行政書士講座の講師ブログ

地方自治法の一部を改正する法律

皆さん、こんにちは!
フォーサイト専任講師・行政書士の福澤繁樹です。

地方自治法の一部を改正する法律(令和5年法律第19号)が成立しました。
本法は、成立日が令和5年4月26日、施行日は、一部の規定を除き、令和6年4月1日となっています。

この改正では、地方議会の活性化並びに地方公共団体の運営の合理化及び適正化を図るため、地方議会の役割及び議員の職務の明確化、会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給を可能とする規定の整備、公金事務の私人への委託に関する制度の見直し等がなされています。
なかでも、今回、注目したのは、「地方議会の役割及び議員の職務の明確化」の部分です。
個人的には、これを読んだときには「いまさら」という感じがしました。
ちなみに、該当箇所は、以下の様に改正されます。

<旧>
第89条 普通地方公共団体に議会を置く。

<新>
第89条
1項 普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもつて組織される議会を置く。
2項 普通地方公共団体の議会は、この法律の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びにこの法律に定める検査及び調査その他の権限を行使する。
3項 前項に規定する議会の権限の適切な行使に資するため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない。

少し読んだ限りでは、以前から分かっていたことを、わざわざ明確化したという感じです。
まさに「地方議会の役割及び議員の職務の明確化」です。

そこで、この改正案のもとである地方制度調査会の答申を参照しました。
そうすると、令和4年12月28日付の内閣総理大臣あての「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」という答申書の中の「第3 議会の位置付け等の明確化」という項目があり、そこに、以下のような記述がありました。

【一部に、議会が必ずしも求められる役割を果たしていないような事例や、住民の信頼を損ないかねない議員の行為の事例も見られる。 こうしたことがないようにするためにも、議会がその重要な役割・責任を十分に果たすよう、議会や議員がそれぞれの立場において、その重い役割や責任を自覚することが何よりも重要である。これを踏まえ、議会の役割・責任、議員の職務等について、その重要性が改めて認識されるよう、全ての議会や議員に共通する一般的な事項を地方自治法に規定することも考えられる。具体的には、地方自治法の議会の設置根拠の規定に、議事機関として住民が選挙した議員をもって組織されるという地方公共団体における議会の位置付けを追記すること、地方公共団体の所定の重要な意思決定に関する事件を議決する等の議会の役割・責任を明確に規定すること、議員は、議会の権限の適切な行使に資するため、住民の負託を受け、誠実に職務を行わなければならないことを規定することが考えられる。この際、特に、議員に関する規定は、職務を行う上での心構えを示すものであり、新たな権限や義務を定めるものではなく、本来の議員の職務以外の不適切な行為を正当化し、助長するようなことにならないよう、十分留意すべきである。】 (下線は私が引きました)

上記を読むと、私には、少し悲観的に過ぎるかもしれませんが、昨今の、地方議会における議員の立候補者の減少や、投票率の減少が、極まるところまできて、人材不足に苦しむ日本の実情が滲み出たうえでの法改正なのではないかと思えてきました。
みなさんは、どのように感じましたか?

今回は、このへんで。