簿記講座の講師ブログ

ここでも増税?

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 私はまだ休み気分が抜けませんが、皆さんはもう通常モードに戻りましたか?

 年々、個人の税・社会保障に関する負担が高まっています。例えば、児童手当を高校生まで拡大したかと思いきや、その財源は16歳以上の扶養控除の縮小と健康保険料の値上げで賄う方向性が示されています。つまり、「手当を差し上げますが、所得税と社会保険料をアップしますね」ということであり、ほぼ、現役の中だけでのやり取りに終わりそうです。

 企業への課税も強化されそうです。
 現在、法人が都道府県に収める事業税は、所得割、付加価値割、資本割、収入割という4つの要素から計算されます。
  所得割:課税所得(当期純利益を調整したもの)の1.0%
  付加価値割:付加価値(給与+利息+賃借料+所得)の1.0%
  資本割:資本金の0.5%
  収入割:収入金額の0.48%

 資本金1億円超の法人は、上記のうち、所得割+付加価値割+資本割を納税しなければなりません。このように、資本金など所得に関係ない部分で課税されることを外形標準課税といいます。
 一方で、資本金1億円以下の法人は所得割のみを納税すれば済みます。そこで、企業は資本金を1億円以下にしたい誘惑にかられます。資本金の額が信用を表すという側面もありますが、ある程度の知名度がある会社であれば、その信用は資本金の額とはあまり関係なくなっているでしょうから、特に厳しい経営環境の場合、納税額を抑えるために資本金を1億円以下にしたくなるわけです。

 最近では、コロナで打撃を受けたHISが資本金247億円を1億円に減資したり、コロナ後の環境で利用者が酸くなっている出前館が資本金3.7億円を1億円にしたりしています。外形標準課税の対象となる企業は、2005年度の約3万社から、2021年度には2万社ほどまで減少しており、多くの企業が「中小企業」になっているのです(法人税法では、資本金1億円以下の企業を「中小企業」といいます)。

 これに対して2023年11月、政府は外形標準課税の対象を「資本金と資本剰余金を合わせて1億円以上」へ変更しました。
 実は、多くの企業が減資を行う場合、「資本金」を「その他の資本剰余金」に振り替えているだけで(借方:資本金 貸方:その他の資本剰余金)、赤字の補填などで減資する(資本金が消滅する)ケースはあまり多くないようです。つまり、株主から集めたお金に変化はないのですが、書類上の資本金を減らすだけという操作を行うことで、外形標準課税を避けようとしているわけです。政府による既定の変更は、このような書類上の操作だけで、税逃れをさせないようにするための方法です。

 書類上の資本金を1億円以下にすることによって課税から逃れることに対して、倫理上の問題が提起される(大企業なんだから納税をケチるのではなく、きちんと納税して社会的責任を果たせ、という問題提起)こともありました。
 その一方で、課税する側のズル(特に政治家のお金の問題)が頻発する中で、課税される側の税負担が高まっている状況に対して、企業ができることは合法的に納税額を減らすことくらいしかありません。しかし、その道の1つが断たれてしまいました。なんだか、年明け早々切ないですね…。

 そこで1つ提案です。課税する側(特に政治家の皆さん)が行うべき会計処理と、課税される側が行うべき会計処理を揃えてください。私たち庶民を優遇してもらう必要はありません。課税する側(特に政治家の皆さん)と同じ条件にしていただくだけで結構です。例えば、領収証は保存しておく必要はないとか、覚えていないんだったら申告書に書く必要はないとか。そういった条件を揃えていただくだけで結構です。

こんな公約を掲げて選挙に出てくれる方はいないかなぁ。