簿記講座の講師ブログ

転職希望者1,000万人オーバー!

 皆さん、こんにちは!
 簿記講座担当の小野です。
 寒い日が続いていますが、カゼなどをひかないように、体調管理に気を付けて!

 総務省の労働力調査によると、2023年7~9月の平均就業者数6,768万人のうち、1,035万人が転職希望者だそうです。2019年の転職希望者に比べて約20%増加しています。実際の転職者数は325万人で、こちらはここ数年横ばいです。
 
 実際の転職者数は増えていないものの、転職希望者数が増えているのはいいことだと思います。
 従業員は、企業と、お金と労働力の交換取引を行っています。従業員から見て、提供した労働力に見合うお金を得られない場合、その取引(就職)を打ち切る必要があるでしょう。
 SDG’sの浸透によって、おりしもステークホルダー資本主義の時代になっています。企業はその持続可能性を高めるために、株主以外のすべてのステークホルダー(利害関係者)に対して、等しく価値を提供しなければなりません。企業は、ステークホルダーが様々な資本(株主からはお金、従業員からは労働力、お客さんからは原価など)を提供してもらって経営が可能になるととらえるのが、ステークホルダー資本主義です。
 企業にとって株主からのお金、従業員からの労働力、お客さんからの商品代金など、どれがなくなっても経営に行き詰まります。つまり、すべてのステークホルダーから受け取った資本と引き換えに、すべてのステークホルダーに等しく価値を提供しなければならないのです。

 ですから、企業は従業員にとって魅力的でなければなりません。では、企業が従業員にとって魅力的になるのに必要な要素は何か? その1つは、魅力的でない企業から従業員が容易に退出することができる環境でしょう。
 株主は、魅力がない企業の株式をすぐに売却します。それによって株価が下がり、社会的な評価が下がるのを避けるため、企業は株主にとって魅力的な存在であり続けようと努力します。それと同じように、従業員が魅力的でない企業からいつでも自由に退出できるようになれば、企業はそれなりに対応でするでしょう。そのためには、従業員がより良い環境を求めて自由に動きたいと思う意思が必要です。

 その意味で、転職希望者が増えることによって、企業に対して、人的資本の調達に対するリスク管理を促す(育てた従業員が退職しないこと、優秀な従業員を採用できること)効果があるでしょう。企業と従業員が対等な関係になるわけですね。

 市場では、お金と労働力が好感されているのですから、お金と労働力は等価であるはずです。しかし、経営者は、「株主からお金を提供してもらっている。だから、株主に対して報いなければ」と考える一方、「従業員から労働力を提供してもらっている。だから、従業員に対して報いなければ」と考えるレベルは低いように感じます。その辺の力関係がSDG’sが浸透し始めてから変わり始めたように感じます。あるいは、失われた30年で虐げられた世代が企業の中心的なポジションを占めるようになり、人材への考え方が変わったのかもしれません。

 この流れが続いて、企業と従業員が対等な関係になり、従業員も企業に対して様々なアクションを取ることができる環境ができるといいですね。