簿記講座の講師ブログ

とうとう四半期報告書の廃止へ

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 今日もがんばっていきましょう!

 2024年度より四半期報告書が廃止されます。
 簿記3級・2級の試験が想定している中小企業は年に1度財務諸表を作成すればよいのですが、上場企業や上場していなくても資本金5億円以上の大会社は年に4回(3ヶ月ごと)の財務諸表の公表が義務付けられていました。上場企業へは多くの投資家が投資するので、できる限りタイムリーに情報を提供することが必要であるという趣旨です。

 この四半期財務諸表は、2003年度から段階的に導入され(2007年にほぼ全上場企業が導入)、2024年度から廃止されることになり、約20年間続いた制度となります。当初はタイムリーな情報提供という目的があったのですが、3ヶ月に1度、利益計算が行われ、企業は3か月ごとに評価されることになるため、企業は短期的に成果が上がる事業にばかり目を向けるようになり、長期的な視点での経営が難しくなるという弊害が指摘されていました。その点で四半期報告書には多くの批判がありました。

 長期的な視点での経営が難しいため、人材も即戦力を求めるようになり、人材育成に十分な時間とお金をかけることができないという弊害もあります。その結果、企業の競争力がそがれてしまい、国際的な競争を行っていくことはおろか、基礎的な能力すら削っていくことになりかねない状況になってしまいました(大学でも文科省が短期的な業績を求めるため、長い時間がかかる基礎研究ができない状況になっている状況が憂慮されており、同じ問題ですね)。
 
 くしくも世界はSDGsの達成へ向けて動いています。
 SDGsの8番目の目標として「働きがいも経済成長も」が挙げられています。それに関連して、現在、企業は、特に人材育成の面で長期的な視点での経営が求められており、人材育成の方針や数値目標を開示しなければなりません(人的資本開示)。

 短期的な視点での経営は、現在の株主に富をもたらすかもしれませんが、持続可能な発展とはトレードオフの関係にあるでしょう。そういった意味で、全世界的に達成に向けて努力しているSDGsとのかかわりでみても、四半期報告書の廃止は必要ですね。