財務報告の中でサスティナビリティに関する情報を開示していこう」という総論的なものがほとんどで、個別具体的なものはまだ少ないのですが、財務報告のなかでサスティナビリティ情報を扱うようになったこと自体がとても印象的です。

 もともと企業は株主の所有物であり、企業は株主から出資された資金を増殖させることを第1の目的としてとらえていた時代もありました。また、株主側も企業に稼いでもらってより多くの配当と株価上昇がもたらされることを最優先に考えていました。
 しかし時代が進み、企業が自然環境の保護や従業員の働く環境の整備のためにお金をかける(その分だけその年の利益は減って株主への配当も減る)ことが、まわりまわって株主の利益にもなるという考え方が浸透し、多くの投資家が、投資する際に、その企業がSDGsにどのくらい気を配っているかを考えるようになりました(ESG投資ともいわれます)。今や、投資家が、企業に対して、「自然環境を保護しろ」と迫るようになってきたのです。
 投資家というとハゲタカファンドのように「儲かれば何でもいい」と考える集団と捉えられがちですが、一般市民以上に地球のことを考えているのかもしれません。私も、節電にいそしんで、CO2排出を減らさなければ!