証券外務員講座の講師ブログ

大学の運用から見る資産運用②

皆さん、こんにちは。
フォーサイト証券外務員専任講師の伊藤です。

前回に続き、大学の資産運用の話をしていきます。

■日本の大学は債券主体の大学が多い
 日本の大学の資産運用はどうでしょうか。東京大学では、東大基金の運用額などを公開しています。2023年3月時点における基金の運用額は110億円。イェール大学と比較すると、そもそも運用している金額が全く異なっています。とはいえ、東大でも運用に対する考え方が変わってきています。2023年1月に、東大基金の基本ポートフォリオが変更されました。それまでは、円ベースの債券が60%、グローバル株式が20%、オルタナティブが20%。この比率が基本ポートフォリオとして考えられていました(2018年11月から)。変更により、基本ポートフォリオは、オルタナティブが60%、グローバル株式20%、円ベース債券20%となっています。オルタナティブとは、伝統的な投資対象である株式や債券と関連性の低い、または関連性のないものに運用することであり、具体的には、ヘッジ・ファンドや未公開株、コモディティなどへの運用が考えられます。つまり、東大基金では、海外の大学のようにオルタナティブを重視した投資戦略へと切り替えたことがわかります。
 東大基金からわかるように、日本の大学では預貯金や債券主体での運用が多く、これまで積極的な運用を行ってきたケースは少ないのが実情です。とはいえ、ポートフォリオを変更した東大基金のほか、ICU(国際基督教大学)のように海外の大学にひけをとらない積極的な運用を行うケースもあることから、今後、日本の各大学でも運用に対する方向性が変化する可能性があります。

<図2:東大基金の基本ポートフォリオ>
2018年11月から           2023年1月変更決定

■基本は長期、分散投資
 こうした大学の運用からわかることは、多額の資金を持つ大学ほどリスクをとった運用を行うものの、リターンもしっかり得ていること。その基本は、結局のところ、長期、分散を軸にした運用であることです。専門家に任せながら、運用での資金力も高めているのが海外の一流大学では当たり前。個人ではなかなかこうした積極的な投資は難しいかもしれませんが、新NISAが今後始まることも考慮すると、預貯金から株式主体へとシフトしていく流れは十分起こりえますし、海外の大学のような積極運用によりリターンを高める個人も出てくる可能性があります。債券主体といった考え方も大きく変わっていく可能性もあります。
 最終的な運用結果は、運用してみないとわからないといえばそこまでですが、今後こうした積極的な運用姿勢が強くなることで、大学だけではなく各法人や個人でも同じ流れが来る可能性もあります。リスクの取れる若年層への一つの視野として外務員として説明時に話をされてもよいかもしれません。

<演習>
一種・二種受験者、いずれも解いてみてください。

次の問題に答えなさい。○✕問題

【問題1】
企業の資金調達方法のうち、株式の発行によるもの及び公社債の発行によるものは、原則として、間接金融に区分される。

<解答> ×
株式の発行や公社債の発行は、原則として、直接金融に分類されます。