保育士講座の講師ブログ

民法改正による懲戒権の削除

親による子への懲戒権を認める規定を削除するなどの「民法」改正案が
昨年(2022年)12月に成立しました。

改正案のうち、
懲戒権を認める第822条の削除については、昨年12月16日の公布日に施行されました。

削除された旧第822条は次のような条文でした。

「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」

この条文は、平成31年前期の子ども家庭福祉(当時の科目名は児童家庭福祉)問5でも出題されていました。

=========================
問5 次の文は、「民法」の一部である。( A )~( D )にあてはまる語句の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
第818条 成年に達しない子は、父母の( A )に服する。
第820条 ( A )を行う者は、子の( B )のために子の( C )をする( D )を有し、義務を負う。
第821条 子は、( A )を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
第822条 ( A )を行う者は、第820条の規定による( C )に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

(組み合わせ)
A B C D
1 監護 利益 保護及び養育 責任
2 監護 懲戒 監護及び教育 権利
3 養育 保護 監護及び教育 責任
4 親権 利益 監護及び教育 権利
5 親権 懲戒 保護及び養育 責任
=========================

この第822条の条文が今回の改正で削除されました。
懲戒権はしつけとして児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘があり、
懲戒権規定そのものを削除すべきとの声が上がっていました。

なお、今回の改正では、
旧第822条の削除に加えて、新たに子の人格の尊重等を規定する条文が第821条として新設されました。

第821条
「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」

この条文では、
「児童福祉法」にも随所にみられる「子の人格を尊重」「年齢及び発達の程度」という語句が加えられているだけでなく、
体罰を禁止することが明記されています。

例年の保育士試験の試験範囲からすると、
今回の改正内容が試験範囲になるのは、令和5年(2023年)後期試験以降と予想されますが、
将来保育士を目指す方々にとっては、ぜひとも押さえておきたい重要な改正内容だと思います。