数的処理科目は苦手な方が多い分野です。
ただ、いつもお伝えしている通り、それは「数学的なセンス」とか「頭の良しあし」といったものでは決してありません。
タイトルの通り、文章の理解もっとざっくり言えば、「日本語を落ち着いて読む」というのが数的推理の理解のベースにあります。
逆に言えば、「数的推理が苦手」と思っている方の中には次のような方がいらっしゃいます。
■問題文を「読んだ」というのが「字面だけ追った」状態
■せっかく出した途中式の答えから得られる手がかりを見落としている
(苦しい気持ちは僕も非常によくわかります。
数的処理科目を教えておられる先生方で、数学や算数の知識が僕より多い方は山ほどいらっしゃいます。
だから、僕はいまだにコンプレックスが消えません。
ひょっとすると、これは一生付き合っていく感情かもしれないとすら思っています。)
さて、どんな試験でもそうですが、不安な状況で何が起こるかというと
とにかく答えを出して安心したい
僕は福本伸行先生の漫画(有名どころだと「カイジ」ですかね)が大好きなのですが、プレッシャーに追い詰められた人物は往々にして、安易に逃げる道を選びます。
そこをまあ、ライバル役にすくわれたりするのですが。
ですから、「うわっ⁉」と思った時ほど、文章ひとつひとつを丁寧に、具体的には
◎この文章は何のヒントをくれているか
◎この文章・数式の情報はすべて吸い上げたか
◎日本語の接続詞、助詞の意味をないがしろにしていないか
を確認することが必要になってきます。
(確かに、「この情報いらないよね」という場面もありますが、まずは、それはおいておきましょう)
次はフォーサイトの数的推理の問題集から持ってきました。
方程式に関する問題です。解説に興味のない方は黄色いラインの部分だけご確認ください。
A~C の 3 人がクッキーを持っている。枚数は A が最も多く、2 番目が B、3 番目が C で、A と B の枚数の差と、B と C の枚数の差は等しい。この状態から、A が自分の持っているクッキーの うちの 4 枚を B に渡したところ、A より B の枚数のほうが多くなり、B と A の枚数の差と、A と C の枚数の差が等しくなった。さらに、A が自分の持っているクッキーの半分を食べたところ、B と C の枚数の差と、C と A の枚数の差が等しくなった。C が持っているクッキーの枚数として正しいものは、次のうちどれか。
実際に解いていく過程を一つ検討してみましょう。
一文ずつ丁寧に見ていきましょう。
①A~C の 3 人がクッキーを持っている。
これはいいですね
②枚数は A が最も多く、2 番目が B、3 番目が C で、
メモを書くかは別にして、この時点でA>B>Cをつかんで次の文字に移ります。
③A と B の枚数の差と、B と C の枚数の差は等しい。
②の情報A>B>Cと合わせ、
「Aよりn枚少ないのがBでさらにそれよりn枚少ないのがCか…」
「Bの枚数はAとCのちょうど真ん中なんだな」
というあたりはここで確認します
解説ではこの時点でAとBの枚数の「差」に着目し、これを文字nで置き、
A:A枚
B:A-n枚
C:A-2n枚
としています。
④この状態から、A が自分の持っているクッキーの うちの 4 枚を B に渡したところ、A より B の枚数のほうが多くなり、B と A の枚数の差と、A と C の枚数の差が等しくなった。
③で設定した枚数を使って方程式を立てていきます。
文章を区切りつつ、丁寧に情報を吸い上げていきましょう。
この状態から、
「それまでの内容が前提、言い換えれば、状況はリセットしていないんだな」
A が自分の持っているクッキーの うちの 4 枚を B に渡したところ、A より B の枚数のほうが多くなり、B と A の枚数の差と、A と C の枚数の差が等しくなった。
ここでも、
A より B の枚数のほうが多くなり
「B>Aか」
B と A の枚数の差と、A と C の枚数の差が等しくなった。
「これは=で結べそうだな」
「A-n+4-(A-4)=A-4-(A-2n)」
というように、一文どころか、句読点ごとに情報を吸い上げていきます。
「これを解いてn=4」
「AはA-4枚になった!」
「BはA-4枚だったのが+4枚で=A枚になった!」
「ん?枚数が入れ替わったのか…」
「で、今はA:A-4枚B:A枚C:A-8枚になったのか。」
「つまりB=A枚>A=A-4枚>C=A-8枚だな。」
きちんと、自分が導いた数式から得られる情報を落ち着いて整理します。
さらに、
「状況はリセットされていない」
接続詞ひとつ、単語ひとつも大切にします。
A が自分の持っているクッキーの半分を食べたところ、B と C の枚数の差と、C と A の枚数の差が等しくなった。
B と C の枚数の差と、
「これは今、8枚だな」
C と A の枚数の差が等しくなった。
「ということはAとCの枚数の差も8枚か」
「もともと、AとCの枚数の差は4枚で、さらに、食べてAの枚数が減っているわけだから、A>Cで、8枚差になることはないな」
「つまりC>Aであって、ここから、
C=A-8枚>A=A-16枚
になったわけか。」
「枚数の変化としては
A=A-4枚→A=A-16枚
だから、12枚食べたのね。」
「それが持っていた枚数の半分だったわけだから、Aは24枚持っていたのか。」
C が持っているクッキーの枚数として正しいものは、次のうちどれか。
「食べる前はA=A-4枚>C=A-8枚だったわけだから、AとCの差は4枚分。
つまり、20枚!!!!」
というような流れをたどります。
今回はあえて、めんどくさそうな問題を持ってきました。ですが、標準的な問題であれば丁寧に見ていってもこれほど手間はかからないはずです。
ただでさえ嫌なものが目の前にあり、そのようなものとここまで丁寧に向き合うのはかなり精神的にきついかと思います。
ただ、「やっているのに力が上がらない」という悩みがあるとしたら、このあたりを改善することで「飛躍的に上昇する可能性も秘めている」とは考えられないでしょうか。